「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈著(株)新潮社 2023年3月15日初版
#成瀬あかりのような少女が教えてくれること
教員生活が長くなると、成瀬あかりのような少女に出会うことは珍しくありません。一見、自分の世界に閉じこもっているようで、周りの出来事や人に対して無関心に見える。しかし、彼女たちには、特定の分野で驚くべき才能を発揮する一面があります。その才能は時に天才的で、周囲の人を驚かせ、魅了します。
あらすじ:成瀬あかりの物語
2020年、中学2年生の夏休みが始まったとき、幼馴染の成瀬あかりがまた奇妙なことを言い出しました。コロナ禍で閉店を控える西武大津店に毎日通い、ニュース中継に映るという計画を立てたのです。突拍子もない彼女の行動に最初は呆れるばかりでしたが、次第にその真意や情熱に引き込まれるようになります。
さらに、成瀬はM-1グランプリに挑戦したかと思えば、自分の髪を使った長期実験に取り組み、市民憲章を暗記して実践するという独自の道を歩み続けます。何をするにも全力で、誰にも縛られずに我が道を突き進む彼女。その姿は周りの人々を驚かせ、いつしか惹きつけていきます。
物語は、そんな成瀬の成長と、彼女を見守り続ける幼馴染・島崎との友情を軸に展開。成瀬が少しずつ人との関わりを受け入れ、「かけがえのない存在」を見出していく過程が描かれます。2023年、最注目の新人作家が贈るこの青春小説は、彼女の特異な才能と成長を通じて、私たちに「個性を生きる」ことの大切さを教えてくれます。
孤独な才能と成長
成瀬のような少女は、周囲とのコミュニケーションや人付き合いが得意ではないこともあります。それでも彼女は成長する。物語の中で、彼女が島崎を友人として、そして「かけがえのない人」として認識するようになる姿に、人としての変化と成長が見られます。この変化は、単に友情を築くことにとどまらず、彼女自身の自己変革の証でもあります。自分の内なる壁を少しずつ壊し、新たな関係性を築いていく彼女の姿は、他者と向き合うことの重要さを教えてくれます。
成瀬から学ぶこと
成瀬あかりは、周りに流されず、自分の興味と才能を伸ばすことに専念しています。彼女が物語を通して示してくれるのは、「自分を信じ、成長する力を持つ」ということ。他人と違う部分を受け入れ、それを長所に変えていく姿勢には、大いに学ぶべきものがあります。
私たちが彼女から得られる教訓は、自分自身を見つめ直し、不要な「人目」や「周囲への気遣い」を少し減らしてみることかもしれません。そうすることで、本来の自分の可能性や才能にもっと近づけるのではないでしょうか。
成瀬あかりのような存在は、私たちに気づきを与えてくれる特別な存在です。彼女を通して、より自由で、より豊かな自分自身を見つけられるきっかけを得たいものです。