「パラサイト 半地下の家族」を観て、「匂い」について考えてみた

 「パラサイト 半地下の家族」を観た。アカデミー賞受賞すぐ後だったので、イオンシネマはいっぱいだった。同僚の薦めもあり、かなり期待して行ったが、期待どおりおもしろかった。しかし、いろんなことがフラッシュバックしてきて、しばらく心が苦しく、ふさぎ込んでしまった。

 韓国のかなり傾斜のある坂道に建てられた家。下り坂に建てられているので、窓からの景色は坂道の道路より下にある。酔っ払いが小便をかけるような近辺の環境。その家に住む父母、主人公(男性)と妹。貧しく、その日暮らしの生活をしていたが、主人公は友人から富豪の女子高生の家庭教師を紹介してもらうと、状況は一変する。家族全員が富豪の家に家族とは明かさずに仕事にありつき寄生することになる。

 ネタバレになるので、これ以上は書かないが、

 「匂い」が隠れたテーマになっているように感じた。匂いはそれまでにあったことを即座に思い出させてくれる。「ん?冬の匂いがする。」と感じられる寒い日もあるし、「この匂いはあの人だ。」と人を思い浮かべる時もある。生ゴミの匂いを嗅ぐと、プーケットの朝の路上の風景を思い出す。香水の匂いを嗅ぐと、アメリカの空港を思い出す。

 半地下に暮らす人たちには、半地下の匂いが染みついている。生活の臭いなのか、不衛生がゆえについた匂いなのか。この家族はその匂いから逃れようとするが、染み付いた匂いだけでなく、彼らの暮らしからも逃れることはできない。

 半地下に戻ってしまった母と主人公。半地下ではなく、全地下へ行ってしまった父親。亡くなってしまった妹だけが天上へ行き、地下から逃れられたのかもしれない。

江戸川乱歩の「人間椅子」や「屋根裏の散歩者」を思い出す。