「英語教師のための実践研究ガイドブック」を読んで

「英語教師のための実践研究ガイドブック」田中武夫、髙木亜希子、藤田卓郎、滝沢雄一、酒井英樹 編著 大修館書店

 理論研究は、大学院の修士課程の時にやったが、根気と時間がないとなかなかできない。しかし、「実践研究」であれば、普段の授業を研究の材料にでき、さらに授業改革や自分の授業の研究、教えている子どもたちの状態や学習環境などを深く知ることができる。実践研究のやり方を勉強して、やってみようかと思う。できれば学会で発表できればいいなと思っている。

 まず、実践研究とは、「教師の教育実践の質的な向上を図るために行われる体系的な研究の1つである。具体的には、教師自身が日々行っている実践の現状を理解したり、実践上抱えている課題を改善したりするために行われる研究」である。

 目的は、実践の現状を理解し、その現状での課題を改善するために行われる。

 実践研究が成立するための3要素は、「問い」、「データ」、「分析・解釈」である。

 「問い」とは、日々の実践の中から立ち上がった教師の問いに対し、教師自身が答えを探求する試みである。2つに分けられ、担当しているクラスで、ある指導をしたら何が起きるのか見ようとする「課題解決型」と、授業が行われている教室の中で何が起きているのかを理解しようとする「理解型」がある。

 「データ」では、テストや質問し、生徒のワークシート、振り返りのコメント、教師の日記、メモまで使われることがある。

 「分析・解釈」では、収集したデータを先に立てた問いに答えるために見やすく整理し、収集したデータの意味について分析したり解釈したりすることである。

 実践研究のステップとしては、① 問いを立てる(問を明確にする)、② データを集める(データのタイプを知る、データを収集・整理する)、③ データを分析・解釈する(データの分析をする、データの解釈をする)、④ 研究を共有・公開する(研究を総括して発表する)

 「問い」について、「理解型」の問いとは、目の前にあるクラスの中で何が起きているのかを見る問いである。つまり、実践上における教師や生徒の現状について理解するための問いである。「課題実践型」の問いは、今教えているクラスで、あることを試してみたら何が起きるかを見る問いである。つまり、実践上の指導の効果を確認するための問いである。

 「よい問い」を見つけるためには、①「重要性」(実践の理解や今後の実践の改善に大きく貢献するか?)、②「明確性」(何を問うているかがわかりやすいか?)、③「可能性」問いに対する答えを出せる可能性があるか。

 「重要性」とは、教師が行っている実践に対して、特に重要と思われていることを「問い」にしているかどうか。「大きな声を出させる指導」→「目的意識・相手意識を持って考えることや意見を伝え合うこと」

 授業を見る4つの視点、①目標の設定、②生徒の把握、③教材の解釈、④方法の考案

 「データ」について、「教師が英語で授業をすると、生徒の認識や表現内容はどのように変わるか」という問いに答えるためには、「生徒の認識」(「振り返りシート」の分析・解釈から)、「生徒の表現内容」(「授業中のスピーキング活動のビデオ録画)から得る。ここから、次のような解釈が導き出せる。①教師が英語受容を行うことで、生徒の英語に対する苦手意識が軽減した。②発話の量には影響は見られなかったが、教師の問いかけに対して応答しようとする生徒の数が増えた。

 授業観察メモ、授業日誌については、授業の中で起こった出来事、その出来事が起こったときの児童・生徒の様子や発言、その出来事に対する観察者の感想や気づきについて記述することが大切である。

 授業日誌を書く際には、授業中の出来事や様子などの事実と、教師の感想や気づきなどの解釈を分けて記録する方がよい。事実を正確に記録すると、後で実践を共有する際に役立つ。

 授業日誌やアンケート(質問紙)、インタビューのような質的調査の場合、質的分析を行う。それは、「個人の特徴やその変容をとらえるために、集めた文字データや音声・動画、データなどをカテゴリーに分類すること」である。まず、データをしっかり読み込み、データ全体から得られる理解や気づき、印象をつかむこと。次に、データから必要な箇所を抜き出す。さらに、気づきや考えをメモする、要約する。その際に、コードを付与すると、データの内容を端的に把握しやすい。コーディングとは、文書データを読み込む中で、気になる箇所や繰り返し現れる現象、表現について要約し、それらを的確に表す見出しをつけること、コーディングをすることで、データについて端的にまとめたり、深く考えたりするのに役立つ。最後に、要約されたデータを整理すること。コーディングされたデータの傾向を数量化してまとめる。そして、コードの関係性を踏まえて、カテゴリーを作成する。

 まずは、問いを立ててみよう。そして、振り返りカードから生徒の声を収集し、自分の授業メモもしっかりとることにする。自分の授業改善や生徒の英語力向上に役立ちそうだ。