「英語教育10月号」を読んで

第1特集 「自律して学ぶ力を育てる 課題の出し方・活かし方」

「自律的に学ぶ力を育てる課題とは?ー第二言語習得の視点から」新田了 立教大学教授の記事からは、タスクが定義づけられていた。我々はよく「課題」と言ったり、同義で「タスク」と言ったりすることがある。

本来、タスクとは、「達成すべき目的を持ち(purposeful)、意味を中心とした(meaningful)言語活動と定義されるまずは伝えたいメッセージを持つことが重要で、英語はそれを表現するための手段である。つまり、設定された目的を達成するために、生徒は思考し、クラスメイトと協力し、教師の助けを借りながら、様々な活動に取り組む。そのプロセルから付随的に英語力が発達する。」としている。ただゲームをすることをタスクと称して要る教員もいるので混同しては行けない。

さらに、自律的学習を促す原則として、4つの原則を挙げている。①生徒の伝えたいメッセージからスタートする。②外の世界につながる要素を含む。③個人作業と共同作業を組み合わせる。④内省的な活動を取り入れる。小学校で教えていてもよく思うことだが、「児童生徒が言いたいやりたい伝えたい」という気持ちを持たせるような教材を提示することが大切である。

また、④においては、振り返る力をつけさせることがとても大切であると筆者は語っている。「『自分のものさし』は一度見つけたら終わりではなく、自分の成長と環境の変化に合わせて改良し続けていく必要があるから。常に振り返ることで、自分の物差しを洗練させ、調整していくのだ。」と言っている。

新学習指導要領では、「主体的に学ぶ態度等」の評価のおいて、振り返る姿勢が大変強調されることになる。指導と評価が一体となるよう工夫する必要がある。

「浅田家」を観て

 楽しみにしていた「浅田家」を観てきた。普段、特別支援教育やキミヤーズを一緒に勉強している先輩が、エキストラで出演しているらしかった。主人公の写真家 浅田政志さんは、津市出身。育生小学校の卒業生と言うことは、私や私の連れ合いの後輩である。高田本山や津新町駅がロケ地として使われており、不思議な感覚だった。ストーリーは以下の通り(映画.comより)。

 様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で注目を集めた写真家・浅田政志の実話をもとに、二宮和也と妻夫木聡の共演、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督のメガホンで描いた人間ドラマ。4人家族の次男坊として育ち写真家になった主人公・政志を二宮、やんちゃな弟をあたたかく見守る兄・幸宏を妻夫木が演じ、家族の“愛の絆”や“過去と今”をオリジナル要素を加えつつ描き出す。浅田家の次男・政志は、父の影響で幼い頃から写真に興味を持ち、やがて写真専門学校に進学。卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを再現した写真で学校長賞を受賞する。卒業後しばらくはくすぶっていたものの、再び写真と向き合うことを決意した政志が被写体に選んだのは、やはり家族だった。様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催し、写真集も出版され、権威ある賞も受賞する。プロの写真家として歩み始めた政志は、全国の家族写真の撮影を引き受けるようになる。しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生。かつて撮影した東北に住む家族のことが心配になった政志は被災地に足を運ぶが、そこで家や家族を失った人々の姿を目の当たりにする。

2020年製作/127分/G/日本
配給:東宝

 家族の大切さ、人の命の尊さ、写真を通じて人と関わっていくことがどんどん人と人をつなげていくことになる。

 東日本大震災の被災地で、浅田さんは、震災で行方不明になった写真を集め、人に返却するボランティアをする。泥を落としてきれいにしてから、板に貼り付け、展示することで、避難してきた人たちが見やすいようにしていた。8万枚の写真のうち6万枚を返却することができたようだ。

 私も、2011年4月、5月、2012年3月と3回にわたって、被災地にボランティアに行った。壮絶な環境の中で、一生懸命生き続けている人たちと触れ合うことで、たくさんの元気や勇気ややる気をもらうことができた。被災地で働いて、たくさんのありがとうをもらったが、ありがとうと言いたいのはこちらの方だった。

 たくさん経験をすることはいいことだなとしみじみ感じた。人との触れ合いが増えていくし、人との関わりから人脈が増えていく。

 何度も涙したシーンがあった。大泣きするところは無いが、ぽろっと涙が溢れるところはいくつもある。

 かなりオススメである。津市出身者や在勤者、居住者は見るべき。

「一人称単数」を読んで

「一人称単数」村上春樹(文藝春秋)

 「猫を捨てる」という短編集を読んでから、半年くらいで出版されたので、他の作品を読み返さなくても、村上春樹に餓えなくてもいいから、気持ちが楽だ。

 村上春樹を読む時はいつもそうだが、終わってしまうのがもったいないので、読みたくても自分でリミットを決めて、そこまでしか読まないようにしている。なんなら、別の本も並行して読み、続けて読みたい欲求をその別の本にぶつけていることもある。

 つまらない本は、「まだ50ページか!?」とため息まじりにページ数をたぐることも多いが、村上春樹の場合は、「あと100ページもある!!」と喜んだり、「あと50ページしかない!!」と嘆いたりすることもあるくらい、終わりを待ち望まない自分が居る。

 今回も短編集である。8篇の作品が収蔵されている。

 ご自身が経験されたような話や実際に聞いた話、どれも引き付けられるようなことが多い。女性についての話が多く、どれも面白かった。

 俳句をしているバイト先で一緒になった女性、ピアノ教室で一緒に連弾をしたことのある女性、醜い女性、恥を知りなさいと罵る女性

 不思議に自分の若い頃のことをたくさん思い出す。フラッシュバックしてくる。この物語の世界に入り込んでしまっている。しかし、主人公になるのではなく、物語の展開とともに歩いている主人公とは別人の自分が歩いている。しかも、自分の思い出を抱えながら、ストーリーと同一歩調で歩いている。フラッシュバックしている出来事が決してストーリーを凌駕することなく、自分がストーリーに入り込んでいくので、不思議な気持ちになる。

 これは村上春樹の小説を読むときにいつも自分が味わう経験である。それが村上春樹が好きである理由なのかもしれない。

 猿の話、スワローズの話、

 私が大好きなお酒もたくさん出てくるし、クラシックも好きなのだが、ちょくちょく話に出てくる。猿は「ブル7」が好きらしい。私もブルックナーの交響曲第7番は好きだ。

 全ての短編は「文學界」という雑誌で書かれたものが収録されているのだが、最後の「一人称単数」だけが書き下ろしであった。

 「一人称単数」はとても変わった話である。ストーリーはおいとくとして、その話の主人公の中年男性(多分村上春樹であると思われるが)は、滅多に着ない高級スーツを着てバーで読書をしているときに、バーカウンターの奥にある鏡に写し出された、ここにいる鏡に写っているのはだれなのかという疑問に襲われる。「人生を生きてきて、分かれ道がいっぱいあった。右にも左にも行けた。自分でどちらに行くか選択したわけだが、どっちにも行けた。どちらでもよかった。時には、向こうから私を選択したこともあった。いろいろあったが、今私はここにいる。いったい私は誰なのだろう。」とこんな趣旨の語りがある。

 私もわからなくなることがある。パイロットになるか先生になるかで悩んだことがある。先生になっていなかったら今の幸せな生活は存在しない。いろいろな道が複雑に入り混じっている。過去を肯定すると現在は存在しなくなってしまう。たくさんの枝のあるあみだくじを複雑に行ったりきたりしながら、当たりにたどり着いたようなもの。今いる自分は試行錯誤の連続で生まれた産物で、きっと将来の自分もたくさんの選択肢から自分の意思や強制力が働いて選ばれて出来上がった自分になるのだろうと思う。ただ、加齢とともに選択肢の本数は年々減っていくことだろうが。

 おもしろかった。やはり、村上春樹である。

 

「英語教師のための実践研究ガイドブック」を読んで

「英語教師のための実践研究ガイドブック」田中武夫、髙木亜希子、藤田卓郎、滝沢雄一、酒井英樹 編著 大修館書店

 理論研究は、大学院の修士課程の時にやったが、根気と時間がないとなかなかできない。しかし、「実践研究」であれば、普段の授業を研究の材料にでき、さらに授業改革や自分の授業の研究、教えている子どもたちの状態や学習環境などを深く知ることができる。実践研究のやり方を勉強して、やってみようかと思う。できれば学会で発表できればいいなと思っている。

 まず、実践研究とは、「教師の教育実践の質的な向上を図るために行われる体系的な研究の1つである。具体的には、教師自身が日々行っている実践の現状を理解したり、実践上抱えている課題を改善したりするために行われる研究」である。

 目的は、実践の現状を理解し、その現状での課題を改善するために行われる。

 実践研究が成立するための3要素は、「問い」、「データ」、「分析・解釈」である。

 「問い」とは、日々の実践の中から立ち上がった教師の問いに対し、教師自身が答えを探求する試みである。2つに分けられ、担当しているクラスで、ある指導をしたら何が起きるのか見ようとする「課題解決型」と、授業が行われている教室の中で何が起きているのかを理解しようとする「理解型」がある。

 「データ」では、テストや質問し、生徒のワークシート、振り返りのコメント、教師の日記、メモまで使われることがある。

 「分析・解釈」では、収集したデータを先に立てた問いに答えるために見やすく整理し、収集したデータの意味について分析したり解釈したりすることである。

 実践研究のステップとしては、① 問いを立てる(問を明確にする)、② データを集める(データのタイプを知る、データを収集・整理する)、③ データを分析・解釈する(データの分析をする、データの解釈をする)、④ 研究を共有・公開する(研究を総括して発表する)

 「問い」について、「理解型」の問いとは、目の前にあるクラスの中で何が起きているのかを見る問いである。つまり、実践上における教師や生徒の現状について理解するための問いである。「課題実践型」の問いは、今教えているクラスで、あることを試してみたら何が起きるかを見る問いである。つまり、実践上の指導の効果を確認するための問いである。

 「よい問い」を見つけるためには、①「重要性」(実践の理解や今後の実践の改善に大きく貢献するか?)、②「明確性」(何を問うているかがわかりやすいか?)、③「可能性」問いに対する答えを出せる可能性があるか。

 「重要性」とは、教師が行っている実践に対して、特に重要と思われていることを「問い」にしているかどうか。「大きな声を出させる指導」→「目的意識・相手意識を持って考えることや意見を伝え合うこと」

 授業を見る4つの視点、①目標の設定、②生徒の把握、③教材の解釈、④方法の考案

 「データ」について、「教師が英語で授業をすると、生徒の認識や表現内容はどのように変わるか」という問いに答えるためには、「生徒の認識」(「振り返りシート」の分析・解釈から)、「生徒の表現内容」(「授業中のスピーキング活動のビデオ録画)から得る。ここから、次のような解釈が導き出せる。①教師が英語受容を行うことで、生徒の英語に対する苦手意識が軽減した。②発話の量には影響は見られなかったが、教師の問いかけに対して応答しようとする生徒の数が増えた。

 授業観察メモ、授業日誌については、授業の中で起こった出来事、その出来事が起こったときの児童・生徒の様子や発言、その出来事に対する観察者の感想や気づきについて記述することが大切である。

 授業日誌を書く際には、授業中の出来事や様子などの事実と、教師の感想や気づきなどの解釈を分けて記録する方がよい。事実を正確に記録すると、後で実践を共有する際に役立つ。

 授業日誌やアンケート(質問紙)、インタビューのような質的調査の場合、質的分析を行う。それは、「個人の特徴やその変容をとらえるために、集めた文字データや音声・動画、データなどをカテゴリーに分類すること」である。まず、データをしっかり読み込み、データ全体から得られる理解や気づき、印象をつかむこと。次に、データから必要な箇所を抜き出す。さらに、気づきや考えをメモする、要約する。その際に、コードを付与すると、データの内容を端的に把握しやすい。コーディングとは、文書データを読み込む中で、気になる箇所や繰り返し現れる現象、表現について要約し、それらを的確に表す見出しをつけること、コーディングをすることで、データについて端的にまとめたり、深く考えたりするのに役立つ。最後に、要約されたデータを整理すること。コーディングされたデータの傾向を数量化してまとめる。そして、コードの関係性を踏まえて、カテゴリーを作成する。

 まずは、問いを立ててみよう。そして、振り返りカードから生徒の声を収集し、自分の授業メモもしっかりとることにする。自分の授業改善や生徒の英語力向上に役立ちそうだ。

“Tenet”を観て

ストーリーは以下の通り。映画.comより引用。

ダークナイト」3部作や「インセプション」「インターステラー」など数々の話題作を送り出してきた鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した「ブラック・クランズマン」で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントン。共演はロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、アーロン・テイラー=ジョンソンのほか、「ダンケルク」に続いてノーラン作品に参加となったケネス・ブラナー、そしてノーラン作品に欠かせないマイケル・ケインら。撮影のホイテ・バン・ホイテマ、美術のネイサン・クローリーなど、スタッフも過去にノーラン作品に参加してきた実力派が集い、音楽は「ブラックパンサー」でアカデミー賞を受賞したルドウィグ・ゴランソンがノーラン作品に初参加。

2020年製作/150分/G/アメリカ
原題:Tenet
配給:ワーナー・ブラザース映画

公開してまだ間がないが、評価は3.7(2020年9月24日現在)。

かなりの期待作であり話題作である。この監督は、クリストファー・ノーランスの作品はいくつか観ている。「インターステラー」はかなり面白く、映画を観終わった後もその余韻にずっと浸っていたくらいだった。

私が歳をとったせいなのか、好みの問題なのか、わからないが、この映画には面白さを感じなかった。若者には、または、このような複雑でカーアクションや動きの多い映画が好きな人には受ける作品なのだろうか。

ストーリーが複雑で、画面が動きすぎるので、乗り物酔いみたいに気分が悪くなる。

過去に行き来できるホイール(ぐるっと回る回転式のエレベーター)がある。その設定では、過去に行くと全てが逆に動く。空気も肺には入らないので、携帯式の吸入器が必要である。

その過去に現代人が入ると、現代の人の動きは巡行で過去の人の動きは逆行、過去の人が現代に入ると、過去の人の動きは巡行で現代の人の動きは逆行になる。カーアクションも多く、気分が悪くなる。

しっかり予習して、2回以上観る気持ちがあれば、私のように中年で反応の鈍い人でも大丈夫だと思います。

あまりお勧めできないです。ごめんなさい。

「事故物件 恐い間取り」を観て

ストーリーは以下の通り。映画.comより引用。

事故物件住みます芸人」として、実際に9軒の事故物件に住んだ芸人・松原タニシの実体験を記したノンフィクション「事故物件怪談 恐い間取り」を亀梨和也主演で映画化。監督は、「スマホを落としただけなのに」「貞子」の中田秀夫が務めた。売れない芸人・山野ヤマメは「テレビに出してやるから事故物件に住んでみろ」と先輩から無茶ぶりされ、テレビ出演と家賃の安さから殺人事件が起きた物件に引っ越す。その部屋は一見普通の部屋だったが、部屋を撮影した映像には謎の白いものが映り込み、音声が乱れるなどといった現象が起こった。ヤマメの出演した番組は盛り上がり、ヤマメは新たなネタを求めて事故物件を転々とする。住む部屋、住む部屋でさまざまな怪奇現象に遭遇したヤマメは「事故物件住みます芸人」として大ブレークするが……。

2020年製作/111分/G/日本
配給:松竹

怖かったが、夜寝るときに頭から離れずに困る、というほどでは無いし、驚かされるシーンも数少なく、グロくもなく、「シャイニング」のように精神がやられるようなこともない。ちょいちょい、友情出演で芸人や有名芸能人が顔を出している。主人公は亀梨和也に似ているなあと思っていたら、その本人だったことが最後にやっと分かった。

ストーリー的には大変面白く、松村タニシさんという芸人の実話である。この映画では、事故物件に住んで4軒目までの話だが、ご本人は現在10軒目の事故物件に住んでいるとのこと。

モンスターとの対決のようなラストシーンだったので、そこは実話とはかけ離れている気がした。

私のようなホラー好きには、怖さがあまり感じられない映画であった。

中日新聞に取材されました

https://www.chunichi.co.jp/article/118342

ずいぶん前に取材を受けたので、新聞に掲載された頃にはもう忘れてしまっていたほどであった。

私は2018年度から敬和小学校の小学校6年生に(2019年度は小学校5年生と6年生)英語を教えに行っている。小学校文化を大切にしながら英語を小学生に嫌いならないように伝えるにはどうしたらよいか試行錯誤の連続である。一つ嬉しいのは、自分が育てた子どもたちが中学校へ上がってくるのである。小学校に感じていた英語教育へのジレンマは皆無である。「もっと小学校ではこんなことをしてほしい」ということがもしあれば、それは小学生に伝えきれなかった私自身の責任である。

私にはもう一つの大きな責務があり、それは小学校教員に英語の授業の仕方を伝授するというものである。現在、一緒にTTをしている先生は、非常に熱心で、日本人学校勤務経験者でもあるので、すでに授業の進め方を会得されている。小学校教員としてはベテランで、多分英語以外の教科は素晴らしい実践をお持ちであると推察する。私のやり方をご覧になって、すぐに取り入れられるところは取り入れ、実践されている。辿々しくても、ALL ENGLISHですることが価値があるということをすぐに理解されて、一生懸命英語を使って授業を展開している。そんな姿をぜひ他の小学校教員にも示していただきたいという気持ちでいっぱいだ。

これからも自分ができることとして、頑張ってやっていきたい。

第42回森会を終えて

2020年9月12日(土)に森会が中川地域交流センターで行われた。私を含めて5人の英語教員が集った。今回は、「指導と評価の一体化に関する参考資料」を今度こそは読み込んでいこうということで進められた。それぞれが参考資料の後半部分の割り当てが決められて、20分ほど個人で黙読、その後1人ずつ分担箇所を説明した。理解できないと嘆く場面もあったが、私がその都度解説をしながら、先へ進めて行った。

やはり、「主体的に学習に取り組む態度他」という3つ目の評価の観点で詰まることが多い。それはある意味当然で、今回から加わる観点である。今後10年間使用されるであろう観点であるが、前回そうであったように今後10年間で意味づけがどう変わるかわからない。移行措置期間である現在は、「粘り強さ」と「自己調整力」を図る観点であると言われているが、それも今後どうなるかわからない。今回勉強していて、思いついたこととしては、現在使用している振り返りカードの改定である。自由記述の体裁になっているが、子どもたちがあまりにも、「何を書いたらよいのかわからない」と言っているので、①めあてに対する振り返り、②本時でできるようになったこと、③わかったこととわからなかったこと、④本時で学んだことを次回にやってみようと思うこと、⑤発見した友達の素晴らしい部分、を書くように指導したところ、振り返りカードの書き方が変わった。「参考資料」には、その5つの項目を振り返りカードにあらかじめ記入しておいて、チェックボックス☑︎を用意し、✔︎を入れさせた項目について記入させるようにするとよいと書かれている。なるほど。すると、振り返る内容について焦点化でき、まとまった内容を記入することができる。

いずれにしろ、来年の4月に施行されるまでに準備が必要だ。まず、CAN-DOリストの見直しが必要だ。指導要領が変わる、教科書が変わる、子どもたちも変わる、発達段階も変わる、学校のCAN-DOを見直さなければならない。次に、学年の達成目標を適切に定めて、評価計画を入れながら学年計画を立てる必要がある。さらに、3観点と5領域のクロス評価を立てる必要がある。

まさに、すべきことが山積しているが、そのことに気づかせてくれた森会に感謝している。

英語教育9月号を読んで

9月号はの特集は、「小学校英語指導のキホン」と「プリント課題の活用術」。

アレン玉井光江先生(青山学院大学教授)の「今、あらためて問う小学校外国語教育の意義と目的」では、日本を含むOECD加盟国は、2030年に社会に飛び出す若者にはどのような力が必要で、またどのような教育を提供すべきなのかについて、Education 2030というプロジェクトを発足させていて、その中には、「逆境を跳ね返す力(resilience)」という力がある。嫌なことがあったり、壁があると、立ち向かわずすぐに諦めてしまったり、初めからやろうとしなかったりする子どもたちが多く見受けられる中、resilienceは必要なスキルになってくると思った。また、アレン先生は、「『外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方』を育成するために、外国語だけではなくその背景にある文化を理解することの重要性が指摘されています。様々な人々と出会い、共生していくためには、その人たちの文化を尊重し、『敬い』、そして『共感』することが必要です。」と語っている。多文化共生を目指すには、お互いを認め合い、少しだけ我慢して生活していくことは、外国籍の生徒が50%近くいる勤務校でも常に目にしている風景である。そして、「言語には、他の人と考えや想いを伝え合うという伝達機能だけではなく、思考を形成・進化させる思考機能があります。私たちは物事を理解し、問題を解決していくために言葉を使います。」と述べている。英語を学ぶということはコミュニケーションする手段を学ぶだけではなく、思考を深めるためにも必要なのである。

西原美幸先生(広島大学附属小学校主幹教諭)の「小学校で検定教科書を活用して深い学びを達成する授業への実践」では、「児童の思いに寄り添い『聞いてみたい』『伝えたい』という意欲が高まるような相手意識・目的意識のある場面設定や必然性のある活動を大切にすることである。」と述べている。そのために、①ストーリーの重要性を意識する ②これまでの学習と関連づける→気づきを促す発問を通して教師と子供がインタラクションする環境を作ることである。 ③他教科等での学習内容との関連を見出す→朝食メニューを考えて英語で子ども同士で交流させた。「朝食名人になろう」子どもたちが「やりたい」という気持ち、「伝えたい」という気持ちを醸成するような教材づくりを目指したい。(※日本人が英語を習得するために必要な学習時間の目安は2200時間)

山中隆行先生(琉球大学教育学部附属小学校教諭)の「小学校英語 教材づくりのイロハ」によると、今回の学習指導要領の改訂により、「英語科では言語活動が再定義され、『実際に英語を用いて互いの考えや気持ちを伝え合う活動』となった。山中先生によると、教材づくりのイロハは、「イ」→Easy to Learn(学びやすいかどうか)、「ロ」→Real to Learn(教材がよりほのの(実物)に近い物から学ぶ【オーセンティック】)、「ハ」→Heart to Learn(互いの考えや気持ちの伝え合いに繋がる教材【動画教材がオススメ】)であるという。

上原明子先生(都留文科大学教授)の「子どもたちが生き生きとするTeacher Talkの進め方」では、Small Talkについて述べられている。「Small Talkとは、『2時間に1回程度、帯活動で、あるテーマのもと、指導者のまとまった話を聞いたり、ペアで自分の考えや気持ちを伝えあったりすること』。そのねらいとして、①既習表現を繰り返し使用できるようにしてその定着を図る、②対話を続けるための基本的な表現の定着を図る、の2点である。

中西浩一先生(平安女学院大学准教授)の「小学校英語の指導と評価の一体化について」によると、評価には「育てる評価」と「記録に残す評価」があるという。指導(「育てる評価」)が継続的に行われて初めて「記録に残す評価」があるということが「指導と評価の一体化」ではないかという。

内田浩樹先生(国際教養大学教授)の「バランスの良い指導のために」の第6回「ランゲージとミーニングフォーカスのバランス」では、「読んだり聞いたりするときにその単語に出会った場合には、理解はできるけれど、自分が話したり書いたりするときにはすぐに思いつかないという段階です。この段階にある語彙をReceptive Vocabulary(RV)と呼びます。一方、自分が話したり書いたりするときにも自然に使えるようになった単語をProductive Vocabulary(PV)と呼びます。何回目にしてもRVとPVを覚えられないので、自分のメモのために。また、「同一の単語に繰り返し触れる機会が必要だということです。豊富なインプットを与えることこそが、MF(Meaning-Focused Language)の役割と言えます。LF(Language-Focused Meaning)で出会った単語がまず、RVとなります。教師のトークを聞く中でそれらの語彙に繰り返し出会うことを通して、次第にPVへと移行していきます。」

西森マリーさんの「今月の時事英語」のcancel cultureでは、PCのことについて。PC(Political Correctness:政治的に正しくあること=性別や人権などの差別をしないことビジネス英語を聞いていても何度も出てくる言葉である。

萩原一郎先生(都留文科大学特任教授)と久保野りえ先生(都留文科大学非常勤講師)の「授業作りの基礎基本」の「教科書本文を理解させる」では、「開本してからの黙読と補足解説は必須」、「『それって、つまりどういうこと?』と説明させるなどが必要」、「自分らしい言葉でパラフレーズできないか考えてもらいたい」、「教科書に書かれているfactを聞きますが、次第に、inferential question(推論発問)を入れていくと、とても面白いです」、「ところで、inferential questionとは、生徒の自由な感想を聞くようなopen endの質問とは違うのですか?」、「行間を読み取る”read between the lines”的な読み方と言ったらよいでそうか。直接は書かれていないけれど、教科書本文のアル部分から推測できるような質問です」、「graphic organizerですね。本文内容を視覚的に整理してあるものに空所があり、そこに適切な語を補わせる、というものです」

本名信行先生(青山学院大学名誉教授)の「多文化共生時代に学ぶ英語」の第6回「英語は自分のことをいう言葉」では、「公共施設の案内放送や、企業や各種団体のプロモーションビデオのナレーションも日本人ではなく、ネイティブが音声を担っている場合が多いようです。日本人にその能力がないからではなく、英語は外国語というイメージにとらわれているからでしょう。私たちは早く、こういった自己規制から自由になりたいものです。英語は『国際言語』なのだから、私たちは英語をもっと多方面で使い、自分たちの活動を世界の人々にどんどん伝えていく努力をすべきでしょう。日本人の知恵や判断位は、世界の人々の役に立つことがたくさんあるはずです。そのためには、発信型の英語学習が必要になります。」、「各国の英語教育では、自分の気持ちや考え、自国の価値体系と行動規範を英語で言えるようにする訓練が重要になります」、「英語は使わなければ使えるようにならないと伝えましょう」、「私たち英語教師は日本人が英語を話すときの重圧感を生み出しているのです。生徒の文法ミスを容赦なく挙げ連ね、彼らの自由な表現を制限してしまっています。教師は生徒が英語でコミュニケートしたという事実を評価してあげれば、そのような重圧感は軽減できるでしょう。その第一歩は教師が英語間を変えることなのです

鈴木祐一先生(神奈川大学准教授)、真家崚(ミシガン州立大学大学院博士課程)、菅清隆(ミシガン州立大学大学院博士課程)によると、Story-Retelling(SR)について書かれている。SRを効果的に行う上で重要な点としては、数回行うことや、SR後にもう一度本文を読み、うまくできなかった箇所を本文と比較することなどが挙げられます。また、リテリングの際、生徒の考えや意見を一言付け加えさせてもよいでしょう生徒の考えや意見を付け加えさせる活動は、It is for toの文も習ったことなので、させてみようと思った。

「幸せへのまわり道」〜A Beautiful Day in the Neighborhood〜を観て

https://www.misterrogers.jp/

8月30日(日)にふと思い立って、この映画を観に行った。決めては、トムハンクスが出演しているということと評価が結構高いということだった。以下はあらすじ(映画.comより引用)

https://eiga.com/movie/92230/

トム・ハンクスが、アメリカで1968年から2001年にわたって放送された長寿子ども向け番組の司会者フレッド・ロジャースに扮し、アカデミー助演男優賞にノミネートされたヒューマンドラマ。雑誌「エスクァイア」に掲載された新聞記者ロイド・ボーゲルによる記事の映画化で、ボーゲル役を「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」でもハンクスと共演したマシュー・リスが演じた。雑誌記者として華々しいキャリアを築いてきたロイド・ボーゲルは、姉の結婚式に招待され、そこで長らく絶縁していた父ジェリーと再会する。家庭を顧みず自分たち姉弟を捨てた父を、ロイドはいまだ許せずにいた。数日後、仕事で子ども向け番組の司会者として人気のフレッド・ロジャースを取材することになったロイド。フレッドは、会って間もないロイドが抱えている家族の問題や心のわだかまりを見抜き、ロイドもそんなフレッドの不思議な人柄にひかれていく。やがて2人は公私ともに交流を深めていくが……。監督は「ある女流作家の罪と罰」「ミニー・ゲッツの秘密」のマリエル・ヘラー。

2019年製作/109分/G/アメリカ
原題:A Beautiful Day in the Neighborhood
配給:イオンエンターテイメント

淡々とストーリーが進む。喜怒哀楽を感じることもない。セリフはゆっくりで私は字幕なしでも英語が聴き取れる程だった。静寂が長い。気持ちを落ち着かせて、ホッとしながら観ることができる。登場人物の心理描写が細かく描かれている。表情やセリフの言い回しからどういう気持ちなのか推し量ることができる。

トムハンクスは実在したフレッド・ロジャースという、子ども番組のメインキャスターを務めた伝説的な人物に扮している。地下鉄に乗車するとその車両に乗っている全員が国籍人種関係なく子ども時代にお世話になったその子ども番組のテーマソングを熱唱する。感動的なシーンだった。

フレッドは怒りを鎮めるためにどうすればよいか。悲しみも驚きも全て怒りから発生いている。ピアノを弾いたり瞑想したり、どうすれば心の平静が保てるのかをいつも考えている。

重い過去を持っているロイド・ボーゲルに、過去に戻って自分探しをするように何回か示唆するが、なかなか戻れない。しかし、瀕死の父親ともう一度出会い直しをすることで、すべてがリセットされ、前向きに生きていこうと決意できるようになる。

この映画を観て、何度も自分の過去のことがフラッシュバックしてきた。亡くなった父親のこと、亡くなった母親のこと、弟のこと、5人の子どものこと、連れ合いのこと、自分の家族のことをとても強く感じられた。普段クヨクヨすることが多く、辛いことばかり意識が向いてしまうが、私には永久的な存在として、自分が作ってきた家族がある。よくよく考えれば、今は子どもたちの活躍や生活環境が変わった連れ合いの生き方を見ているのが、とても楽しみである。その生きる上での喜びを心の中に呼び起こしてくれたのが、この作品だった。

感じ方は人それぞれであるが、家族を強く意識させられた映画であった。かなりオススメである。