英語教育11月号を読んで

 今月は第1特集では、「スパイラルな指導で学びを確かに〜既習事項の定着を高める〜」、第2特集では、「トリビアで英語を楽しむ」、第3特集では、「リモート授業の不安に負けない 大学生の学びを大切に」である。

 私が興味を持っている英作文指導についての記事があった。

 「英語につまずいた生徒が前を向く指導Q&A」(山本 由貴先生 福井県敦賀市立角鹿中学校)の「『書くこと』が苦手な中学生が多く、指導に悩んでいます。改善のポイントは?」

 山本先生は次の3つのポイントをあげている。

 1 「相手意識」と「目的」を持たせる

 「相手意識」は今や英語教育では欠かせないキーワードである。どんなに立派な作文が完成しても、どんなに発音よく発表しても、聞いている相手に伝わらなければ全く意味がない。また、聞いている相手の状態、発達段階、英語の能力、環境、時間など、その場の状況をよく理解して発表する(作文する)ことが相手意識を考慮したプレゼンテーション(作文)ということになる。そして、「何のために」書くのかという目的をしっかり持つことである。書かされている感があると、目的なしに書くと、いい文は書けない。「これは、誰のために、どういう目的で」書いているのかという明確な目的意識を持たせることが大切である。

 2 文や文章全体の構造に目を向けさせる

 主語動詞はもちろんのこと、自分が書いている文がどのような構造をしているのか、語順を意識して書くこと。

 3 フィードバックとリライトを大切にする

 English Journal(英作文の課題をこなす専用のノート)を生徒1人1人に持たせて、心の動きを記録し、大切なポートフォリオの役目を果たすよう支援。月曜日:テーマ確認とスピーキング活動、(家庭学習)授業で話したことをもとに作文、火曜日:書いたものを提出書いた(1回目)、水曜日:ALTとJTEからフィードバック、木曜日:(家庭学習)返却されたノートを見て、リライト、金曜日:再度提出させた上で、今週のBEST英作文の共有

 なるほど、私の「週末課題」より細かくstep by stepで行われている。今の生徒には合わないかもしれないが、やってみたいと思った。この山本先生のやり方で、月曜日のスピーキング活動というのがあるが、これが最も大切である。「言い慣れたことは書きやすい」のである。私のストーリーリテリングにおいても、何度かペア交流した後に書かせると、slower learnerもスッと書くことができる。

 さて、英作文の私の考えるやり方として、

 英作文指導のポイントは、次の3点。

  1 短時間で長期間の指導   

 長くとも15分程度で1回を終えられる分量の課題設定とそれを長期間できる環境の設定 

 例えば、「週末課題」のように、1週間に1回、20分くらいでできる課題を週末に出題し、週明けに回収する。これを3年間(担当学年によっては1年間)継続させる。

 山本先生は記事の中で、「フィードバックとリライトを大切にする」と書いている。ここで大切になるのは、リライトである。リライトさせないと、間違った自分の文章が完成することはなく、間違ったまま覚えてしまう。リライトされた文章を見るだけでなく、もう1度書いてみるということが大切なのである。

 そのリライトされた文章をさらに、次のようにexposureするとよい。

  2 exposure(晒すこと)

 Journal化すること

 Journalというのは記事だったり、通信だったり、まとめたものにすることである。子どもたちの英作文をプリントや通信にして全員に配付するのである。ここでも、いくつかの選択肢がある。

 一つ目は、子どもたちが書いたものをそのままコピーして貼り付けて配布するパターン。字で誰の作品かわかったしまう虞があるが、それも考慮の上で配付する。

 二つ目は、名前を入れるのか入れないのか。自分の作文だと周りに知られたくない子どももいるし、口だけでは「見られたくない」と言っている子どももいる(本当はみんなに見て欲しい)。

 三つ目は、PCで英作文を打ち直して配付するパターン。これだと誰の作文かはわからない。

 四つ目は、全員のを取り上げるか、優秀作品だけにするか、一部の生徒の作文にするか(できはともかくとして)(順番、抽選)、できは関係なく意図的に一部の生徒の作文にするか(典型的な間違いをしている作文を取り上げて授業で解説するなど)。

 学年初めなどは、PC打ち、名前なし、優秀作品だけを取り上げた。すると、翌週から取り上げて欲しい生徒が頑張って書いてくるようになった。こうなるとしめたものである。

 掲示すること

 提出された作品をきれいにデコレートして、教室の一部や英語教室などに掲示すること。ここでも大切なことは、アップデートすることである。ずっと貼りっぱなしになっていて誰も見なくなっているのに(紙も汚れてしまったり破損してしまっているのに)、そのまま放置されることは避けたいものである。Journalと交互にするのもよし、とにかく「みんなに見てもらいたい。」という気持ちだけは忘れずに、定期的に掲示することが大切である。その掲示物に触発されて英作文を頑張ってみようと思う生徒は必ずいる。

 授業で批評会をすること

 とにかくexposureすること、という原則からすれば、授業の冒頭「短時間学習」で、英作文を机上に置いて、子どもたちが移動してそれらを見合うという互見会を開いてもいいかもしれない。45秒くらいでタイマーをセットしておいて、時間がくれば次の席に移動して英作文を読むことにする。時間的にあまり余裕がない時は、一言メッセージを書くという時間はないと思うが、一通り読み終わった後に、どの作文が良かったか、またその作文のどこが良かったのかを書かせてみてもいいかもしれない。

 3 英作文させるトピックについて、話す活動をさせてから書かせること

 これは先ほども述べたので、詳しくは書かないが、話すことで相手意識も生まれるし、目的もはっきりしてくるような気がする。「この単語はどう書くのだろう?」「この表現は教科書のどこかに載っているのかな?」単純に書きたいという気持ちが生まれてくるようにさせるのが、「話す活動」である。

 表現させることは難しいことである。表現することが1番大切なことであるから、当たり前なのだけれど、もっともっと追求してくべきことであると思う。