「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力」を読んで 2

「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力ー読解力・要約力・編集力」中嶋洋一編著 大修館書店(2023年)

【導入と振り返りについて】導入で読み手の心をつかみ、終わりで余韻を残す。教師は授業の最後の5分で、生徒が本時の目標に到達できたかどうかを確認できるようなタスクを用意しなければなりません。授業の冒頭で、その目標を伝えておくことも必要です。ゴールを示せば、それに向けて準備を始めるのが人間です。定期テストの内容を伝える時期と同じで、それが早ければ早いほど学習者は「主体的」になります。導入:Visualize、展開:Realize、まとめ:Organize(学んだことを自分の言葉で言語化すること)。導入は文章で説明して終わりにするのではなく、具体的な写真や映像、生徒の作品やアンケートの感想などを使って、到達点を視覚化し、明確にしておきます。

なかなかできていない。導入でもっと刺激的なものを使う必要がある。一枚の絵、動画、写真、エピソード。今日は何をするのか、強烈にアピールする方法を探す。振り返りカードを蚊書かせる時に少し時間を多く取り、チェックシート(その時間に到達できることになっているカードにA〜Cで自己評価させる)。さらに、その日に学んだことをチェックシートに書かせる前に、チェックシートを見ながら、ペアで交流させることも重要である。

【読解力、要約力、編集力】 編集するためには、記録を残しておくこと。「学習履歴」を残すようにします。授業中も「カルテ」(座席表に書き込むこと)。

「目的・場面・状況」とは、「何のため」という目的と「現状」を理解し、「今、何が求められているのか」を自分で判断するということです。「言語活動を通して」ということは、「つけたい力」をゴールとして最初に示し、教師が使ってみせる。聞かせる、不十分でいいので生徒が実際にやってそれを振り返る場面を作る。できなかったら教師が指導をする、生徒が更新する、そのような指導を展開するという意味です。

言語活動はPresentation(入力、習得の活動)、Practice(ドリル活動、応用の活動、活用できる活動)、そしてProduction(出力、表現や整理の活動)に分かれます。

「50語(200字)で書きなさい」のように語(字)数制限をした方が逆に表現力は高まるということ。それは50分の授業も同じです。「要約力」がないと、50分の中に脈力のない活動を入れ込んで、チャイムがなるまで進めるだけ進むという授業になってしまう。教師が自身の「要約力」を高めていくためには、自分の書いた文書を半分の字数に要約してみることからはじめます。「要約」により生まれた時間を生徒にどう任せるか、関わり合う時間や活動をどうコーティネートするかを考えるのが「編集力」となります。

私は講演を頼まれたり、文章を作成したりするときに、まずは思っていることや頭の中にあるものを雑に全て書き出してみる。溢れるままに書き出さないと、なぜか途中で止まってしまう。全て洗いざらい書き出してから、柱立てを改めて作って、その柱ごとに文章をカットして収めていく。当然その中では不必要なものも出てくるので、バッサリとカットしてしまう。すると、きれいな整った文章になることが多い。

「活用」とは、新しい局面で、自分の力で既習事項を組み合わせられるということ。

「あなたは、この夏にアメリカでホームステイをすることになりました。ホスト・ファミリーは、日本人を受け入れるのは今回で5回目です。日本料理も自分たちで作ります。では、あなたはホストファミリーに対してどんなことをしますか。50語程度で説明しなさい。

下線部分がポイント。どのような「負荷」をどう与えれば良いかを考えるのが教師の「編集力」。負荷を与えれば書きやすくなる。

事実発問:本文中に書かれている情報について直接尋ねる発問で主にwhat, when, whoなどで問いかける。推論発問:直接本文には示されていない内容を行間や読者の背景知識などから推測させる発問でwhy, how, Do/Doe…?などを使って問う。評価発問:本文から得た情報に対する読み手の考えや態度を表明させる発問(Imagine…, Would you like to …?など)。推論発問や評価発問では、生徒から異なった解釈や考え方が生まれやすい。それは、内発的動機づけや個々の読解力を高めること、協働学習などにつながりやすい。

「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力ー読解力・要約力・編集力ー」を読んで 1

「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力ー読解力・要約力・編集力」中嶋洋一編著 大修館書店(2023年)

あまりにも、1行1行が身に染みることばかりなので、何回かに分けてアップしていこうと思う。中嶋先生の研修会やご講演を聞いていても、本当にためになる話ばかりである。それは英語教育という視点からだけではなく、大きくいろんな学術研究や論文、本などを参照して、ご自分の理論を確立しておられるので、参考になる。一度、研修会で、「ご自分の読書の仕方」というのをご紹介されたことがあるが、本にはびっしりと書き込みがあって、読書しながら、自分の頭の中に、「『概念形成』をする」とおっしゃっていたことを思い出す。

“ワクワク”する授業の鍵は、教師の「読解力・要約力・編集力」

日々の授業で自分自身が「ワクワク」できないことこそが、さまざまな問題の要因になっているのです。「自分がワクワクできる授業」を心がけていけば、やがて全てがゆっくりとプラスのサイクルで動きはじめます。

35年近く英語教師をしていても、今だにワクワクすることがある。「今日は、small talkどこまでwpmを伸ばしてくれるかな?」「retellingどんな風にまとめてくれるかな?」子どもの挑戦する姿を想像するだけで、ドキドキ、ワクワクする。

「綴り方」を学ぶ中で最も大切にすべきことは、相手の立場に立って考えること。

【書くことについて】 教師がすべきことは次のことです。できるだけ3分程度に絞って要点をまとめて話すようにすること、その間は生徒にペンを持たずに、集中して話を聴くこと、その後、教師はノートを取る時間を2分ほど与えることです。すると、生徒は板書を移すのではなく、理解したことを自分の言葉で一心不乱に書きはじめます。

これは私も同じことをしている。黒板で説明する時間を少しだけ取り、板書を4分程度で視写させて、その後、ペアに説明させる。すると、試写するだけでなく、説明できるように考えながら写すのである。

【普段から心がけることについて】 言語活動中、気になった間違い(エラー)をカルテ(座席表)に書き込んでいき、そのいくつか(欲張りすぎないこと)を言語活動の後で伝えて、練習の時間を取るのです。授業の振り返りの時に、「やりとりをしていた時に、言えなかったことを書きなさい」と指示することもできます。書かれた悩みや疑問は、次の時間に教師のアドバイス(言い換えること、ヒントなど)ともに一枚のプリントにまとめて配布してやります。

特に、small talkでは、自由会話なので、言いたいことはあるのに、言えないということが多く、「言いたかったけど言えなかったことは?」と聞いても、全てを拾い上げることは時間的に無理なので、書かせて後で回答、その場で英語の得意な生徒に聞く、などの工夫が必要。または、「言いたかったけど言えなかったノート・シート」を用意して、そこへ書かせて、自分なりの会話辞典を作らせることも必要。

retellingの後は、話した内容を落ち着いて整理する(書く)時間を取るようにします。retellingも即興の活動も、やりっぱなしにせず、終わった後に「整理する(自分の言葉で言語化する)」ことが鍵になります。

retellingの後は必ずノートに書かせ、教科書で答え合わせをさせるようにしている。