英語教育3月号を読んで

英語教育3月号(大修館書店)April 2022 Vol.71 No.1

第1特集 年度の振り返り&スタートに 児童生徒の声を引き出すアンケート作成・活用術 第2特集 「高校英語新課程に備える・第3回」 課題を自ら見出し解決へ 学ぶ力を培う「探究」活動

小学校へのアンケートー尋ね方のコツと注意点 物井尚子(千葉大学教育学部教授)

質問文が児童の回答に影響を与えるかを調査したところ(物井,2014)、児童は問いの文言に回答が引きずられやすいことがわかった。同じ児童に「英語の時間に、グループで英語を話すのはリラックスしてできます」「英語の時間にグループになって英語を話すとしたら緊張します」とそれぞれ肯定的、否定的表現で同じような問いを尋ねたところ、それぞれの回答の相関が低くなった。つまり、問いの作り方によって、児童の回答はある程度、誘導されてしまう。言い回しに気をつけたい。「楽しかった」「役に立った」「できた」など、肯定的な表現ばかり、もしくは否定的な表現ばかりで尋ねていないか、何度も読み返すことが大切である。選択肢をいくつ用意するかについては、3〜4年生程度になると4件法に対応できる(Pintrich & Schunk, 1996)。

授業力は「書く力」に比例する 教師のための綴り方教室から 第12回 第3章「編集力を鍛える」④「リレー形式」を活かせば、学校が大きく変わる(中嶋洋一 関西外国語大学教授ほか)

「リレー形式」は自己更新の機会を作る 「学習する」とは、「自己更新をする」という意味である。それは過去の自分から受け取ったバトンを未来の自分に渡す「個人内リレー」とも考えられる。中1で「友達紹介スピーチ」という課題で「リレー形式の学習」に挑戦した。最初の原稿を書かせた後、一旦回収し、1週間後にそのまま返却した。そして、その原稿を班で回し読みする時間を作った。ルールは「仲間の英文を読み、わかりにくい部分を見つけてコメントを書く」である。お互いの作品にコメントを書くことでself-involvement(当時者意識)が生まれる。1人が1日1ページ(10行程度)を担当して書き、翌朝、次の人に渡す。教師の指示は「仲間の文章を読み、その内容を広げ、深めること」である。生徒の「書きたい!」という気持ちを引き出すには、教師の意図的な介入が必要だ。このTime-delayed activityは、一旦内容を自分の中で醸成させるので、「自己更新」と「互恵学習」の組み合わせが可能になる。思考を醸成させる「時間差」と、仲間から引き継いだ「責任」の2つが生徒を本気モードにする。授業で大切なのは、知識の授受ではなく、児童生徒との人間関係と「互恵学習」を土台にすることなのである。

英語の文字の指導法 第12回 指導の実際⑧ 手島良(武蔵高等学校中学校教諭)

フェルトペンで手書きしたような感じのフォト(Comic Sans)ですが、文字指導の観点からは断じて避けるべきものです。というのも、字画の構成から見ると、あの忌まわしき活字体と同じだからです。例えば、a,d,g,qはcを書いて一度ペン先を紙から離した後、右画を各筆法になっていますし、kは3画です。ハンドアウトや掲示にも現代体(に近いフォント)を使うことを徹底しなければならない。堂々とComic Sansを使っていた自分が悲しい。

私のメモ 

・3つのP(Presentation-Practice-⑧Production)(p.11) ・教師がやりたい授業ではなく、生徒が受けたい授業に変えること(p.13) ・ ゲーム障害(Gaming Disorder)を新たな依存症として認定している。基準としては、①日常的な活動よりもゲームの優先度が高い、③悪影響が出ているにも関わらず、エスカレートしている、といったことが1年以上継続している ・ディスカッションにおける考える力に関する指導 ① とにかく思ったことを英語で言ってみる(表現や文法が不正確でも、伝わればいいという気持ちで!) ② 主張だけではなく、理由や例を挙げながら自分の意見を述べる(一言で終わらない!) ③ 相手の意見を聞いて、それに対する意見を考えて述べる(その場で考える瞬発力) ・ Is this what I think it is?(僕がそうだと思っているということかな?) ・ 「遊郭編」は”Entertainment District Arc”とされている。arcは物語を複数回に分けて語る時のひとまとまり、「〜編」にあたる表現です。  

「二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい」高津臣吾

二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい 高津臣吾 光文社新書 2018年11月20日

何となくは知っていたが、なかなか、二軍でどのようなことがされているのか、その時の監督の気持ちはどうなのか、触れ合う機会がない。去年最下位から日本一になった高津臣吾監督が二軍監督時代に書かれた著書だ。野球が大好きなので、本当に楽しみに少しずつ読ませてもらった。二軍での話ばかりではなく、ご自身がヤクルト→ホワイトソックス(メジャー)→台湾→韓国→独立リーグ→1軍ピッチングコーチ→2軍監督→1軍監督と渡り歩いていくうちに、感じたことや培ったことを書いてくれている。メジャーと日本の違い、セ・リーグとパ・リーグの違い、ウエスタンリーグとイースタンリーグとの違い、本当におもしろかった。

あらすじ(Amazon HPより) 

日本プロ野球、メジャーリーグで抑え投手として活躍し、韓国、台湾、独立リーグでもプレーした経験を持つ現役二軍監督の著者が、定評のある、その育成・指導方法と、野球の新たな可能性を語りつくします。「キーとなる打順は2番、6番、9番」「クローザーを先発起用するオープナー」「極端な守りのシフトは日本でも有効か?」といった、野球に関する最先端の話題も盛りだくさんで、スワローズファンのみならず、野球ファンなら誰でも楽しめる内容です。以下、本文の引用です。2年間、監督をやってみて、「二軍監督の仕事って、結局のところなんだろう?」と、時々考えること
がある。ファームの試合では、若手、あるいは調整に来ているベテランを起用しつつ、試合の指揮を執る。しかし、そこにいたるまでに、プロ野球の球団ではたくさんの意思決定、プランの作成が行われている。僕は今回、プロ野球の二軍という、人材育成の場でどんなことが考えられ、行われているのかを紹介しつつ、改めて二軍監督の仕事というものを見つめ直そうと思っている。(中略) それでも、最終的に二軍監督として僕が心がけるべきことは、いたってシンプルだと思う。 選手が気分良くプレーできるかどうか、その環境を整えることを忘れないということだ。(序章より)

羊をめぐる冒険(上)(下) 村上春樹を読んで

「羊をめぐる冒険」村上春樹 講談社文庫 2004年12月

なんで恋人がいなくなったのだろう?なんで友人が亡くなって羊となって出てくるのだろう?いなくなったり、死んでしまったり、生きているのにもう会えなくなってしまうと、恐ろしいほどの「喪失感」を感じる。程度こそ違うものの、大失恋したり、身内が亡くなったり、ペットが亡くなったり、そんな時の「喪失感」を思い出させてくれる。疑似体験ができるとともに、その時の気持ちが襲いかかってくる。

あらすじ(UTOPINのブログより)

主人公の「僕」は、友人と始めた小さな会社で広告コピーの仕事をしている29歳。持っているものは、借り物の部屋とろくてロクでもない家財道具、二百万の貯金と中古のフォルクスワーゲンが一台、それに年取った雄猫が一匹だけ。「僕」は、妻を失った後、仕事を通して耳専門のモデルをしている女性と親しくなります。そして彼女の耳は、予知能力の様な不思議な力を持っています。ある日、「僕」のもとに黒服の男が訪ねて来ます。そして一匹の羊を探すように半ば脅される形で命じられ、不本意ながらもある大きな野望に巻き込まれていくことになります。舞台は冬が迫る北海道。「僕」と不思議な耳を持つ「彼女」による、羊をめぐる冒険が始まります。「僕」は羊を探し出すことができるのか。冒険の真相が明らかになった時、物語は衝撃の最後を迎えます。

パン屋最終撃 村上春樹 を読んで

「パン屋再襲撃」村上春樹 2011年3月10日 文春文庫

パン屋再襲撃、象の消滅、ファミリー・アフェア、双子と沈んだ大陸、ローマ帝国の崩壊・1881年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界、ねじまき鳥と火曜日の女たちという6本の短編集。最近は村上春樹ばかり読んでいる。昔もそうだが・・・。特に、「ねじまき鳥・・・」がとても面白かった。これと似た題名の長編があるが、設定がやや似ているものの、内容は少し違う。やはり、どの作品ももう少し続きが読みたいと感じるところで終わってしまう。この後の2人の関係はどうなるのか、行く末はうまく行くのだろうか、その辺は読者任せになっているところが村上春樹を読みたいと強く思うことがある理由なのかもしれない。

内容(「BOOK」データベースより)堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。「もう一度パン屋を襲うのよ」。それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来僕にかけられた呪いをとく方法はない。かくして妻と僕は中古カローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した…。表題作ほか「象の消滅」、“ねじまき鳥”の原型となった作品など、初期の傑作6篇。

「象の消滅」は何か寂しい気持ちが残る。そして、2つの短編から「渡辺昇」という名前が出てくる。人間と猫の名前として。

電車通勤をしているので、行きと帰りに読書する15分間は最高である。

ラジオビジネス英語2022年2月号を聞いて

need a little fine tuning 微調整、one minor comment 1つちょっとしたコメント、the general flow 全体的な流れ、at your earliest convenience できるだけ早く、strive to 〜することを目指す、〜しようと努力する

We need to brace ourselves for a rough ride.(厳しい状況が続くことへの覚悟が必要です。)

I’d appreciate it if you could help me translate the email written in Vietnamese.(ベトナム語で書かれたメールを翻訳してくれるとありがたいのですが。)

英語教育2月号を読んで

英語教育2月号 大修館書店 February 2022 Vol.70 No.12

第1特集 年度のしめくくりにむけて 確かめたいのは既習語彙・文法の定着 第2特集 「高校英語新課程に備える・第2回」 注目の新科目「論理・表現」はこんな授業イメージ 第3特集 気軽にチャレンジ! 世界とつながる オンライン海外交流

「実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能」を意識した語彙指導・文法指導 瀧沢広人(岐阜大学准教授)

文法指導においてのポイント ①文法を理解させる まずは「導入」楽しく身近な話題を導入に取り入れて、その導入した文法形式をそのまま言語活動に使われるような例文を使うこと。次に、「気づき」。文法の「意味と形」を理解させること。さらに、「内在化」。リピートさせたり、決まった状況の中で英語を話したりするような口頭練習や、生徒の身近な話題で考えて発話する言語活動を行い、実際に活用しながら文法の深い理解を図り、学習内容をインテイクする。

今年から語彙が増加した中学校で・・・最低限定着させたい語彙とその指導 宮崎太樹(日野市立日野第一中学校主任教諭)

「受容語彙」と「発信語彙」について「受容語彙」は、「聞いたり読んだりした時に、意味がわかる語彙」、「発信語彙」は、「話したり、書いたりする時に使用できる語彙」である。「受容語彙」になったものの中から、特に有用なものが「発信語彙」になっていく。

「論理・表現」における学習評価ー『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』を読み解こうー 本田敏幸(千代田区立九段中等教育学校、都留文科大学非常勤講師他)

「思考・判断・表現」の評価について 「思考・判断・表現」の評価規準と記述内容は同じ文尾のみが「〜しようとしている」となっている。つまり、「思考・判断・表現」があれば「態度」もあると判断できる。従って、外国語科では「思考・判断・表現」と「態度」の観点別学習状況の評価は同じになることが多い。学習調整や粘り強い取組が認められる場合には、「態度」の評価を1つ上げても良い。

授業力は「書く力」に比例する 教師のための綴り方教室から 第11回 第3章「編集力を鍛える」③「授業を「副詞型」にすると生徒が自ら語り出す」(中嶋洋一 関西外国語大学教授ほか)

『副詞型』を展開する教師は、コミュニケーションの『目的・場面・状況』を児童・生徒と共有する。その発問は、副詞や副詞句に焦点が当てられ、「なぜゆっくり歩いたの」や「どうしたらできるかな?」のようにwhyやhowを生かした発問が核にされている。副詞に特化すると多様な答えが生まれる。それが推論発問(行間を問う)や評価発問(自分の考えを述べ合う)につながる。

小学校、中学校で道徳の授業が上手な教師は教科も、総合的な学習の時間の授業もうまい。彼らは、資料のあらすじに時間をかけない。最後に説諭もしない。では、何をしているのか。資料の中の「セリフ」や「ゆっくりと・慌てて・顔を伏せたまま」といった「副詞」も注目し、例えば「なぜ、そうしたのか」と尋ねて心情を読み取らせている。さらに、文中から主語や本質に迫る「副詞」を取り上げ、絶妙な問いかけをする。彼らは、中心発問と補助発問を見事に演出できる。

ブリティッシュ・カウンシルpresents English Richな授業のための指導技術ブラッシュアップ講座 第4回 「内容理解の力を育てる読む指導」(ロス・マルコム、河合千尋 ブリティッシュ・カウンシル)

生徒を自立した読み手に育てるためには、その中間地点を見つけることが必要。「ゴルディロックスの法則」で、「熱すぎず」、「冷たすぎず」の「ちょうどいい」支援を提供する必要がある。特に、「背景知識」(スキーマ)と「新出単語」。Think-pair-shareとは、自分で考え、ペアにシェアし、全体に聞く。私が授業で使っている方法と同じである。①自分で考える時間を与えているので、ペアの意見に振り回されることはなく、②ペアに自分の考えを伝えるので、全員に発言権が与えられ、③全員の前で発表する際も自信を持ってできる。

英語の文字の指導法 第11回 指導の実際⑦ 手島良(武蔵高等学校中学校教諭)

①縦・横の直線からなる文字:ILEFTH ②斜めの直線を含む文字:ZVWNMXYKA ③時計回りの半円を含む文字:DPRB ④反時計回りの円(の一部)を含む文字:CGOQ ⑤その他:JSU 指導の留意点 同じグループの文字をI→L→E→F→T→Hの順に練習させる。 字形について なお、Iについて。英国の文字練習量では、縦棒1本だけからなる字系を示すものが多く見られる。小文字の「エル」と見分けがつかないからと、日本では、縦棒の上下の端に短い横棒を添えることが一般的。中には既成のフォント一式にないからと、わざわざこの字形を作る出版社もある。しかし、「小文字のエル1文字」の単語は存在しないので、もし縦棒1本の単語があれば、それは「大文字のアイ」で、1人称単数の代名詞の主格に定まる。これは目から鱗の情報であった。

授業に活かせる基礎英語講座 part4 根岸裕

太田にはこの100年度初の本格的な「二刀流」野球選手だ。Ohtani is the first two-way baseball player in a century.

今月の時事英語 

vax (vaxx) ワクチン、ワクチン接種の短縮語 preserverance 忍耐根気強さ

Memo

「中学生の英単語の読み書きの理解URAWSS-English」このアセスメントは中学生の英語学習における学習障害を診断したり、細かな認知的困難を明らかにすることを目的に作られている。

 ハーバード大学の心理学者ガードナーが提案した多重知能理論(MI)

ラジオビジネス英語2022年1月号を聞いて

assertive 率直にものを言う、積極的な

strive to 〜するように努める

whatever the outcome 結果がどう転んでも

the point of contact 窓口、連絡先

liaison 調整役、連絡係

I’ll never let you down. 決してあなたを失望させません。

hence だから、故に

commencing September 1 9月1日付けで

hedge fund ヘッジファンド、投資会社

the other domains それ以外の面

get the hang of it コツをつかむ

look over ざっと目を通す

scan ざっと目を通す

read through じっくりと通読する

progress 名前動後で発音が違う

「個に応じた英語指導を目指して〜ユニバーサルデザインの授業づくり〜」を読んで

「個に応じた英語指導をめざして ユニバーサルデザインの授業づくり」村上加代子 くろしお出版 2021年

 初めて村上加代子先生にお会いしたのは、2011年。私が教育委員会の研修員をしている頃、研修のテーマが「特別支援教育」だったため、英語と特別支援教育をどう結びつけようか思案していたところ、村上先生の講演をお聞きして、大きく影響を受けた。「英語だけ苦手な子がいる」他の教科はとてもできるのに、英語だけ苦手な子が教えているこの中にいた。1人だけではなく、受け持つクラスには必ずと言っていいくらいいた。とても不思議に思っていたので、頭の中の霧が、講演後にスッと晴れた気がした。

 「英語の文字と音とが一致させられない」のである。音韻意識を上げてやらないと、解決できない。認知的にそのような脳の処理が可能ではないので、他の子どもと同じようなアプローチでは、英語の苦手意識を除去することはできない。

 村上先生が提案してくださった方法、音韻意識(音韻認識)を上げるために、音素トレーニングをしたり、文字の書き方やノートを工夫することで、子どもの困り感を少しでも取り除いてあげられたら、英語に苦手意識を下げることができる。

 私が指導主事になってからも、夏休みの研修会に招聘して、たくさんのことを小中学校の先生に教えていただいた。

 五感で英語を学習することで、良い方向に向かうことがある。 

 「触覚」を加えて段ボールや紙やすりのようなざらざらした面を指でなぞるだけで、鉛筆とはまた違う指先の感覚となり、文字の動きを覚えやすいと感じる子どもがいるかもしれません。鉛筆の代わりに筆を使うのもいいでしょう。「ゆび筆」と言う指にはめて使う筆があります。これを使って「水半紙」に水でアルファベットの文字形を書く活動などは、水があっという間に乾いて何度でも書けるだけでなく、腕も動かすため、不器用さがある子どもでも気持ちよく楽しく行えます。

 ここでも、動機づけについて提案されている。デシ&ライアンの「自己決定理論」からいつも考えさせられるのだが、村上先生はこう記述する。

 子どもに必要なものを自分で選ばせることも大切です(中略)学ぶ手段を「選ぶ」ことは、自主的な学びの態度の育成にもとても大切です。教員が「こうしなさい」と指示するのではなく、「こういうやり方だったら自分はできる」と思える手段を身に付けさせることが自信につながります。うまくいかなかったら、また違うやり方をすればいいのです。

 小学校では、ローマ字を訓令式で学ぶ。津はTsuではなく、Tuになってしまう。これは「ヘボン式」でローマ字を学ぶ中学校では、少し困ることになる。

 ローマ字を小学校で訓令式で学ぶことは、「日本語の音の仕組みを理解する」という観点から見ると、「英語教育に悪影響」という議論はふさわしくないでしょう。

2020年1月1日から、公文書などで日本人の名前をローマ字で書く際、「姓→名」の順とすることを決めました。

 五感でアルファベットを学ぶ方法がいくつか紹介されていた。

 活動例③ 背中に書いた文字を当てる 活動例④ bとdを指で作ろう

 背中に書かれた文字を当てることは、頭の中にアルファベットの概念ができるのでとても良い。また、bとd、pとqはよく間違えるので、初学者のうちにしっかり概念形成をしておくことが大切だ。

Sasoon Primaryフォントを使うが英語圏ではよく使われている。

 アルファベットを書くことに苦労している子どもには、初学者であればあるほど、書字練習のノートは4線にこだわらなくてもいいでしょう。文字の形にまだ慣れていないうちから4線を用いると、複数の情報処理をしなくてはならなくなり、誤りが増えます、アルファベット書字では、ベースラインが基準となります。英語ノートの奥はベースラインは赤字や太線ですね。アルファベット文字の書字練習では、文字は1本の線(ベースライン)の上に書くことから始めると、失敗や間違いがありません。視覚的な情報を減らし、書くときの動きに集中させましょう。文字の形がベースライン状にスムーズに書けるようになれば、2本線に挑戦しましょう。2線の練習では、大文字と小文字は別々に練習します。

 左利きの子どもへの書字指導 紙が引っかかるなど、ストレスが大きい。”left-handed handwriting”や”left-handed learner”などの用語で検索して、処方を学ぶ。ノートの角度は35度くらい。左ではなく右にお手本を書くこと。

 アルファベットの音指導 (指を3本立てて、1本ずつ指しながら、ドゥ、オ、グ。もう一度言うよ(1本ごとに指しながら)、ドゥ、オ、グ。さあ、最初の音はなんだったかな」のように、視覚的手がかりも与えながら、「初めの音」を全員がわかるように指導する。

 アルファベット短母音の指導 i e a o uの順に5つのたん母音を書き、順番に発音と動作を説明しながら一緒に発音する。i(口をパカッと開けて)、e(口をしっかり横に開いて笑顔で)、a(eの口をキープしたまま顎を下げて)、o(たてに丸く口を開いて)、u(喉の奥から短く低く)

 オンセットとライム オンセットは「音節の母音より前の子音の部分」、ライムは「音節の母音とその後ろの部分」fishであれば、fがオンセット、ishがライム。

 ワーキングメモリとは「情報を一時的に記憶・処理する能力」と説明されています。短期記憶と違う点は、記憶だけでなく処理も含むことです。頭の中のワーキングメモリというメモ帳に情報を書き込み、それが重要な情報だと判断した場合は長期記憶に移し、そうでないと判断すれば消されます。そしてこのメモ帳の特徴として、ワーキングメモリの容量には制限があることが指摘されています。ワーキングメモリの弱い子どもたちのためには、3文字単位以上の読み書き練習では、操作する情報量を減らす目的でオンセット-ライム単位を用いるといいでしょう。単音節の単語を読ませる際に、「母音の前」と「母音から後ろ」の2つの音声のまとまり(チャンク)に分けます。例えば、”camp”という単語は4つの音素([k][ae][m][p])でできていますが、オンセット・ライム単位ではc-amp([k]-[aemp])のように2つのチャンクになります。

 読めるごと暗記する語 tricky wordsと呼ばれるアルファベットを繋ぐだけでは読めない単語が多く存在しています。One, the, he, are, all, youなど。視覚的暗記が必要な単語を、「毎週○語」のように目標を立てて、暗記に取り組みます。

 特別支援教育の原点に立ち返って、

「特別支援教育の視点」を持つとは、「どう教えるか」の前に「なぜつまずくのか」という疑問を持ち、その答えを生徒と共に探す姿勢ではないかと思っています。

 我らが赤木先生の著書の引用がある。

 「できることだけを追求することは子供を追い詰めることにつながる」こともあるため、「できる」「できない」以外にも価値があること、「考えることの楽しさを伝える」こと、「違いを尊重し、つながりを目指す授業を展開すること」など、教員が「自分たちの子ども観・教育感を自覚し問い直すこと」(赤木、2017)を大切にするように呼びかけています。

 バリアフリーとは、生活の中で不便を感じること、さまざまな活動をするときに障壁になっているバリアをなくす(フリーにする)こと」と定義されています。ユニバーサルデザインとは「予め、障がいの有無、年齢、性別、人種などにかかわらず、多様な人が利用しやすいように都市や生活環境をデザインする考え方」です。その場合、段差をなくしてスロープをつけることはバリアフリーになるでしょう。一方、学校の設計段階からスロープをつけたアプローチにし、エレベーターも設置しておけば、車椅子の子どもだけでなく、足の怪我やなんらかの必要性がある子どもも移動がしやすくなると考えるのがユニバーサルデザインです。

 平等・公平・公正さのちがい(Equality, Equity, Justice)

 平等・公平・公正さのちがい(Equality, Equity, Justice)
 平等・公平・公正さのちがい(Equality, Equity, Justice)

いろんなサイトに 平等・公平・公正さのちがい(Equality, Equity, Justice)が出ている。いろんなサイトに拡散しすぎて、オリジナルはどこにあるのかわからないので、出典先を明示できない。Justiceの部分が「ユニバーサルデザイン」を意識して、「バリアフリー」として計画されていることだと思う。

DSM-5から学習障害は限局性学習障がい(SLD:Specific Learning Disablility)と呼ばれるようになりました。なかなか周囲に理解されにくく、「怠けている」「やる気がない」と誤解されがち。

セグメンティングについて 音素の操作、特にセグメンティングはネイティブの子ども達にとっても大変難しく、小学校入学時の段階でも読み書きに十分な音韻意識が自然に獲得できているのは半数に満たないと言えます。音韻意識の調査結果では、単語を音素の単位に分けるスキルの方がつなぐスキルよりも難易度が高いことが明らかにされている。

文字の名前は”letter names”、文字の音は”letter sounds”のように区別して表現されることが多いようです。

音声を文字に変換する処理はエンコーディング(encoding)、(文字を音声に変換する処理はデコーディング(decoding))と呼ばれる。

カタカナをふらせる指導の弊害は、「日本語の音節で英語の音声を認識する癖をより強固に定着させてしまうことだと考えています。音節のリズムが違う、strongは英語では1音節、日本語ではなんと5音節。この違いがカタカナと英語での発音の違い。

 国語のつまずきから予想した英語のつまずき対応例 文字を読むこと(音を思い出すこと)、書くことに時間がかかる → 「文字を思い出すのが大変なんだね」という気持ちに寄り添い、アルファベットシートを見て書くことを許可したり、パソコンやタブレット端末の使用スキルを身につけさせる、スピーキング活動などで英語の楽しさを感じさせながら音声的な語彙量を増やしていく 文字が汚く、文字のバランスが悪い → 「もっときれいに書きなさい」などとは絶対に言わないようにし、手等での動き方などを具体的に示し、徐々に「読める程度」の文字をめざす、書字練習より学習内容の理解を優先し、困難の程度により合理的配慮としてパソコン入力を認める

 

「人生の苦しさについて」を読んで

「人生の苦しさについて」曽野綾子 青志社」2011年

 勤務校の教え子が貸してくれた。とても自分の生き方の参考になるので、読む価値は十分にあった。そのような機会をくれた子どもに感謝したい。

 作者の生き様が描かれていてとても感動した。これほどまでに達観して色々なことが考えられるのか。

 一つだけ印象に残っていることがあり、自分でもそう思っていただけに、それが確信へと変わった。「仕事をしている人は長生きである」ということだ。自営業や職人が多いが、死ぬ寸前まで仕事と対峙している。90歳近くになってもまだ仕事をしている。「まだ」というと、語弊があるが、高齢になっても“まだ“、仕事を突き詰めて、自分の仕事の質を芸術家の域まで持っていこうとしている。「何歳になっても何年やっても完璧な仕事はできない」と堂々と言う。「プロフェッショナル仕事の流儀」に登場するプロフェッショナルたちは口を揃えて同じことを言う。

 曽野綾子さんもその1人である。90歳になっても、死を間も無く迎えることについて躊躇わずその運命を受け入れるだけの準備ができていると自覚しているにもかかわらず、文筆活動を継続している。

 仕事をすると言うことは、社会に貢献していると言うことであり、自分に責任がかかってくる。社会の歯車として働いているので、その歯車の一つとして責任を果たさないと社会の末端の部分が動かなくなる。働くと言うことは責任を果たすことである。それから解放される事が、隠居する事であったり定年する事であるが、それではボケてしまう。仕事をするから、ドキドキし汗をかき、「次の日も仕事か嫌だな」とプレッシャーを自分にかけるのである。このドキドキがなくなると、責任がかからなくなると、ボケてしまうのかもしれない。定年して隠居すると病気を発症したり、心筋梗塞や脳梗塞に見舞われるのは、自分がもう社会には存在しなくてもいい人間だと自分で錯覚してしまっているのかもしれない。

 「60歳まであと何年」や「定年まであと何年」と数える自分を戒めて、一生働ける喜びを感じないと。それは教師という仕事だけでなくてもいい、通訳案内士や英語を使った他の仕事を「趣味」(趣味と言いながら遊びではダメ。金銭と対価できるくらい質の高い趣味)として続けていけたらと思う。「趣味」の域まで喜びをもって取り組み、質を向上させていければと思う。

英語教育1月号を読んで

第1特集「指導・学校・研究・・・もっとあれこれ 英語教育の当たり前を疑う」 第2特集「いまさら聞けない 高校新課程どこがどう変わる?」

教科書の音読って必要? 小菅敦子(元東京学芸大学附属世田谷中学校・武蔵野大学他)

新学習指導要領に変わってから指導内容が多くなり、ペースがつかめないこともあって、音読がやや疎かになっている。ここにきて、少しやり方を考えなければならないと考えていた。Chorus Readingについて、「教師は生徒が本当に教科書の文字を見ながら読んでいるか観察し、生徒の発する英語の音に耳を傾ける。」大きく、みんな揃っている方が美しく見えるし整って聞こえるが、果たしてみんなしっかり言えているかどうかは疑問だ。文字を見ながら口を開いて言えているかどうかが問題。Buzz Readingについて、「少なくとも2回読ませることを推奨したい。」slower learnerが1回読めるような配慮もある。 Individual Readingについて、「仕上げとして、生徒一人ひとりに読ませて、クラス全体に聞いてもらう機会を作りたい。」私の授業で言えば、exciting timeで、名前の書いているカードを引いて、その生徒たちに読ませると良いかもしれない。

ドリルや練習って必要?ーリスニング力向上の視点から 藤田義人(昭和学院秀英中学校高等学校教諭)

脳内にある音声と実際に話される音声がずれていることから、聞き取れないことがある。それに対処するために、「脳内にある自分の音声仮説と本物の音声とのずれを認識させる。その後、スクリプトと及び音声を確認した上で、生徒の音声仮説を修正させることになる。」また、「実際、授業の最後には完璧に聞けたと思っていた素材でも、少し時間が経つとすぐに聞き取れなくなるものである。それは生徒の脳内にある音声モデルがまだ不安定なためだ。その意味でも、家庭学習でもしっかり練習することで揺るぎのないリスニング力をつけるよう伝えている。」と、家庭学習でのリスニング学習を繰り返し行い、ルーティーン化すること促している。

困りのある生徒への必要な支援 UDの視点を持って教材を作成する 佐藤良子(麗澤大学講師)

テストの解答欄について、丸括弧(  )では、学習者に余計な負担をかけてしまうことが提案されている。言われてみれば納得。「罫線や枠で設けられた記入欄とは異なり、答えを水平に書くことが難しく感じる生徒もいるからです。」

マーケティングには「キャズム理論」というものがあり、集団全体の16%の人々が使用するようになると、その商品は一気に市場を席捲する。(佐藤明彦 教育ジャーナリスト)

めあての設定をしっかりすること。そのめあてにどれだけ迫れているか「中間指導」をすること、そして、その時間の「到達目標が達成されているか」振り返りカード等でチェックすること(太田洋 東京家政大学教授)

高等学校新学習指導要領の実施に向けてー指導と評価の一体化の実現 富高雅代(文部科学省教科調査官)

「指導と評価の一体化」の具体 ⑥主体的に学習に取り組む態度の評価について 目的や場面、状況などに応じた言語活動を行うためには、「外国語の背景にある文化に対する理解」、「聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮」を伴う必要がることに鑑み、生徒が目的や場面に応じたコミュニケーションを図ろうとしている場面で、主体的に学習に取り組む態度を看取る必要がある。言語活動の場面で、思判表と主体的は一体的に行うことができる。両評価は一致することが多い。

高校の新しい学習評価に向けてーまずは評価基準を作成しよう (本田敏幸 千代田区立九段中等教育学校講師)

思判表の評価規準の例 コミュニケーションを行う目的や場面、状況などを記述し、特定の言語材料は考えない、また、文尾を「〜している」とする。主体的の評価規準の例、原則として、「思判表」の評価基準の文尾を「〜しようとしている」に替える。

授業力は「書く力」に比例する 教師のための綴り方教室から 第10回 第3章「編集力を鍛える」②「レアリア(実物教材)が「やりたい!」を引き出す」(中嶋洋一 関西外国語大学教授ほか)

“Realia-レアリア(実物教材)“の力である。さらに「即興の活動」「自分なりの考え」「自己責任」「制限時間」などの要素が加わるので、時間を忘れて取り組むようになる。学習の目的は、知識の獲得でも、試験に合格するためでもない。「概念形成」のためである。学習をとおして、自分の「概念」をさらに深く豊かにするためだ。人は生涯をかけて「学習」し続ける存在なのである。

英語の文字の指導法 第10回 指導の実際⑥ 手島良(武蔵高等学校中学校教諭)

「2線指導」の意義 自分が書こうとしている文字が、1 この2線間に収まるか、2 上に少しはみ出るか、3 下に少しはみ出るか、4 それ以外か、

「総選挙」は、general election、「解散総選挙」は、snap election

ブリティッシュ・カウンシルpresents English Richな授業のための指導技術ブラッシュアップ講座 第3回 「音読指導のブラッシュアップ」(ロス・マルコム、河合千尋 ブリティッシュ・カウンシル)

音読により2つの力を育てることができます。1つはデコーディング(文字の音声化)で、単語の綴りと音を正確に一致させることができる力です。もう1つはプロソディ(韻律)。これは適切な間、強勢、抑揚で音読できる力で、この力があると読み手がどの程度内容を理解しているかが聞き手に伝わります。

英作文の知識としては、仮定法の帰結節に現れる法助動詞として全人称に対して使えるwould, could, mightのみを教えれば良い。ただし、受容の知識として、主語が1人称のI/weの場合、帰結節にshouldが現れることがあり、その場合、wouldと同様の意で義務の意味はないことを英語教員や学習の進んだ生徒は理解しておくべきである。(野村忠央 立教大学准教授)