英語教育2025年12月号を読んで

The English Teachers’ Magazines 大修館書店 December 2025 Vol.74 No.10

第1特集 生成AI時代に考えたい 課題の出し方・取り組ませ方 第2特集 「想定外」にどう対処する? 授業内のタイムマネジメント術

生成AI時代の課題設計と、学びを支える「小さな仕掛け」

今月号の『英語教育』(2025年12月号)は、

生成AI時代における課題設計と、授業を円滑に進めるための具体的な工夫が随所に詰まった一冊でした。

「なるほど」「これはすぐ使える」と思うポイントが多く、読んでいてとても実践的でした。

1. イギリスの子どもはどうやって英語の読み書きを学ぶのか

山下桂世子さん(英国Ashbrook School High Level Teaching Assistant)

まず印象的だったのが、すぐに使える基本ルールの確認教材です。

イギリスでは、子どもたちが書くときのルールを、指を使って視覚的・身体的に理解させる工夫がされています。

指を使った「書くルール」の整理(図示)

今月号の『英語教育』(2025年12月号)は、

生成AI時代における課題設計と、授業を円滑に進めるための具体的な工夫が随所に詰まった一冊でした。

「なるほど」「これはすぐ使える」と思うポイントが多く、読んでいてとても実践的でした。

1. イギリスの子どもはどうやって英語の読み書きを学ぶのか

👍 親指:文のはじめは大文字(Capital letter)

☝️ 人差し指:単語と単語の間は指1本分あける(Finger space)

🖕 中指:だれが(Who)

💍 薬指:どうする(Does)

🤏 小指:なにを?(What)

👉 Who → Does → What の順で考える

👉 指を見れば、文の形が自然と頭に入る

この方法の良さは、「説明しなくても分かる」こと。

特に低年齢の学習者にとって、抽象的な文法説明より、身体感覚と結びついたルールは非常に有効だと感じました。

2. ICT活用の大技・小技 第40回

Webアプリ”TWEE”で4技能学習を促進

松村友美さん(長崎県立長崎北高校)

次に紹介されていたのが、Webアプリケーション TWEE。

特に注目したのは、ESL Lesson Plans の使い勝手の良さです。

ESL Lesson Plansの特徴

  • 紙の指導案ではない
  • クラスで共有するだけで、動画・音声中心の授業がすぐ始められる
  • 生徒が親しみやすいテーマが多い
  • Netflixの人気海外ドラマを扱った教材もある
  • 授業時間が明記されていて使いやすい
  • 生徒はタブレットで回答 → 教師はその場で確認可能

「動画や音声を使いたいけど、準備が大変」という悩みを、かなり軽くしてくれるツールだと思いました。

そのほかの便利な機能

  • 導入用の会話文作成機能
  • 音声・動画の文字起こし機能
    → URLを貼る or 音声ファイルをアップロードするだけ

文字起こしは、リスニング指導やスクリプト作成で特に重宝しそうです。

3. 私たちの英語表現収集ノート 第9回

山崎竜成さん(予備校英語講師)

「意味を検索に落とし込む」という視点が面白い回でした。

紹介されていたのが、Xam という入試問題データベース。

単語の意味をただ覚えるのではなく、

実際にどう問われ、どう使われているかを軸に表現を集めるという考え方は、

入試指導にも表現指導にもつながる視点だと感じました。

4. SLAで答える指導の疑問 第9回

ICTを活用した学習は本当に効果があるのか

鈴木 渉さん(宮城教育大学 教授)

結論はとてもシンプルで、強く共感しました。

「見るだけにしない」

動画視聴だけで終わらせず、

  • メモを取らせる
  • 要約させる
  • 説明させる
  • 意見を言わせる
  • 絵で表現させる

こうした能動的アウトプットを組み合わせることで、

理解と記憶の定着が高まると述べられています。

これはまさに、私が日頃行っているペアワークの考え方そのものです。

特に大切なのは、

「あとでアウトプットするよ」と伝えた上でインプットさせること

インプットの質がまったく変わります。

5. 第1特集

生成AI時代に考えたい「課題の出し方・取り込ませ方」

ここで整理されていたのが、

モチベーションとエンゲージメントの違いです。

  • モチベーション
     なぜその行動を起こすのか(理由)
  • エンゲージメント
     どれだけ没頭しているか(状態)

ゲームで例えると

  • モチベーション:友達と競いたいから始める
  • エンゲージメント:始めたら時間を忘れるほど夢中

教師の役割は、

モチベーション → エンゲージメント → 学習効果

この流れを意図的に作ることだと整理されています。

モチベーション課題のポイント

  • やる意味がある
  • 自分にもできそう
  • 成功がイメージできる

例として、

ディベートが苦手な生徒に、ChatGPTを「練習相手」として使わせる

というアイデアが紹介されていました。

👉 ただし「頼りすぎない」

👉 あくまで**足場(scaffold)**として使う

このバランス感覚は非常に重要だと思います。

エンゲージメント課題のポイント

エンゲージメントは4側面から捉えられます。

  • 行動的:参加している
  • 認知的:考えている
  • 感情的:興味を持っている
  • 社会的:互いに関わっている

インフォメーションギャップやオピニオンギャップを使った

ペア・グループ活動は、まさにこの4側面を同時に満たします。

6. 学びのあるライティング課題のための生成AI活用

山下美朋さん(立命館大学 教授)

ChatGPT-4.0を使った英文添削プロンプト例が紹介されていました。

「どう指示を出すか」で、AIの出力の質が大きく変わる点が分かりやすく整理されていて、

ライティング指導にすぐ応用できそうです。

7. 第2特集

想定外にどう対処するか ― 授業内タイムマネジメント

子どもの姿から逆算する授業計画

南 勇輔さん(宇都宮大学附属小)

印象的だったのは、

「どんな振り返りを書いてほしいか」から授業を設計する

という考え方。

そこから、

  • 目当てを決める
  • メイン活動を決める
  • 時間配分が見えてくる

という流れがとても腑に落ちました。

ペアワークをスムーズに始める工夫

遊馬智美さん(お茶の水女子大学附属高校)

ポイントはシンプル。

必ずジャンケンから始める

「どっちから話す?」で止まらない。

負けた方からどうぞ。

分からないときは勝てばいい。

この小さな工夫が、授業全体のテンポを支えているのだと改めて感じました。

おわりに

今月号を通して感じたのは、

生成AIもICTも、そしてペアワークも、すべてに共通するのは

「学習者が考え、関わり、没頭する時間をどう作るか」

という一点です。

派手な技術よりも、

小さな仕掛けと、明確な意図。

この積み重ねこそが、

生成AI時代の英語授業を支えていくのだと感じた一冊でした。