Pray human を読んで

pray human(プレイ ヒューマン)崔実(チェシル)著 講談社

NHKラジオ第1放送で日曜日にやっている「毎朝」の「著者からの手紙」というコーナーで紹介されていたので、購入してみた。前回紹介した、ふかわりょうの「世の中と足並みがそろわない」もそのコーナーからの紹介である。

いつも通り、小説はネタバレになるので詳しくは書けないが、大変重い話である。ご自身の経験も入っていると、ラジオでご本人から聞いたが、精神的な病を抱える自分の体験を綴っている。病院での経験や親友とのふれあい。

「心の底から自分や自分の周りにいる人を応援する。」

「一生懸命生きる。」

「どんなに理不尽なことがあっても、それと向き合って、生き続ける。」

「自分を受け入れてくれる人を大切にする。」

普段心がけていてもなかなかできないことであるが、文才がありデビュー作が芥川賞にノミネートされた主人公はどんなに不遇な環境でもそれらを追い求めようとする。私よりずっとひたむきに生きている。その主人公の姿にとても感銘を受けた。

第49回森会を終えて

2021年4月11日(土) 中川地域交流センター 出席者6名

「黄金の3日間」と呼ばれる授業開きをどうやっていけばよいのか、教えて欲しいということだったので、私の独壇場になってしまったが、ホワイトボードも使いながら、説明していった。

1 黄金の3日間は担任の第一声と同じである

学級開きの時に、「担任の第一声」と呼ばれる「語り」を行うことがある。自己開示を行い、「何を大切にしているのか。」「これからどういう気持ちでクラスを作っていくのか」「どういう思いから担任の教育観が成り立っているのか」、語りを通じて生徒に伝えていく。1年間で最も緊張する瞬間であるが、ここがうまくいくと、1年間の学級経営はスムーズにいくことが多い。私は1996年からずっと続けてやっている。今現在は担任を持っていないので、学年集会で語りをしている。

これと同じなのが、「教科開き」である。これから1年間どうやって英語の授業をやっていくのか、3日間かけて(3時間かけて)説明していくのである。

2 なぜ「黄金の3日間」なのか

担任の第一声は、1番最初にやるから、心の中に残りやすいのである。これを5月になってやっても、効果は非常に薄い。第一声だから効果的なのだ。これと同じで最初の3日間ぶっ続けで説明するから、子どもの心にも頭にも残りやすい。この最初の3日で話したことで授業がスムーズに進むことが多い。だから、「黄金の」と呼ばれるようである。

3 「黄金の3日間」では何をするのか

私の場合であるが、①自己紹介 ②なぜ英語を学習するのか ③指導者の英語学習について(学習者としての後ろ姿を見せる) ④授業の進め方について ⑤ノートの使い方について ⑥家庭学習の仕方 ⑦宿題について ⑧補助教材(ワークブックなど) ⑨授業のルールについて ⑩授業の係について(私は全員に係を分担して授業に参画させるようにしている) 11 成績の付け方について 12(今年度だけ)新学習指導要領かでの変更点などを行なっている。

⑨と11を丁寧に解説していきたいし、これでも時間が余れば、授業をスローでやってみる。子どもたちはすぐにはできないので、ゆっくり慣れさせることも必要である。また、ファイルや補助教材を配付し、名前を書かせ、少し説明したり、実際に書いてみたりして、新しいものに自分の命を吹き込むことをさせている。

4成績の付け方については、しっかり説明した方がよいか

今年度に関しては、しっかり説明しておいた方がいい。子どもたちは、訳がわからないかもしれないが、「単元毎にまとめの言語活動があり、それも評価の中心になること」「パフォーマンステストが増えること」「ただ『できる』ではなく、『相手意識を持つことと目的、場面、状況を考えながら』、パフォーマンスすること」が大切になってくることを解説する。

ホワイトボードにあるように、内容のまとまり(5領域)と3観点のクロス評価表にどの部分をどのテストで評価するのか、しっかり考えて説明するべきであることを提案した。その後で、「ルーブリック」を作成し、評価に備える必要がある。

私もまだできていないし、どんなようになるかが予測もつかないので、今年1年はしっかり考え実践し、反省するPDCAサイクルを生かそうと思う。

次回の森会は第50回。よく頑張ったと思う。W氏の頭が下がるくらい懸命な取り組みとみんなの情熱でここまで続いたのだと思う。

英語教育2021年3月号を読んで

英語教育3月号(大修館書店)2021 Vol.69 No.13.  第1特集 自分で学ぶ力が必要な今「英語が苦手」をどうサポートするか 第2特集 学校ICT・大学入試はどう変わる?

生徒の「わからない」を受け止める必然性・くりかえしを意識した発問づくりへ 松尾真太郎(神奈川県立新栄高校教諭)

授業のテンポをよくするためには、「必然性」と「2回聞く、2回考える」をキーワードに進めることが大切である。例えば、フードバンクについての内容を取り扱う場合、昨晩何を食べたのか思い出させるところからインタラクションを始める。ブレインストーミングして、いろんなアイディアが頭に浮かぶようにする。「2回…」については、先生側が気をつけること。1回聞いても生徒に伝わらない場合は、2回目はわかりやすくゆっくり質問することが大切である。「2回考える」は、生徒に質問したり指示したりする時に、どう言えばわかりやすい質問(指示)になるのか、「今考えること」。2回目は、授業後に「どう言えば良かったのか」「後で考えること」。

今月の時事英語 西森マリー

Strike ‘himself’ or ‘herself’ and insert ‘themself’. 「彼自身、彼女自身」を廃し、「ゼムセルフ」を使用する。

指導の当たり前を疑う 奥住 桂 帝京大学講師 「使う文法を指定するのって必要?」

「思考・判断・表現」の指導においては、生徒は特定の文法事項などの使用を強要されず、既習の知識をフルに使って目的を達成することが求められます。「正確さ」ではなく、「適切さ」を指導・評価していければよいのだと思います。

新出の文法事項が使えるようになった、ということよりも、その文法事項を使ってできるようになったことがある、という部分を評価しなければならない。さらに、できるようになった仕組み(単元末活動)を作る中で、必ずしも新出の文法事項を使用することはなく、その場合、表現活動がスムーズにできているかどうか、相手意識に立って表現されているか、目的・判断・状況を踏まえているかという部分が大切になってくる。

小学校英語One pointアドバイス 加藤拓由 岐阜聖徳学院大学准教授 単元のゴール活動の工夫と評価(後半)

単元のゴール活動を評価する場合、必ず、適切なルーブリックを設定して、それを活動を行う前に、生徒に配付し、明確なゴールを示すことが大切。

小学校英語 教科書活用のヒント 「将来を見据えた英語指導」 町田智久(国際教養大学准教授)

ラーニングピラミッド 5%講義 10%読書 20%視聴覚 30%実演 50%グループ討論 75%自ら実践 90%他人に説明

English Beyond Words: The Culture of American English “Setting Realistic Expectations(4):The Secret Is Confidence (J・Reese) ‘The Secret Is Confidence’

When anyone ask you if you can speak English, please reply with “YES, just not all of it”. Please do not reply with, “a little”. “A little” is the modest answer, and modesty has no place in English. Using the words, “a little”, has the nuance of saying, “English is a big language, but I only speak a little.” Instead, when you profess, “yes, just not all of it”, there is confidence built into that answer, The nuance is, “English is a big language, I can speak English, but I am ok with not speaking all of it”. By saying, “Yes”, you’re acting confidently, and using English the way the rest of the world uses English.

よく、”A little.”と答えてしまう時があるが、そもそも「控えめ」や「謙遜」という概念は英語にないので、自信を持って、”YES, just not all of it.”と答えたい。「英語は重要な言語だけど、全部を話せる訳ではないです。」

第48回森会を終えて

2021年3月21日(日) 中川地域交流センター 出席者7名

あと10日で新学期という時期にやる気のある英語の先生で集まった。

最初は、浜島書店の浜島さんからいただいて、前回配付した、長野県教育委員会が発行している「テスト改善ハンドブック」でわからないことを出し合った。テスト改善のみならず、新学習指導要領での新しい英語の授業についても記述されているので、それについてもグループで話し合ってもらった、全体共有した。

1 1分間スピーチがうまくいかない

これは本当によくあることである。普段から少しずつやっていかないと急にはうまくいかない。1年生だと10秒から始めて何度もペアを代えて話す練習をするところからスタートすることを勧めた。10秒→20秒→30秒と。子どもたちはできるようになるまで時間がかかる。できるようになるまで不安なので、ふざけたり遊んだりする。その時間も我慢して見守り続けることが大切である。すぐにはできるようにはならない。私たちがいかにsmall stepsを組んで、scaffoldingしてあげるかである。

2 リスニング(テスト)の放送文は1回?2回?

すでに英検は1回の方向に動きつつある。1級はずいぶん前から1回しか放送されない。authenticなsituationに近づけるには、1回であろう。実際の場面ではもちろん1回しか聞くことはできないし、聞き取れなければ、もう1回言ってくださいと言わなければならないので、これの繰り返しをしてしまうと、コミュニケーションは成立しない。これからの定期テストも入試問題対策についても1回で慣れさせていかないといけない。入試や検定試験がまだ2回でやるにしても、授業では1回で慣れさせる方向で。I先生からは、「1回に慣れさせておけば入試が1回でも大丈夫。2回になればラッキー。」まさにその通りだ。

3 ライティングの評価について

fluencyなのかaccuracyなのかを迷っているようだった。私は初学者(1年生)の場合は、話すことにしても書くことにしても、fluencyを大切にしている。まずは、量をこなせるようになってからaccuracyを目指すべきだといつも思っている。「話すことがない」、「何を書いたらいいかわからない」はよく聞かれる。「なんでもいいからとにかく、書け(話せ)!」というのは、いささか無謀だが、それくらいの指示をしないと、生徒たちは動き出さない。

まずは、書いた「量」を評価し、次に「内容」を評価するルーブリックを作る必要がある。Errorについても、Global Errorは減点の対象とするが、Local Errorは個数を制限して、そこまでは減点しないなど、書かない方が損をしない、ような評価にしてはいけない。

4 ライティングの問題文は、日本語ばかりではいけないの?

条件を日本語で提示して、自由英作文をさせるというもの。確かに、日本語で提示すればそれだけ負荷がかからないので、「何を作文すればよいのかわかる」が、「英借文」という観点からは、問題文に英文が書いてあることで、そこから書く内容のヒントを得たり単語を借りたりすることができるので、やはり問題文には日本語の条件提示と英語のガイド文がある方がいいかもしれない。

5 Small Talkはどうやる?

「Small Talkをやってみたいけど、どうやってやればいいかわからない。さらに、それだけ話題を持っていない」日常的な話題や身の回りにあることをForeigner TalkやMothereseと言われる方法を使って、生徒たちにゆっくりはっきりやさしくジェスチャーを使って、語りかけることである。Foreigner Talkは「外国語を習っていて間もない人にわかりやすくその学習言語で話す」で、Mothereseは「幼い子どもに母親がわかりやすく話す」ように話すことである。このForeigner TalkとMothereseでSmall Talkを行うということが非常に重要である。さらに、話題については、「ジャレマガ」というメール配信が非常に有益である。元名古屋女子大学教授のジャレル先生が中学校程度の英語を使って、日常の話題を簡単な英語にしてくれている。これを元に、Small Talkを作ればよいのである。

6 リピートをさせてはいけない!?

まずは自分で読めるかどうかやらせてみることが大切である。文字を音声にできない生徒がおり、ただリピートだけさせていると、周りの生徒の真似をしているだけ先生の真似をしているだけで、読むことができない。わからない単語や読み方をリピートの時に修正することは良いことであるが、読めないまま進むと、独力で英文の読めない生徒を作ってしまうことになる。あくまで、目標は、自力で読める生徒を作ることである。そのためには、「1人で読む(読めるかどうか、わからないところを炙り出す)」→「みんなで読む(わからないところを確かめる)」→「1人で読む(わからないところを練習する)」→「ペアで交互に読む(読めたかどうか確かめる)」という活動を繰り返すと読めるようになる。

まもなく授業が始まる。まずは、「黄金の3日間」を乗り越えて、よいスタートを切りたいものだ。