「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」を観て

トム・クルーズの“本気”に震えました──3時間があっという間だった至高のアクション体験

「気がついたら、もう終わっていた」──それが観終わった直後の率直な感想です。

上映時間は3時間。最初は少し身構えてしまいましたが、いざ始まってみると、時間の流れを全く感じさせないほど、物語に引き込まれていました。ストーリー展開はテンポが良く、常に緊張感があり、目を離す暇もないほどでした。

なかでも圧巻だったのは、やはりトム・クルーズのスタントシーンです。ご存じの方も多いと思いますが、彼はスタントマンを使わず、すべて自ら演じているとのこと。その“本気”が、画面越しにビシビシと伝わってきました。

特に、バイクで崖から飛び出してそのままパラシュートで降下するシーンでは、観ているこちらの足の裏がくすぐったくなるような、そんな感覚になりました。手に汗を握るどころではなく、息をするのも忘れてしまうほどの緊張感。まさに“覚悟”の演技でした。

ただ一つ残念だったのは、これまでのシリーズをあまり観てこなかったことです。回想シーンや仲間たちの登場に、何か“思い出”のような雰囲気を感じたのですが、自分には背景がよく分からず、少し置いていかれてしまった印象がありました。シリーズを追ってきた方にとっては、きっと感慨深いシーンだったのだろうと思います。

それでも、作品の完成度は非常に高く、過去作を知らなくても十分に楽しめました。そして、「これを機にシリーズを見返してみようかな」と思わせてくれるほど、強く印象に残る映画でした。

ちなみに、先週観た『国宝』も星4.5以上の作品で、2週連続で大満足の映画体験となりました。上映後、スクリーンを後にしたときの、あの満たされた気持ち。あらためて、「映画って本当にいいな」と感じる瞬間でした。

今週もまた、「観てよかった」と素直に思える時間を過ごせたことに、心から感謝しています。

「英語教育2025年6月号」を読んで

The English Teachers’ Magazine June 2025 Vol.74 No.3 大修館書店

第1特集 「言いたいのに言えない!」に応える 効果的な「言い換え」の指導 第2特集 先生への第一歩 教育実習生をみんなで支えよう

✍️ Circumlocutionとは会話の途中で表現が思い出せなくなった場合、別の言い方で言い表すことである。

英語教育 そもそも談話室 第27回 人前で自分の「推し」を語りたい生徒ばかりじゃない 奥住桂(埼玉大学准教授)

まずは教師が自己開示する 「推し」に限らず、英語の授業では生徒に(特に個人的な)何かを語らせるなら、いろんな配慮や工夫が必要だなあと感じています。例えば、何でもかんでもみんなの前で発表させないで、別室でALTに個別に伝えたり、ライティング活動にして匿名で読み合ったり、みたいな設定にするだけでも、だいぶ心持ちが変わりますよね。あるいは、語った先に何があるのかによっても、取り組み方は変わります。「推し活資金100万円をクラウドファンディングする」という設定なら、自分は100万円を何に使うかを語って聞き手(出資者)を説得するというタスク性が生まれるし、あくまで架空の話という割り切りで、ちょっと極端な面白い話を書く生徒も出てきそう。

児童生徒のやる気に火をつける エンゲージメントを促す授業実践 第3回 教師も子どもも「楽しめる」授業の工夫 藤原剛(神奈川県川崎市立白幡台小学校教諭)

“Jeopardy Labs” *(https://jeopardylabs.com/)という、クイズを集めたとても便利なサイトがあります。たくさんのテーマに沿ったクイズが投稿されており、自分でクイズを作成することも可能です。

児童が集中して意欲的にその活動に取り組むのは、「明確な到達点がある」「頑張った分の達成感が得られる」からです。

https://jeopardylabs.com

文法クイズ 第123回 佐藤誠司((有)佐藤教育研究所代表)

Shohei Ohtani is an excellent baseball player. This is the ball signed by him. 受動態の文を作る際に、(by+人称代名詞)を使うのは、NGと覚えておくと良い。

「カラフルな世界で」を指導して

「カラフルな世界で」〜自分らしく生きるということ〜

ファイナルイヤーという節目に、私はひとつの決意をしました。道徳の授業を公開すること。それは、市内の公開授業という形で行われ、校内の先生方はもちろん、初任の年にご指導いただいた大先輩まで、たくさんの方に見ていただける機会となりました。

どの教材を扱うか、自分では決めかねていたところ、道徳担当の先生が「カラフルな世界で」を提案してくれました。井出上漠さんの実話をもとにした教材で、生徒たちにも親しみやすく、まさに「自分らしく生きる」というテーマにぴったりの内容でした。内容項目は、A-(3)「向上心、個性の伸長」。自分の中にある“違い”をどう受け入れ、どう発信していくか。それは思春期まっただ中の生徒たちにとって、とても大切な問いです。

授業の冒頭、「自分らしく生きるって、どんな時?」と問いかけてみました。返ってきたのは、部活動で全力を出すこと、趣味を楽しむこと…どれも素直な答えでしたが、まだどこか“表面”をなぞっているようにも感じました。

次に、私は教科書の本文を、心を込めて朗読しました。漠さんの、心に秘めた葛藤と勇気が、静かに教室に流れていきます。生徒たちには「主人公で残念だと思うところ」「素敵だと思うところ」に線を引かせました。

今回、私はあえて、これまでの定番の授業構成を変えてみました。本文の“人間理解”の部分だけをじっくりと掘り下げ、「漠さんがお母さんに悩みを打ち明ける場面」に焦点をあてました。あの一言——「わたし、女の子として生きていきたい」——には、どれほどの勇気が詰まっていたことでしょう。その場面の挿絵が教科書にはなかったため、私はAIに依頼して、静かに寄り添う母と漠さんの姿を描いてもらいました。自分らしく生きるということの象徴的な場面です。(↓参照)

そして、授業は思いがけない方向へと深まっていきました。

「自己を見つめる」場面では、生徒たちが次々に自分の話をしてくれたのです。

「部活動で悩んだこと」「お母さんとの関係」——

どれも、それぞれの“カラフルな世界”がそこにありました。

授業の締めくくりに私が話をしようとしたその時、ある生徒が手を挙げました。

「どうしても、今言いたいことがあります」と。

彼はこう語り出しました。

「1・2年生のときの自分は、自分らしくなんて全然いられなかった。でも、3年生になって学級委員やリーダーをやらせてもらって、ようやく“自分らしく”生きていいんだって思えるようになったんです。そんな自分を信じてくれた先生方に、ありがとうを伝えたかった。」

その瞬間、教室は静まりかえり、空気が一段と澄み渡ったように感じました。涙をこらえるのが精一杯でした。

授業後、助言者としていらしていた河合先生から、こんなお言葉をいただきました。

「いい授業でした。ここまで生徒理解ができている先生は、なかなかいません。私はこれまで、三重県一の先生だと思っていたけれど、今日、岐阜県を含めても、あなたがいちばんの先生だと思いましたよ。」

それは身に余るほどの言葉でしたが、何よりも嬉しかったのは、生徒たちが「自分らしく生きること」について、本気で向き合ってくれたこと。そして、自分の経験や思いを、言葉にして誰かに伝えようとしてくれたことです。

「カラフルな世界で」——それは、他人と違っていてもいい、ありのままの自分を認め、そして誰かとつながる勇気をくれる物語でした。

私たちの教室もまた、同じようにカラフルで、そしてあたたかい世界であってほしい。

最初、こんな画像になったが、何度かAIとやり取りしているうちに、↓のような絵にしてくれました。たぶん、その時のことを考えると、こうなるのでは無いかと思い、その絵を使うことにしました。

どことなく、自分の少年時代みたいな顔になっていて、親近感を覚えました。

第3学年A組 道徳科学習指導案

日時  令和7年5月15日(木)

                          指導者 教諭 森 雅也

1.主題名「自分らしく生きる」(A-(3)向上心、個性の伸長)

2.ねらいと教材

(1)ねらい

自分の好きなことは自分の独自性であり、かけがえのない自分を伸ばすことで人生が輝いていくことの自覚をすることで、自分らしい充実した生き方を追求しようとする態度を育てる。

(2)教材

  教材「カラフルな世界で」:出典「あすを生きる」3年(日本文教出版)

(3)主題設定の理由

① 指導内容について

 人は、一人ひとりが他者とは異なる個性、独自性をもっている。これらには「性の在り方に対する認識」も含まれており、それは個々人の人格に密接に結び付いているものである。性に関わる事柄も含めかけがえのない自分を肯定的に捉えることで、お互いの個性や人格を尊重しながら、自分らしい充実した生き方が追求できるのである。

  ② 教材について

 主人公・井手上漠さんは、男女の区別が増える小学5年生の頃から、自分の好きなことを封印し、モノトーンの世界で生きることを選んだ。しかし、母はその悩みに気づき、話を聞き、「漠は漠のままでいいんだよ。」と受け入れてくれた。井手上さんの「自分らしく生きよう」という意思と選択、そして応援してくれる人の存在を押さえながら、生徒に自分自身のこれからの生き方について考えさせたい。

  ③ 生徒について

 中学3年生は、自分らしい生き方に悩みながらも、卒業後の進路を考えなければならない時期である。これまでの経験から、他者との関わりの中で自分らしさに気づけた生徒もいるだろう。多様性を理解し視野を広げ、尊重し合うことで、自分らしい生き方に対する考えをさらに深めさせたい。

 教材に関しては、多感な時期であるため、テーマによっては興味を持つきっかけが偏った受け止め方に繋がる可能性も考えられる。また、自身の性的指向について悩み始めている生徒もいることを踏まえ、保健体育の授業や、総合的な学習の時間に実施した助産師による講演などの内容とも連携しながら、適切な考え方や感じ方を育む指導に努めたい。

3.学習指導過程

 学習指導過程指導上の留意点
導入 2分あなたが、普段生活をしていて、「自分らしく」生きていると思えるのは、どんな場面だろう。 ・好きなことをやっているとき・親から勧められても、自分を貫いたとき・勉強しなければならないのに、ゲームやSNSをしているとき・親に反抗して自分の思い通りにできたとき○導入の場面で、生徒たちに共感させる。  
展開前段 14分           展開前段 9分                      展開前段 12分 1教師が範読する。「井出上漠さんの心の弱さが出ているところ、すてきだなと思うところを見つけて、あとで発表してください。」 2「カラフルな世界で」を読んだ感想を話し合う。〇心の弱さ  ・みんなと違っていたらダメなんだと思ったこと・髪を切って、女子と距離を置き、男子の集団と一緒にいたこと・自分らしさを押し殺し、好きでもない話題に乾いた笑いを浮かべていたこと・クラスの隅っこにいて、周りの目ばかり気にしていたこと・自分自身を否定していたこと 〇いいなと思うところ・お母さんの言葉を聞いて、自分を肯定できるようになったこと・自分のことを大切にしようと思えたこと・上を向いて、自分らしさを磨くようになり、楽しそうに生きられるようになったこと        3 井出上漠さんがモノトーンの世界に生きていたときの行動について考える。(人間理解)〇「漠さんは幼少期にウエディングドレスを見て感動したり、「かっこいい」より「かわいい」にときめく子どもだったのに、中学生になってもクラスの隅っこにいました。どんな気持ちでクラスの隅っこにいたのだろう。・本当の自分ではない。・まわりに合わせるのがつらい、・こんな自分なら、死にたい。・だれも自分のことをわかってくれない。      4 問題について考え議論する。(価値理解)〇そんなに悩んでいた漠さんが、お母さんの言葉がきっかけで、自分らしく生きられるようになったのはなぜだろう。」・ 自分が好きなことを大切にするようにしていたから。・ 幸せで自分らしくいられることをしていたから。・ 上を向いて自分らしさを磨くようになり、楽しそうに生き始めたから。○教材を範読する前に、読む視点を伝える。○自分の考えをもたせ、ペアで交流する。時間を決めてペアワークを3回行う。○時間をかけすぎないようにすること(4~5名程度の指名にする。)〇感想を生かして基本発問につなげたい。  〇「いいな」と思うところは、価値理解へとつなげていきたい              ○全体交流で多様な考え方を引き出した後、「あなたなら、どの気持ちが強いですか。」と問いかけ、それを聞いて、自分はどんな考えになっているかを確かにする。(少数の考えをとりあげて「この気持ちについてどう思う?」と問いかける。)○「あ、そうだった、そうだよね。」と言う人がいる、ことも気づかせる。 〇モノトーンについては、教師から説明する。 ○読み取りにならないように、全体交流の発言を板書で整理し、他の発言と比べて最初の自分の考えがどうかわったかを話すようにする。<考え、議論する>
   展開後段 9分 5 自分について振り返る(自己を見つめる)〇 あなたは、漠さんのように、自分らしく生きてきましたか。・ 周りのことを気にしていて、本当の自分をだせないでいた。自分をもっとださないと前にすすめない・ 自分の信じた道があるけれど、友達を意識しすぎて、なかなか自分のしたいことができなかった。もっと、自分を信じていろいろなことに挑戦したい。○話し合いをもとに、自分の意見をまとめ、発表させる。○個人でしっかりと見つめるために、時間を長めに設定する。〇これまでの自分の経験を振り返らせる。○「前はこう思っていたけど・・・。」「○○さんの意見を聞いて・・・。」「私の経験から・・・。」と価値観の変化を添える。
終末 4分〇自分の体験談について、話す。 ○「授業者の幼少から高校生まで、あまり自分らしく生きてこれなかった」ことを話す。○「自分の信じる道に着実に生きて、努力を惜しまないことが大切であること」ことを押さえる。

「国宝」を観て

🎬映画レビュー|『国宝』— 日本の伝統と魂が響き合う、圧巻の3時間

📅鑑賞日:2025年6月7日(土)@津南イオンシネマ

たぶん、この映画――『国宝』は、2025年の日本アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演男優賞を独占するのでは?とすら思える傑作でした。

私は土曜日の午後、津南のイオンシネマでこの作品を観たのですが、約3時間という邦画としては異例の長尺にもかかわらず、まったく時間を感じさせない没入感。これは、物語の深さもさることながら、演技、演出、美術、音楽すべてが高次元で融合していたからこそだと思います。

歌舞伎界を舞台に、血筋と芸の本質を問う壮大な人間ドラマ。
江戸の伝統を背負う名門に生まれた若き歌舞伎役者(吉沢亮)が、女形として芸の頂点を目指す中で、芸とは何か、伝統とは何か、血筋とは何かに苦悩しながら成長していく姿を描く。
彼の周囲にはライバル、師匠、支える裏方たちなど、名優たちが演じる登場人物が絡み合い、伝統芸能の世界の厳しさと美しさがリアルに映し出される。

🎭主演・吉沢亮の圧巻の演技

何よりも語らずにいられないのは、吉沢亮の女形としての演技のすばらしさです。

美しさだけでなく、その所作、踊り、目線、すべてに「芸に生きる覚悟」が宿っており、観ているこちらの心まで震えました。これが“血筋”によるものなのか、それとも稽古に裏打ちされた努力なのか。映画の大きなテーマでもあるその問いが、観ている私たちにも重く、深く響いてきます。

🏮伝統芸能の真髄に触れる

歌舞伎や能といった日本の伝統芸能は、普段なかなかじっくりと観る機会が少ないものですが、この作品を通じて、それらがただ受け継がれてきたものではなく、「芸に生きた人間の魂」によって築かれてきたということが伝わってきます。

幼少期からの厳しい稽古の積み重ねが、表現のすみずみにまで染み込んでいることがわかる。その姿に、敬意と感動しかありませんでした。

🔚まとめ:かなりのおすすめです!

伝統とは何か。血筋とは何か。芸の神髄とは何か。
この映画はそれらを、押しつけがましくなく、しかし確かな熱量で語りかけてきます。
日本映画史に残る名作になるのではないかと、私は本気で思っています。

映画館を出たあと、しばらく余韻から抜けられませんでした。
「国宝」――その名に恥じぬ、まさに“魂の芸”が詰まった一本です。

これは観るべき。いや、“観なければならない”映画です。

「保護者クレーム劇的解決『話術』を読んで」

📘『保護者クレーム 劇的解決「話術」』レビュー

――保護者対応は“技術”で乗り越えられる

保護者対応に悩む全ての教員にとって、本書は心強い一冊です。クレームに対して感情的に構えるのではなく、「対応の構え方」や「言葉の選び方」を変えるだけで、相手との関係性が劇的に変わるということを、具体的なエピソードや話術を通して教えてくれます。

🧠 クレーマーを「タイプ」で理解するという視点

本書のユニークな点は、保護者クレーマーを心理的特性によって分類し、それぞれに合った対応術を提示していることです。

たとえば、シゾイド型クレーマーは感情の表出が苦手で、対人関係に不器用なタイプ。悪意はなく、むしろ「今、自分が直面していること」に強く執着してしまう傾向があります。彼らの言動を過度に受け取るのではなく、「そういう気質の人だ」と理解し、冷静に向き合う姿勢が、教員側の精神的な余裕につながります。視覚的な資料を用いた説明や、「子どもたち」を主語にした対話によって、少しずつ安心感を持ってもらえるという実践的なアドバイスも印象的です。

一方、ナルシスティック型クレーマーは、自分の正しさを証明しようとし、周到に準備をして“勝つ”ことを目的に来校することがあります。教員が「その場対応」で挑んでしまうと、完全に後手に回ってしまい、立場が不利になることも。本書では、相手に「代替案」を出させ、それを解決の糸口とすることで、対立を和らげる方法も提案されています。

💬 劇的に効く「話術」の工夫

本書では、心理学のテクニックも巧みに取り入れています。たとえば――

  • ピークテクニック:会話の中に「ちょっと意外なこと」を差し込むことで、相手の集中を取り戻す技術。
  • ドア・イン・ザ・フェイス:まず大きな要求を提示し、それを断らせた後に本命の小さな要求を通すという交渉術。

これらの技術は一見ビジネス的ですが、実際には**「対話のリズム」を整える上で非常に有効**であり、教育現場に応用できることがよくわかります。

👪 共通のゴールは「子どものため」

本書の根幹にあるのは、「教員と保護者は対立する存在ではない」というメッセージです。
クレームが発生したとき、主語を「子どもたち」に置き換えるだけで、教員対保護者の構図を、共に子どもを支える同じチームとして再定義できる。このシンプルで力強いメッセージは、保護者対応に悩むすべての教員の背中を押してくれます。

✅ 最後に

「また来るかもしれない」と怯えるのではなく、「来たらまた対応すればいい」と構える。相手を“理解しよう”という余裕が、結果的に教員自身を守る盾になる――本書はそのことを、具体的な言葉とともに教えてくれます。理論と実践の両面から保護者対応を支えてくれる、まさに**“現場の教員必携の一冊”**です。

「相撲を世界に」を指導して

🟢導入の工夫と手応え

導入発問:「これまでに打ち込んできたことがあるか?」
→ 部活動など、自分の経験と重ねながら話す生徒が複数いた。
→ 自分ごととして物語に入っていくきっかけとしては成功。

🟠人間理解の発問(見直しの視点あり)

実施発問:「人生の節目で今さんはやめようと思ったのはなぜか?」
→ 反省点:「やめようと思った“理由”」よりも、
 **「その時どんな気持ちだったか?」**の方が本人の内面に迫れた。

→ 読み取り道徳的な流れになりやすいため、感情や心情に焦点を当てた問いにする必要がある。

🟠価値理解の発問(改善点あり)

実施発問:「やめようと思ったのに続けてこれたのはなぜか?」
→ 反省点:「理由」を問う形がやや説明的に。
 「続けようと思った時、どんな気持ちだったか?」
 → 続ける選択をした心の動きを考えさせた方が、価値の深まりにつながる。

🔵自己を見つめる発問(良好)

実施発問:「やめようと思っても、頑張ってやり抜いてきたことはあるか?」
→ 多くの生徒が活発に発言。部活、友人関係など、リアルな経験とつなげていた。
→ 生徒の感情が動いたことが伝わり、深い振り返りにつながった。

🟣まとめと次への意識

研究授業へ向けて、発問の質と順番の精査が必要。特に、「読み取り→感情→自己」と進む設計がカギ。

今回は、生徒が「自分の言葉」で語る場面が多く、価値の深まりが見られた。

一方で、「理由を聞く」問いが多く、説明型になりがち
 → 今後は「どんな気持ちだったか」「どんなことを感じたか」を問う発問へ意識的に切り替えること。

英語教育2025年5月号を読んで

月刊英語教育2025年5月号 大修館書店 May 2025 Vol.74 No.2

第1特集 〈論点整理〉紙とデジタル 学びの姿はどう変わるか 第2特集 大学入試英語の現在

📘『英語で溢れる教室をつくる 小学校授業 活動&教材アイデア』第2回(2025年4月号)

◆【やり取り力】を高める4つの工夫(岩井敏行先生)

  1. QAR(Question–Answer–Reaction)
     → 相手の答えに対して反応する例:「I see.」「Me, too.」
  2. TF-QA(True/False–Question–Answer)
     → 相手の話を自分に関係あるか確かめる:「You mean me?」など
  3. QAA(Question–Answer–Add)
     → 一言加えて会話を続ける:「I like cats. How about you?」
  4. QAQA(Question–Answer–Question–Answer)
     → 質問と答えの連鎖で、自然なやり取りを生む

🔍これらの活動は、中学生にも十分応用可能で、ペアワークやスピーキングテストの練習にも有効です。

📚紙とデジタルでの読みの違い(バトラー後藤裕子、柴田裕仁 各氏)

◆ 認知科学からの提言

  • 紙 vs デジタルに明確な差はないが、「手を使う読み」「比較読み」「書き込みを伴う読み」では紙が優位
  • デジタルは「視覚的には便利だが操作性に制約が多く、深い読みや学びには不利」。
  • デジタルでは、「りんごの絵を描く」といった課題で描き直しの誘惑や過集中が起きやすく、本来の目的から逸れる。

📌指導のヒント:

  • デジタルは「下書き」「確認」「共有」に活用し、本読み・深掘り・発表準備は紙で行うのが理想的。
  • デジタル使用時間は授業1時間中10分以内が望ましい(山田正明氏/医学的視点より)

🧠医学的視点からの注意(山田正明先生)

  • 多くの学生が「デジタルでは集中できない」「記憶に残りにくい」と回答。
  • デジタル学習では脳血流の増加が少なく、浅い学びになりやすい。
  • 北欧の例を挙げ、教科書のデジタル化が学力低下・教室の荒れに直結したと警鐘を鳴らす。

🧩中学校文法事項の導入例(第14回:SVOO)

◆ SVOO文型の指導ポイント

  • 「give him a book」vs「give a book to him」の違いを焦点で教える。
  • I will give him a book.
  • →「何をあげるか(=a book)」に焦点がある文。つまり、「あげるもの」に注目して話している。聞き手は“何をあげるのか”を知りたいときに適している。
  • I will give a book to him.
  • →「誰にあげるか(=to him)」に焦点がある文。つまり、「相手」に注目している。他の人ではなく“彼に”あげるということをはっきり伝えたいときに使う。
  • 動詞の意味に応じて、toかforを使い分ける。
    • Aグループ(give, send, tell など):to
    • Bグループ(make, buy, cook など):for

📌暗記より、意味理解とタイプ分けでの指導が効果的!

✏ 文法クイズ(佐藤誠司)

  • 料理名は 小文字で始める(例:sushi, curry)

「ライオンのおやつ」を読んで

「ライオンのおやつ」小川糸 ポプラ出版 2022年10月5日第1刷 

感動、感動、感動。残り70ページで涙が止まらなくなり、電車で読んでいたら隣のおじさんにチラチラ見られてしまった。ラスト30ページでは完全に涙腺が崩壊。もう嗚咽してしまうほどだった。こんなに泣ける本は本当に珍しいし、これほどの感動をくれた小川糸さんに心から感謝したい。

若くして余命宣告を受けた33歳の雫(しずく)は、ホスピス「ライオンの家」で最期の日々を過ごすことを決める。そこでは、毎週日曜日に「おやつの時間」があり、入居者が“人生で一番食べたいおやつ”をリクエストできるという特別な風習があった。やさしい看護師たち、美味しい料理、美しい自然、そして何より心にしみるおやつ。人の死に寄り添いながらも、人生の豊かさと命の尊さを静かに、でも確かに描き出していく——。生と死、喪失と再生、そして小さな奇跡を描く感動作品。

ただ泣けるだけの話ではなく、「死ぬこと」を見つめながら「生きること」の意味を深く考えさせてくれる一冊です。心がやさしく温かくなる読書体験でした。ぜひ多くの人に読んでほしい、かなりのおすすめです。

「トッド人類史入門」西洋の没落を読んで

「トッド人類史入門」西洋の没落 エマニュエル・トッド 文春新書 2023年3月20日第1版

やや難しい本だった。那覇市の「たつや旅館」で一緒にゆんたくした時の知り合いに教わった本。世界の構図を“家族のあり方”という切り口から読み解く、視点がとてもユニークで面白かった。

歴史学者・人類学者であり人口学の専門家でもあるエマニュエル・トッドが、人類史と現代世界の構造を大胆に読み解いた入門書。彼は、政治体制や経済体制を生み出す土台として「家族構造」の違いに着目し、世界各地の家族モデル(平等主義的、絶対主義的、直系家族など)がイデオロギーや国家のかたち、さらには西洋文明の限界にまで影響していると説く。とくに西洋の没落や、ロシア・中国・イスラム世界の台頭を「家族のかたち」から読み解く手法は新鮮かつ示唆に富んでおり、「近代の次」にくる社会像を考えるヒントが詰まっている。

「家族という最も身近な存在から、世界の大きな動きを説明できる」という視点にハッとさせられます。時に難解な部分もありますが、じっくり読み解くと見えてくる世界像が面白く、読後の思考の余韻が長く残る一冊です。おすすめです。

英語教育2025年4月号を読んで

英語教育2025年4月号 大修館書店 April 2025 Vol.74 No.1

第1特集 新年度に見直したい英語語彙指導 第2特集 これからの学びの風景シリーズ① 学びを学習者に委ねる個別最適な学び・自己調整学習を通じて

🔹語彙指導のポイント(笠原 究 先生)

  • 分散学習を意識した語彙指導が効果的。
    • 初回授業で「日本語訳付きの語彙リスト」を配布し、発音・意味を指導。
    • 以後の授業で、短時間でもよいのでリストを使った復習活動を継続的に実施。
    • → 繰り返し触れることで定着を促す。

🔹自己調整学習(財部 裕一郎 先生)

  • 自己調整学習とは:
    • 自ら目標を立て、戦略を立てて学習を進めること。
    • 例:OREO構造(Opinion, Reason, Example, Opinion)を活用した意見文指導。
  • 教師が目的を明確に伝え、生徒自身が達成手段を選べるよう支援。

🔹学びの主語を「教師」から「子ども」に(井上 卓也 先生)

  • 子ども中心の学びへ転換する実践:
    • 自分のペースで学習を進める児童を肯定的に取り上げ、クラスに紹介。
    • 写真や実例を用いて「中間共有」し、学級全体の学びへつなげる。
  • キーワード:
    • 教科の指導と生徒指導の一体化
      • 自己存在感、共感的関係、自己決定、安全な学級風土
    • 学びの【こころ】を見取り、価値づけていく視点が重要。

🔹エンゲージメントを促す授業実践

  • エンゲージメントとは?
    • 生徒が「熱中」「集中」「夢中」になる状態。
    • 種類:行動的・認知的・感情的・社会的エンゲージメント。
  • 導入の工夫:Authentic Material(真正教材)の活用
    • 例:対人地雷と同じ大きさ・形のレプリカを用いて「自分ごと化」。
  • エンゲージメントの3要素
    • 物理的魅力(感情を刺激)
    • 活動的魅力(インタラクティブ性)
    • 内容的魅力(個人的関心)
  • 支援(Scaffolding)としての英文リライト
    • 負荷を最適化することで、認知的エンゲージメントを維持。
    • 生成AIも効果的に活用。

🔹文法指導の留意点(大内 由香里 先生)

所有代名詞の文法的性質と機能を明確に教える必要がある。

例:「mine」は**一人称ではなく、三人称では?**という誤解。