英語教育12月号を読んで

「書くことは考えること『相手意識』に立脚した論理的思考」で、山岡大基教諭(広島大学附属中・高等学校)は、

(中略)「思考力」とは、コミュニケーションの目的・場面・状況を考え、相手にとって最適な言葉遣いを選択していく。そういった「相手意識」を働かせることが「思考」であり、それができる力が「思考力」

と語っている。さらに、

 外国語教育における「課題」とは、一義的には、「コミュニケーション」なのだということです。その限りにおいては、英語の授業として育てるべき「思考力」とは、コミュニケーションの相手を意識して英語を使う力だと言えるでしょう。

お互いの考えや意見を伝え合うためには、コミュニケーションを成立させなければならない。その上では、様々な課題が存在する。話す力、聞く力、表現する力、伝える力、会話構成能力、そのどれもが必要であり、それらの力をつけていくことも課題である。その中でも最も大切なものは、「相手意識」であると言う。

 自分の手持ちの情報をどのように活用すれば、読み手に納得してもらうことができるのか、という思考が必要になります。

「少人数ゼミでのWriting指導 リベラルアーツ教育とAcademic Essay Writing」で、山本永年教諭(市川中学校・高等学校教諭)は、

 Academic Essay Writingにおいて、英語のチェックについては2点心がけていることがある。1つめは、生徒同士が読んでわかるかどうかという点である。(中略)2つめは、オンラインによる文章のチェックである。Cambridge English Write & Improve®︎やGrammarly®︎を生徒に使わせている。

と、オンラインでミスをチェックさせてから提出させている。少し調べてみた。Cambridge English write & Improve®︎とGrammarly®︎は、次のような感じ。

https://writeandimprove.com/

Grammarly®︎はここでダウンロードできる(無料版)https://www.grammarly.com/m

ぱっとみた感じだけであるが、Grammarly®︎の方が使い勝手が良さそうである。是非、使ってみたいと思う。

「書くことに困難を抱える児童生徒への指導」で飯島睦美教授(群馬大学)

は、こんんなんと特性の特徴を考慮した指導について、次の9点を挙げている。私はこの中で、2番目を中心に指導してきたが、さらに8点の興味深い提案がある。

 ①文字の大きさや感覚に注意して書字練習

 ②文字と音の融合 ⭐️ 私が心がけてやっている「音素カード」である。

 ③絵画情報提示 文字や音だけでなく絵で概念を把握させること ⭐️ これも  「音素カード」で提示している。

 ④明示的・演繹的導入 自らルールを発見する(暗示的)が苦手なので、ルールを提示し自動化させる。

 ⑤単語カード並べ替え カードを並べ替えて語順のトレーニングをする

 ⑥パターンプラクティスを活用した自動化

 ⑦演繹的導入によるブレインストーミング 書く内容について内容を膨らませる。

 ⑧スモールステップによる段階的指導

 ⑨接続詞とディスコースマーカーの指導 論理的で一貫性のある英文を作成するため。

 まずは正しく字を書くことから。1年生ではこの部分を徹底的にやりながら、少しずつ文章を書く量をスモールステップで増やしていく。

「文章を『書き直す』ことで考えを明確にする」で佐渡島紗織教授(早稲田大学)は、推敲について論じている。

しかし、文章を「書き直す」ことには、大きな意義がある。表現に関わる直しはもちろんのこと、内容も変わることになるからである。私たちは、考えを言葉にすると文章ができると考えがちである。つまり、考えが先で言葉は後であると。しかし実際は、私たちは言葉の使い方を検討することを通して考えを練るのである。私たちは言葉を操作して施行するからである。この考えの転換を哲学では「言語論的転回」と呼ぶ。だから、書かれた文章を、言葉の使われ方に着目して検討し直していくと、自ずと書き手の考えが整い、その結果、読み手にも分かりやすい文章ができる。

 推敲することで、頭が整理される。内容が良くなる。何度も読み返すこと。稀にデータ保存に失敗して全ての文章が消えてしまった時など、改めて思い出しながら文章を再生すると、前回のより良いものができたりする。そんな感じかもしれない。

MEMO:p+igのようにオンセット(母音より前の部分)とライム(母音から後の部分)に分解して音を合わせる練習

小学校英語 教科書活用のヒント 第9回「スピーキングの指導方法」町田智久(国際教養大学准教授)

Big voice, Eye contact, Gesturesという3要素だけでなく、さらに3要素追加すべきである。Authenticity(身近な場面を設定する), Personalization(児童に関連づける), Creativity(創造性を加える)

新しい日常における英語語彙指導・2ー学習方略指導と語彙テストの観点から 中田達也(立教大学准教授)・内原卓海(ウェスタン大学博士課程)

テストをした方が学習内容が定着することは、エビデンスから科学的に証明されている。ならば、小テストや単元末テストはした方が良いとこの記事を見て確信した。まずはコアミーニングについて、

 コア・ミーニング(複数の意味に共通している中心的な意味)を把握することを目指しましょう。コア・ミーニングを知る上では、オンライン辞書weblio(https://eject.weblio.jp/)が便利です。主な多義語のコア・ミーニングがイラスト付きで掲載されています。

https://ejje.weblio.jp

語彙テストの活用については、

 これまでの研究により、テスト自体に学習効果があることが示されています。(中田2019)つまり、テストは評価のためだけでなく、学習活動の一環としても用いることができます。「学習のためのテスト」と「評価のためのテスト」という観点から、語彙テストの活用法をご紹介します。 

 「学習のためのテスト」においては、興味深い研究があった。単に、テスト範囲のテストを行うより、これまでのテスト範囲を含めた「累積テスト」の方が効果が高いというのである。

 非累積テストと比較して、累積テストは語彙習得を2〜3倍以上促進することが件キュにより示されています。そのため、単語テストを行う場合には、以前のテストでカバーされた単語も出題範囲に入れた累積テストを用いるようにしましょう。

音声テストについては、AELP等のwebサイトからダウンロードできます。

https://inetapps.nus.edu.sg/aelp/

評価のための語彙テストについては、

 Vocabulary Size Test

https://my.vocabularysize.com/

V_YesNo

http://www.lognostics.co.uk/

 Vocabulary Levels Test

https://www.lextutor.ca/tests/

が活用できる。

「罪の声」をみて

 11月の中旬くらいに、友人のMr. Tの勧めで見に行った。彼の勧める映画は、聞いた瞬間はあまりパッとしなくて、「見に行くまでもない」と諦めてしまうことが多いのだが、見に行った映画には不思議とハズレがない。今回のも勧められた瞬間はやめておこうと思ったのだが、どうしても気になって行ってしまった。かなり面白かった。

 公開して1ヶ月で評価が4.0なので大したものだと思う。

 「グリコ・森永事件」をモチーフにした映画で、実話だったら、これで解決したことになるのだろうけど、講談社BOOK倶楽部「塩田武士独占インタビュー」では、

https://news.kodansha.co.jp/20160803_b01

本作を読んだジャーナリストから電話をいただいたんですが、第一声が「これ、どこまで本当なの?」。僕は、取材の過程で作品に描いたような推理が成り立ったことを説明しましたが、その一方であの犯罪のあとには、いくつもの哀しい人生があったのではないかと思っています。とりわけ事件に利用された子供は、どのような人生を送ったのか……。そういうことに思いを馳せるところに、いまあの事件を取り上げることの意味があると思うのです。

とあるので、実話でもあり、創作もありという感じかもしれない。私の中では、この映画を見てあの事件の真相が全て解決されてしまったような錯覚に陥る。次は、映画.comによるあらすじ。

https://eiga.com/movie/91122/

実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬と星野源の初共演で映画化。平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子。

2020年製作/142分/G/日本
配給:東宝

 「グリコ・森永事件」が起こったのは、ちょうど、私が浪人生活をしている時。名古屋の駅裏(現在の新幹線口)に下宿して河合塾に通っていたときの頃。当時の名古屋駅裏はホームレスが多く、冬場は暖かいコインランドリーにたくさんいらっしゃって、まだ19歳の私は洗濯をしに中に入れなかった時があることを覚えている。予備校帰りに、小さいハンドバックにつけられている金の鎖をクルクル振り回しながら近づいてくるお姉さんに、「遊んで行かない?」と毎日声をかけられていた。治安があまり良くない地区に住んでいた。下宿から歩いて10分ほどのスーパーに、「毒入りキケン」と書かれたお菓子が見つかったのは、確か、秋〜冬くらいだったと思う。とても怖かった思い出がある。そして、事件がかなり身近に感じていた。その思い出が今でも忘れられない。

 体制に反旗を翻し、いつか住みよい暮らしやすい身の回りを実現したい、お金持ちや権威者だけがのさばる世の中を変えていきたい、そのためには、緩やかな変革ではなく激しく暴力的な部分もないと、世間や世間の考え方は変わっていかない。イスラム教を世界に広げていく過程で、「ジハード」も止むを得なかったという時代があったのもうなづける。日米安保をはじめとする不安と不満から起こった学生運動が鎮火されても、火種はまだ止まず、反体制を目指し、あの事件へと動いて行ったというストーリーは十分ありうると思う。