
英語教育2月号 大修館書店 February 2026 Vol.74 No.12
第1特集 辞書を引く・読む・味わう 第2特集 足場かけに役立つ授業の小ワザ
【第一特集】
辞書を引く、ぽつ読む、ぽつ味わう
― 書き指導とテンプレート活用 ―
◆ イギリスの子どもはどうやって英語の読み書きを学ぶか
山下かよこさん 第11回:日本でもできる書き指導
イギリスの書き指導では、「何を書くか」だけでなく、**どう構成するか(文章構成)**を明示的に教えます。
書く力は自然に伸びるものではなく、型を通して育てるものという考え方が徹底されています。
▶ 人物紹介テンプレート
物語や説明文、人物紹介は
はじめ・なか①・なか②・おわり の4段落構成で書きます。
- はじめ:誰の話か
- なか①:外見
- なか②:性格・得意なこと
- おわり:自分の意見・感想
中心に似顔絵+ “This is ~.”
左上=見た目
右上=性格
左下=得意・好き
右下=自分の意見
👉 単語選択式にすることで、語彙負担を下げながら文構成に集中できる
👉 A1レベルでも「書けた!」体験を保証できる
これは人物紹介だけでなく、好きな食べ物紹介、町紹介にも応用可能です。
▶ 時系列文テンプレート
(日記・社会見学レポート)
順序立てて話す際にもテンプレートは有効です。
中心=場所やテーマ
左上=いつ・誰が・どこで・何を
右上=はじめにしたこと
左下=次にしたこと
右下=最後に・感想
👉 「First / Next / Then / Finally」の接続語を自然に習得
👉 話す活動との連動がしやすい
👉 社会見学レポートに即活用可能
テンプレートは思考の足場であり、英語表現を支える枠組みです。
【ICT活用の大技・小技】
第47回 プレゼンテーションWebアプリ
Prezi(プレッツィ)でスライド作成
松村由美さん(長崎県立長崎北高等学校)
Preziは、テンプレート選択+タイトル入力だけで
8割程度のプレゼンが自動生成されるAI対応ツールです。
◎メリット
✅ ズーム型プレゼンでダイナミックな動き
✅ 全体を俯瞰しながら要点を深められる
✅ デザイン性が高い
✅ グラフ・ビジュアルが豊富
✅ スマホ操作・発表者ノート表示可能
✅ ストーリー型プレゼンに強い
△デメリット
⚠ アニメーション種類は限定的
⚠ 操作習得にやや時間
⚠ 起動が重い場合あり
⚠ ネット環境依存
👉 特にスピーチ指導や探究発表と相性抜群
👉 「見せるプレゼン」から「伝わるプレゼン」へ
【第二特集】
足場かけに役立つ授業の小技
◆ 支援の質を高めるための
足場かけ6つの視点
(平田幾江さん・早稲田大学)
足場かけ(Scaffolding)は
Wood, Bruner & Ross (1976) による概念で、
ヴィゴツキーの最近接発達領域(ZPD)が背景にあります。
▶ 6つの視点(要点)
① Recruitment(興味づけ)
→ 学習への参加意欲を引き出す
② Reduction of degrees of freedom(自由度調整)
→ 課題を単純化し選択肢を絞る
③ Direction maintenance(方向維持)
→ ゴールを見失わせない
④ Marking critical features(重要点提示)
→ 大事なポイントを明確化
⑤ Frustration control(つまずき支援)
→ 不安や挫折を軽減
⑥ Demonstration(モデル提示)
→ 具体例で理解を助ける
👉 足場は「助けすぎず、放置せず」の絶妙バランス
👉 生徒の自立を目標に徐々に外す
【実践コラム】
持続可能なコミュニケーションのための
外音化(Think-aloud)
英語が止まる原因は
「頭の中で考えすぎている」こと。
外音化とは、
心の声を言葉に出すことです。
例:
I like sports…
sports… what sports?
Especially, I like baseball.
👉 思考を止めないための技術
👉 会話継続力が大幅に上がる
👉 メタ認知を育てる
外音化のポイント
✔ 相手の反応を予測する
✔ 次の選択肢を声に出す
✔ 日本語混じりでもOK
✔ とにかく止まらない
これは生徒だけでなく、
教師のモデリングが鍵です。
【ミニ英語メモ】
● 冬眠
→ hibernation
● 義理チョコ
→
Giri-choco is chocolate given in Japan on Valentine’s Day out of social custom rather than romance. It is usually given from women to male co-workers or acquaintances to show appreciation.
さらに詳しく【第二特集】
足場かけに役立つ授業の小技
― 支援の質を高めるために知っておきたい「足場かけ」の6つの視点 ―
(平田幾江さん・早稲田大学)
近年、「足場かけ(Scaffolding)」という言葉をよく耳にします。
足場かけとは、学習者が一人では難しい課題を達成できるようにする一時的な支援のことです。
この概念は、ヴィゴツキーの「最近接発達領域(ZPD)」を背景に、
Wood・Bruner・Ross(1976)によって整理されました。
重要なのは、
👉 支援はずっと続けるものではない
👉 最終目標は「自立」である
という点です。
では、質の高い足場かけとは何でしょうか。
研究では、次の6つの視点が示されています。
◆ 足場かけの6つの視点(実践的要点)
① Recruitment(興味を引きつける)
学習の出発点は、「やってみたい」という気持ちです。
教師は、
- 身近な話題を扱う
- 選択肢を与える
- 成功体験を先に示す
- 学ぶ意味や価値を伝える
といった工夫で、参加意欲を高めます。
📌 学習は「やらされる」ではなく「やりたい」から始まる。
② Reduction of Degrees of Freedom(自由度を調整する)
難しすぎる課題は、意欲を奪います。
そこで教師は、
- 選択肢を絞る
- 書く量・話す量を減らす
- テンプレートを用意する
- 例文を与える
などして課題を調整します。
📌 「できる範囲」に難易度を下げることが支援。
③ Direction Maintenance(方向性を維持する)
生徒は活動中に目的を見失いがちです。
教師は、
- 活動のゴールを繰り返し確認
- 「今どこまで進んだか」を示す
- 次のステップを明確にする
ことで、学習の道筋を保ちます。
📌 迷子にさせないナビゲーションが重要。
④ Marking Critical Features(重要点を明示する)
学習者は、どこが大事なのか分からないことがあります。
教師は、
- 重要語句の色分け・下線
- モデル文の強調
- 評価基準の事前提示
などで、注目点を可視化します。
📌 「ここが大事」を見える形にする。
⑤ Frustration Control(つまずきを支える)
失敗体験が続くと挑戦しなくなります。
教師は、
- すぐ相談できる環境づくり
- 小さな成功の積み重ね
- 失敗を責めない雰囲気
を意識します。
📌 心理的安全性が学習を支える。
⑥ Demonstration(やり方を示す)
「やり方が分からない」は最大の壁です。
教師は、
- 実際にやって見せる
- 良い例・改善例を提示する
- 思考過程を声に出す(外音化)
ことで理解を助けます。
📌 モデル提示は最強の支援。
◆ 足場かけの本質
足場かけとは、
👉 助けすぎない
👉 放置しない
👉 必要なときに必要な分だけ支援する
ことです。
そして何より大切なのは、
徐々に支援を外していくこと。
生徒が「一人でできた」と感じたとき、
足場かけは成功と言えます。
◆ 教室での核心メッセージ
✔ 足場は一時的なもの
✔ 目標は自立
✔ 教師は調整役
✔ 支援は段階的に減らす
この6視点を意識するだけで、
日々の授業の「支援の質」が大きく変わります。
足場かけとは、
学習者の可能性を引き出すための設計図なのです。









