「保護者クレーム劇的解決『話術』を読んで」

📘『保護者クレーム 劇的解決「話術」』レビュー

――保護者対応は“技術”で乗り越えられる

保護者対応に悩む全ての教員にとって、本書は心強い一冊です。クレームに対して感情的に構えるのではなく、「対応の構え方」や「言葉の選び方」を変えるだけで、相手との関係性が劇的に変わるということを、具体的なエピソードや話術を通して教えてくれます。

🧠 クレーマーを「タイプ」で理解するという視点

本書のユニークな点は、保護者クレーマーを心理的特性によって分類し、それぞれに合った対応術を提示していることです。

たとえば、シゾイド型クレーマーは感情の表出が苦手で、対人関係に不器用なタイプ。悪意はなく、むしろ「今、自分が直面していること」に強く執着してしまう傾向があります。彼らの言動を過度に受け取るのではなく、「そういう気質の人だ」と理解し、冷静に向き合う姿勢が、教員側の精神的な余裕につながります。視覚的な資料を用いた説明や、「子どもたち」を主語にした対話によって、少しずつ安心感を持ってもらえるという実践的なアドバイスも印象的です。

一方、ナルシスティック型クレーマーは、自分の正しさを証明しようとし、周到に準備をして“勝つ”ことを目的に来校することがあります。教員が「その場対応」で挑んでしまうと、完全に後手に回ってしまい、立場が不利になることも。本書では、相手に「代替案」を出させ、それを解決の糸口とすることで、対立を和らげる方法も提案されています。

💬 劇的に効く「話術」の工夫

本書では、心理学のテクニックも巧みに取り入れています。たとえば――

  • ピークテクニック:会話の中に「ちょっと意外なこと」を差し込むことで、相手の集中を取り戻す技術。
  • ドア・イン・ザ・フェイス:まず大きな要求を提示し、それを断らせた後に本命の小さな要求を通すという交渉術。

これらの技術は一見ビジネス的ですが、実際には**「対話のリズム」を整える上で非常に有効**であり、教育現場に応用できることがよくわかります。

👪 共通のゴールは「子どものため」

本書の根幹にあるのは、「教員と保護者は対立する存在ではない」というメッセージです。
クレームが発生したとき、主語を「子どもたち」に置き換えるだけで、教員対保護者の構図を、共に子どもを支える同じチームとして再定義できる。このシンプルで力強いメッセージは、保護者対応に悩むすべての教員の背中を押してくれます。

✅ 最後に

「また来るかもしれない」と怯えるのではなく、「来たらまた対応すればいい」と構える。相手を“理解しよう”という余裕が、結果的に教員自身を守る盾になる――本書はそのことを、具体的な言葉とともに教えてくれます。理論と実践の両面から保護者対応を支えてくれる、まさに**“現場の教員必携の一冊”**です。

「相撲を世界に」を指導して

🟢導入の工夫と手応え

導入発問:「これまでに打ち込んできたことがあるか?」
→ 部活動など、自分の経験と重ねながら話す生徒が複数いた。
→ 自分ごととして物語に入っていくきっかけとしては成功。

🟠人間理解の発問(見直しの視点あり)

実施発問:「人生の節目で今さんはやめようと思ったのはなぜか?」
→ 反省点:「やめようと思った“理由”」よりも、
 **「その時どんな気持ちだったか?」**の方が本人の内面に迫れた。

→ 読み取り道徳的な流れになりやすいため、感情や心情に焦点を当てた問いにする必要がある。

🟠価値理解の発問(改善点あり)

実施発問:「やめようと思ったのに続けてこれたのはなぜか?」
→ 反省点:「理由」を問う形がやや説明的に。
 「続けようと思った時、どんな気持ちだったか?」
 → 続ける選択をした心の動きを考えさせた方が、価値の深まりにつながる。

🔵自己を見つめる発問(良好)

実施発問:「やめようと思っても、頑張ってやり抜いてきたことはあるか?」
→ 多くの生徒が活発に発言。部活、友人関係など、リアルな経験とつなげていた。
→ 生徒の感情が動いたことが伝わり、深い振り返りにつながった。

🟣まとめと次への意識

研究授業へ向けて、発問の質と順番の精査が必要。特に、「読み取り→感情→自己」と進む設計がカギ。

今回は、生徒が「自分の言葉」で語る場面が多く、価値の深まりが見られた。

一方で、「理由を聞く」問いが多く、説明型になりがち
 → 今後は「どんな気持ちだったか」「どんなことを感じたか」を問う発問へ意識的に切り替えること。

英語教育2025年5月号を読んで

月刊英語教育2025年5月号 大修館書店 May 2025 Vol.74 No.2

第1特集 〈論点整理〉紙とデジタル 学びの姿はどう変わるか 第2特集 大学入試英語の現在

📘『英語で溢れる教室をつくる 小学校授業 活動&教材アイデア』第2回(2025年4月号)

◆【やり取り力】を高める4つの工夫(岩井敏行先生)

  1. QAR(Question–Answer–Reaction)
     → 相手の答えに対して反応する例:「I see.」「Me, too.」
  2. TF-QA(True/False–Question–Answer)
     → 相手の話を自分に関係あるか確かめる:「You mean me?」など
  3. QAA(Question–Answer–Add)
     → 一言加えて会話を続ける:「I like cats. How about you?」
  4. QAQA(Question–Answer–Question–Answer)
     → 質問と答えの連鎖で、自然なやり取りを生む

🔍これらの活動は、中学生にも十分応用可能で、ペアワークやスピーキングテストの練習にも有効です。

📚紙とデジタルでの読みの違い(バトラー後藤裕子、柴田裕仁 各氏)

◆ 認知科学からの提言

  • 紙 vs デジタルに明確な差はないが、「手を使う読み」「比較読み」「書き込みを伴う読み」では紙が優位
  • デジタルは「視覚的には便利だが操作性に制約が多く、深い読みや学びには不利」。
  • デジタルでは、「りんごの絵を描く」といった課題で描き直しの誘惑や過集中が起きやすく、本来の目的から逸れる。

📌指導のヒント:

  • デジタルは「下書き」「確認」「共有」に活用し、本読み・深掘り・発表準備は紙で行うのが理想的。
  • デジタル使用時間は授業1時間中10分以内が望ましい(山田正明氏/医学的視点より)

🧠医学的視点からの注意(山田正明先生)

  • 多くの学生が「デジタルでは集中できない」「記憶に残りにくい」と回答。
  • デジタル学習では脳血流の増加が少なく、浅い学びになりやすい。
  • 北欧の例を挙げ、教科書のデジタル化が学力低下・教室の荒れに直結したと警鐘を鳴らす。

🧩中学校文法事項の導入例(第14回:SVOO)

◆ SVOO文型の指導ポイント

  • 「give him a book」vs「give a book to him」の違いを焦点で教える。
  • I will give him a book.
  • →「何をあげるか(=a book)」に焦点がある文。つまり、「あげるもの」に注目して話している。聞き手は“何をあげるのか”を知りたいときに適している。
  • I will give a book to him.
  • →「誰にあげるか(=to him)」に焦点がある文。つまり、「相手」に注目している。他の人ではなく“彼に”あげるということをはっきり伝えたいときに使う。
  • 動詞の意味に応じて、toかforを使い分ける。
    • Aグループ(give, send, tell など):to
    • Bグループ(make, buy, cook など):for

📌暗記より、意味理解とタイプ分けでの指導が効果的!

✏ 文法クイズ(佐藤誠司)

  • 料理名は 小文字で始める(例:sushi, curry)

「ライオンのおやつ」を読んで

「ライオンのおやつ」小川糸 ポプラ出版 2022年10月5日第1刷 

感動、感動、感動。残り70ページで涙が止まらなくなり、電車で読んでいたら隣のおじさんにチラチラ見られてしまった。ラスト30ページでは完全に涙腺が崩壊。もう嗚咽してしまうほどだった。こんなに泣ける本は本当に珍しいし、これほどの感動をくれた小川糸さんに心から感謝したい。

若くして余命宣告を受けた33歳の雫(しずく)は、ホスピス「ライオンの家」で最期の日々を過ごすことを決める。そこでは、毎週日曜日に「おやつの時間」があり、入居者が“人生で一番食べたいおやつ”をリクエストできるという特別な風習があった。やさしい看護師たち、美味しい料理、美しい自然、そして何より心にしみるおやつ。人の死に寄り添いながらも、人生の豊かさと命の尊さを静かに、でも確かに描き出していく——。生と死、喪失と再生、そして小さな奇跡を描く感動作品。

ただ泣けるだけの話ではなく、「死ぬこと」を見つめながら「生きること」の意味を深く考えさせてくれる一冊です。心がやさしく温かくなる読書体験でした。ぜひ多くの人に読んでほしい、かなりのおすすめです。

「トッド人類史入門」西洋の没落を読んで

「トッド人類史入門」西洋の没落 エマニュエル・トッド 文春新書 2023年3月20日第1版

やや難しい本だった。那覇市の「たつや旅館」で一緒にゆんたくした時の知り合いに教わった本。世界の構図を“家族のあり方”という切り口から読み解く、視点がとてもユニークで面白かった。

歴史学者・人類学者であり人口学の専門家でもあるエマニュエル・トッドが、人類史と現代世界の構造を大胆に読み解いた入門書。彼は、政治体制や経済体制を生み出す土台として「家族構造」の違いに着目し、世界各地の家族モデル(平等主義的、絶対主義的、直系家族など)がイデオロギーや国家のかたち、さらには西洋文明の限界にまで影響していると説く。とくに西洋の没落や、ロシア・中国・イスラム世界の台頭を「家族のかたち」から読み解く手法は新鮮かつ示唆に富んでおり、「近代の次」にくる社会像を考えるヒントが詰まっている。

「家族という最も身近な存在から、世界の大きな動きを説明できる」という視点にハッとさせられます。時に難解な部分もありますが、じっくり読み解くと見えてくる世界像が面白く、読後の思考の余韻が長く残る一冊です。おすすめです。

英語教育2025年4月号を読んで

英語教育2025年4月号 大修館書店 April 2025 Vol.74 No.1

第1特集 新年度に見直したい英語語彙指導 第2特集 これからの学びの風景シリーズ① 学びを学習者に委ねる個別最適な学び・自己調整学習を通じて

🔹語彙指導のポイント(笠原 究 先生)

  • 分散学習を意識した語彙指導が効果的。
    • 初回授業で「日本語訳付きの語彙リスト」を配布し、発音・意味を指導。
    • 以後の授業で、短時間でもよいのでリストを使った復習活動を継続的に実施。
    • → 繰り返し触れることで定着を促す。

🔹自己調整学習(財部 裕一郎 先生)

  • 自己調整学習とは:
    • 自ら目標を立て、戦略を立てて学習を進めること。
    • 例:OREO構造(Opinion, Reason, Example, Opinion)を活用した意見文指導。
  • 教師が目的を明確に伝え、生徒自身が達成手段を選べるよう支援。

🔹学びの主語を「教師」から「子ども」に(井上 卓也 先生)

  • 子ども中心の学びへ転換する実践:
    • 自分のペースで学習を進める児童を肯定的に取り上げ、クラスに紹介。
    • 写真や実例を用いて「中間共有」し、学級全体の学びへつなげる。
  • キーワード:
    • 教科の指導と生徒指導の一体化
      • 自己存在感、共感的関係、自己決定、安全な学級風土
    • 学びの【こころ】を見取り、価値づけていく視点が重要。

🔹エンゲージメントを促す授業実践

  • エンゲージメントとは?
    • 生徒が「熱中」「集中」「夢中」になる状態。
    • 種類:行動的・認知的・感情的・社会的エンゲージメント。
  • 導入の工夫:Authentic Material(真正教材)の活用
    • 例:対人地雷と同じ大きさ・形のレプリカを用いて「自分ごと化」。
  • エンゲージメントの3要素
    • 物理的魅力(感情を刺激)
    • 活動的魅力(インタラクティブ性)
    • 内容的魅力(個人的関心)
  • 支援(Scaffolding)としての英文リライト
    • 負荷を最適化することで、認知的エンゲージメントを維持。
    • 生成AIも効果的に活用。

🔹文法指導の留意点(大内 由香里 先生)

所有代名詞の文法的性質と機能を明確に教える必要がある。

例:「mine」は**一人称ではなく、三人称では?**という誤解。

「教皇選挙」を観て

#「Conclave」鑑賞記:人間模様渦巻く“聖なる密室”に引き込まれた夜

忙しい日々の中、珍しく長女が「これは観るべき」と推してくれ、さらに連れ合いが「これが観たい」と強く希望してくれたこともあり、久しぶりに劇場へ足を運びました。そして、観終わった今、素直に「行ってよかった」と思っています。

コンクラーベの裏側に渦巻く“人間”

物語の舞台はローマ教皇を選ぶための密室「コンクラーベ」。表向きは厳かな儀式に見えるこの選挙の裏で、複雑に絡み合う陰謀、駆け引き、裏切り、そして差別やスキャンダルが蠢いている。その人間臭さにグイグイと引き込まれました。権力争いや蹴落とし合いといった“聖職者とは思えない”生々しいやりとりが次々に描かれ、物語に息を呑む瞬間が幾度となく訪れます。

「誰が誰?」似た顔問題に苦戦

ただ正直なところ、登場人物が多く、しかも「似た雰囲気の枢機卿たち」が勢ぞろいするので、序盤は「誰が誰だっけ?」状態に。これにより、途中で2~3度、うとうとしてしまうという、私には珍しい事態に…。しかし、その分、目が冴えた後半は俄然面白くなり、そこからは目が離せませんでした。これ、集中力が削がれたら一気に置いて行かれるタイプの映画です。

ローレンス枢機卿に感情移入

物語の中心となるのは、レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿。彼が知ってしまった“バチカンを揺るがす秘密”を軸に、ストーリーは二転三転していきます。彼の苦悩と葛藤が、スクリーン越しにも痛いほど伝わってきて、観ているこちらも「もし自分だったら…」と考えずにはいられませんでした。

豪華キャストが光る重厚なドラマ

名優レイフ・ファインズに加え、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニなど、圧巻の演技派たちが脇を固め、物語の緊張感をより一層高めていました。重厚なテーマに負けない俳優陣の存在感は、まさに見応えあり。

まとめ:宗教映画以上の“人間ドラマ”

「コンクラーベ」という閉ざされた空間で繰り広げられるのは、宗教の枠を超えた「人間の物語」。名誉、信仰、権力、良心――さまざまなものがぶつかり合う120分は、観る者を不思議な余韻に包み込みます。

あらすじ:
カトリック教会の最高指導者・ローマ教皇の死をきっかけに、世界中から100人を超える枢機卿たちがバチカンに集結。システィーナ礼拝堂で秘密裏に行われる教皇選挙「コンクラーベ」が始まるが、舞台裏では陰謀やスキャンダルが渦巻く…。選挙を取り仕切るローレンス枢機卿は、やがてバチカンを揺るがすある重大な秘密を知ることとなる。
――2024年製作、エドワード・ベルガー監督による話題作。

劇場公開は2025年3月20日。ミステリー好き、重厚な人間ドラマ好きにはたまらない一本です。

「次こそは、冒頭から睡魔に負けないぞ」と心に誓いました(笑)。

英語教育2025年3月号を読んで

英語教育2025年3月号 大修館書店 The English Teachers’ Magazine March 2025 Vol.73 No.14

第1特集 生徒のアウトプットを促進する 話すこと・書くことの指導と評価 第2特集 教師・生徒が安心できる 教室のルールづくり

評価基準を可視化したMIssionシートの実践例 大脇裕也(大東市立北条中学校教諭)

↓はMissionシートの例(やるべきことがはっきりわかって大変取り組みやすい)

https://www.taishukan.co.jp/item/eigokyoiku/materials/03_2025iss_07_1_MAT2196.pdf

↓は」1枚ポートフォリオ(取り組んだ結果や経過がよくわかる)

https://www.taishukan.co.jp/item/eigokyoiku/materials/03_2025iss_07_2_MAT6159.pdf

↓は「振り返りシート」オンラインでの提出は子どもが取り組みやすいと思う。さらに、Missionシートの提出がなければ、振り返りシートに取り組めない仕組みを作っていることも興味深い。

https://www.taishukan.co.jp/item/eigokyoiku/materials/03_2025iss_07_3_MAT2380.pdf

MEMO 英語の学習指導案で「生徒に〜させる」という意味で、letを使ってはいけない。「放っておく、したいようにさせる」と言う意味だからである。その際、makeだと無理やりさせる感じになるので、haveあるいはhelpやencourageを使うのがよいだろう。(p.46 大内由香里先生)

教材作成・意見共有に使えるICTツール 稲田幸実(館山市立第一中学校教諭)

無料で教材作成ができるサービス、LearnHip 並べ替え問題や空所補充問題を作成してくれる。

https://learnhip.com

「英語教育2025年2月号」を呼んで

英語教育 そもそも談話室 第23回 「Google翻訳伝達会」対策会議 奥住桂(埼玉大学准教授

アウトプットを急がない 生徒が翻訳ツールにすぐ頼ってしまう原因の一つは、インプットが足りていないこと。語彙や表現に馴染みが無ければ自分で文が作れないですよね。授業や単元の前半では、アウトプットを急がず、関連する話題について聞かせたり、読ませたりすることに時間を割きたいですね。

日本語母語話者が英語を習得するには2,200時間以上の学習が必要である. と言われている

英語教師のためのICT活用ガイド 髙橋有加(東京家政大学准教授)

ワイヤレスでスマホの画面を投影できるHDMIドングルを利用したプレゼン 

今は安価で3000円弱くらいでネットでも販売されている。

「百年の孤独」を読んで

「百年の孤独」ガブリエル・ガルシア マルケス(著) 鼓直(訳)

#完読できなかった悔しさ ―『百年の孤独』という試練

正直に言うと、久しぶりに一冊読み切れませんでした。何度も挑戦し、数ヶ月にわたってページをめくったのですが、途中で力尽きてしまったのが、ガブリエル・ガルシア=マルケスの名作『百年の孤独』です。

難攻不落の世界文学

2024年度、日本で最も売れた本とも言われるこの作品。言わずと知れたノーベル文学賞作家による世界的な傑作ですが、読む側にも覚悟が求められる一冊です。

私の場合、特に苦戦したのは「ブエンディア家」の世代を超えた物語構造。同じ名前が何度も繰り返し登場するせいで、途切れ途切れに読み進めていると「あれ、今のホセ・アルカディオは父?息子?孫?」と、すぐに迷子になってしまうのです。一気に読めればまた違ったのかもしれませんが、私の読書リズムでは、今回は完読に至りませんでした。

それでも魅力は圧倒的

途中で挫折したとはいえ、物語の世界観は圧倒的でした。蜃気楼の村・マコンドを舞台にしたブエンディア家の栄枯盛衰の100年。その過程で描かれる、孤独という宿命に翻弄される一族の姿は、幻想的でありながらもどこか生々しく、現実と幻想の間をたゆたう読後感が残ります。

あらすじ:『百年の孤独』

マコンドという蜃気楼の村で幕を開けたブエンディア家の物語。開拓から繁栄、衰退、そして廃墟へと至る百年の歴史を通じて、一族に連綿と受け継がれる「孤独」の運命。その運命は、絶望と希望、苦悩と悦楽、現実と幻想、死と生をすべて呑み込みながら、壮大に語られます。1967年に発表され、世界文学史に名を刻むこの作品が、2024年の今もなお、多くの読者を引き寄せてやまないのは、その普遍的なテーマが時代を超えて響くからでしょう。

完読できなかったからこそ

正直、今回は悔しいです。けれど、完読できなかったからこそ「この本の持つ底知れぬ深さ」を実感したのかもしれません。次こそは、もっと時間を作って一気に読破したい。そう思わせる、まさに「読む側を試してくる作品」でした。

もし次に読む機会があれば、系図をメモしながら読み進めてみようと思います。あの世界を最後まで旅する日を、必ず迎えたい――そんな気持ちだけは強く残った読書体験でした。

「読めなかった」という経験すら、記憶に刻まれる。それが『百年の孤独』でした。