英語教育2025年10月号を読んで

『英語教育』2025年10月号 大修館書店 The English Teachers’ Magazine October 2025(Vol.74 No.8)

テーマ:10/13は“失敗の日”——失敗を生かして授業を改善する

今月号の拡大特集は「10月13日=失敗の日」。
“失敗を材料に授業を良くする”という視点が全体を貫いていて、現場感のあるヒントが満載でした。とくに印象に残った記事を、私の授業実践の視点でメモしておきます。

1 ビリギャル本人・小林さやかさん「失敗の受け止め方」

キーワード:学習は“複利”/一夜漬けより“10分×何度も”

学習は“複利の板波”。最初の成果は小さくても、続ければ何十倍にも広がる。だから“一夜漬け”ではなく、“少しずつ、何度も”が正解。

スピーチや表現活動の指導でも、私が常に言っている「10分×反復」と完全に一致。
“短時間×高頻度”が、発話の滑らかさ・語彙の想起・自信を底上げします。

2 奥住 桂(埼玉大学 准教授)

すべての教員PCに“公費で”適切な英字フォントを

“手書きに近い読みやすい英字フォントを、先生が個人負担ではなく公費で導入すべき”という提案。
Comic Sansで代用すると Y / l / 1 などの形が学習用表記として微妙にズレる問題がある、という指摘に深く同意。記事では例としてサスン(Sassoon)系や、私自身も使用している**モリサワ「UDデジタル教科書体」**が挙がっていました。

3 三仙 信也(福井県立藤島高校)

「ディベート指導」の4つの誤解をほぐす

    1.    試合まで辿り着けるか? → 試合の可否がゴールではない
    2.    原稿準備が難しい → 全文原稿ではなく“キーワード”で話す練習
    3.    イベント化で進度が不安 → “必要な内容を学んだ後の短尺実践”で十分
    4.    文献調査の負担 → 検索時間は“活動設計”で区切る(浪費しない)

「ペア」「トライアングル(3人)」など小さな単位にディベートのエッセンスを埋め込むのが肝。
“話すための原稿”は箇条キーワード+マッピング/ラベリングで即興性と聞きやすさが両立します。

4 佐藤 誠司((有)佐藤教育研究所)

「大事なことを先に言う」——作文とスピーキングの共通原則

Did you do anything last Sunday?
Yes, I spent half of the day collecting trash on the beach in a volunteer group.

“海岸でボランティアが集まって…”という状況説明から始めず、**要点(半日かけて清掃)**を先頭に。
書く・話すの順序は固定ではなく、双方向にトレーニングするのが理想。
豆知識:ハッピーセット=Happy Meal。

5 近藤 公哉(埼玉県立坂戸西高校)

生成AIも活用:描写課題で“書く力”と意欲を底上げ

描写課題は英検面接の準備だけでなく、ライティングの有効な足場。
ここで紹介されていた Sadiyah(2011) の研究が非常に示唆に富むものでした。

◆Sadiyah(2011)の研究概要(詳細)

インドネシアの公立高校に通う英語学習者28名を対象に、描写課題(Descriptive Writing Task)が英作文能力と学習動機に与える影響を検証した実践研究です。
    •    目的:
 絵やイラストを基に英作文を書く活動が、学習者の語彙力・文法力・内容展開・学習意欲にどのような変化をもたらすかを調べる。
    •    方法:
 対象生徒を「描写課題実施群」と「通常作文群」に分け、約6週間にわたって授業実践を実施。前後テストとアンケート調査を行い、文章量・語彙の多様性・文構造・感情面の変化を比較。
    •    結果:
 描写課題群では以下の変化が見られました。
 1. 1回あたりの作文語数が平均30%増加。
 2. 形容詞・副詞の使用率が上昇し、文がより具体的・生き生きとした描写に。
 3. 82%の生徒が「絵があると書きやすい」と回答。
 4. “英語を書くことは楽しい”と感じる学習者が増加。
    •    考察:
 Sadiyahは、イラストを基にした作文活動は、学習者の想像力を刺激し、言語使用の幅を広げるとともに、心理的負担を軽減して“自分の考えを英語で表現する第一歩”になると結論づけています。
 また、形容詞・動詞のバリエーションが増えることで、文法学習と創造的表現の橋渡しにもなると指摘しています。

◆現場での応用アイデア
    1.    1枚絵(または生成AIで作成)を提示
    2.    形容詞5語→文3つ→ミニ段落の順で拡張
    3.    30秒口頭要約→60秒で段落清書

絵を活用することで、生徒が自分の表現を視覚的にイメージしやすくなり、結果として「英語で書けた!」という成功体験を増やせます。

まとめ:失敗は“設計”で学びに変わる
    •    小さく、何度も(複利の発想)
    •    環境=見やすいフォントで学びを後押し
    •    勝敗より過程(小単位でディベートの核を回す)
    •    要点先行で伝わる英語
    •    絵の力+AIで“書けた”の成功体験を増やす

今号は、「失敗を恐れない設計」と「学びやすい環境整備」が、結局は生徒のエンゲージメントを押し上げるという示唆に満ちていました。

「反応しない練習」あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

「反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」」草薙龍瞬著 KADOKAWA

『反応しない練習』―仏陀の教えが現代に生きる理由

最近読んだ本、『反応しない練習』(草薙龍瞬著/KADOKAWA)は、久々に心に深く響いた一冊でした。
著者の草薙龍瞬さんは、ただの僧侶ではありません。中学校を中退後、自らの努力で大検(大学入学資格検定)を経て東京大学法学部に進学。その後、インドやタイの大学で仏教を学び、現在は特定の宗派にとらわれず、仏教を現代に生かす活動を続けているという異色の経歴の持ち主です。

反応しないという生き方

本書のテーマはタイトルの通り、「反応しない」。
怒り・嫉妬・不安・妄想――日常の苦しみの多くは、実は外の出来事そのものではなく、自分の心の反応によって生まれているというのです。

著者は仏陀の教えに基づき、悩みを解く4つの手順を紹介しています。
    1.    生きることには苦しみが伴う
    2.    苦しみには原因がある
    3.    苦しみは取り除くことができる
    4.    その方法がある

この「苦しみの原因」にあたるのが、無駄な反応。
「認められたい」「注目されたい」「愛されたい」といった承認欲が、怒りや不満、嫉妬といった感情を生み出しているといいます。

心を静める3つの方法

著者は、心の状態を整えるための3つの実践を挙げています。
    1.    言葉で確認する – 今の自分の感情を言葉にして客観視する。
    2.    感覚を意識する – 呼吸や体の感覚に意識を向け、現実に戻る。
    3.    分類する – 感情を「貪欲」「怒り」「妄想」の三毒に分けて見つめる。

このプロセスを繰り返すことで、心が穏やかになり、反応に支配されなくなるといいます。

「判断しない」理解がもたらす自由

印象的だったのは、「正しい理解とは、正しいと判断しない理解である」という言葉。
人は「自分が正しい」と思うとき、そこに慢心や承認欲が隠れている。
それを手放し、「私は私、人は人」と境界線を引くことで、ようやく心は自由になる――この考え方にはハッとさせられました。

妄想から離れる練習

本書の中では、「妄想をリセットする方法」も紹介されています。
たとえば嫌な記憶や不安が頭に浮かんだとき、「これは記憶に過ぎない」「これは妄想だ」と心の中でラベリングする。
その瞬間、自分と感情の距離ができ、苦しみから一歩抜け出せるのです。

最後に:静かな強さを持つということ

「反応しないことが最高の勝利である」――この一文が心に残りました。
相手に勝つことではなく、相手に反応せずに自分の心を保つこと。
まさに現代社会の中で私たちが最も必要としている力ではないでしょうか。

「怒りを作り出すのは相手ではなく、自分の中の反応である。」
その気づきこそが、仏教的な“合理的な作戦”なのだと、静かに納得させられました。

草薙龍瞬さんの言葉は、決して説教臭くなく、むしろ合理的で現代的。
仕事や人間関係で疲れたとき、自分の心を整えるための一冊として、そっと本棚に置いておきたい本です。

「ベストキッド:レジェンズ」をみて

2025年8月29日から公開されました『ベスト・キッド:レジェンズ』(原題:Karate Kid: Legends)。について紹介したいと思います。

これまで『ベスト・キッド』(オリジナル版)にはラルフ・マッチオ演じるダニエルと、ノリユキ・パット・モリタ演じるミヤギが主役として登場していました。さらにリメイク版ではジャッキー・チェンが登場。今回の新作では、なんとオリジナルとリメイクの“両レジェンド”が共演するという仕掛けがなされています。

📖 あらすじ(ネタバレ控えめに)

物語の主人公は、北京でカンフーの英才教育を受けていた十代の少年 リー(Li Fong)。 家族の事情で母親と共にニューヨークに転校し、新しい環境で孤立感やいじめに直面します。

彼を救ったのは、2人の師匠。カンフー師範 ミスター・ハン(ジャッキー・チェン) と、空手の指南役 ダニエル・ラルッソ(ラルフ・マッチオ)。 リーは両方から学びながら、地元の空手チャンピオンとの対立に巻き込まれ、最終的にはトーナメントで戦う決意を固めます。

この映画は、シリーズの過去作品(オリジナル版、リメイク版、ドラマ『コブラ会(Cobra Kai)』)の物語を継承しつつ、新たな世代を据えたクロスオーバー作品と位置づけられています。 また、ウィリアム・ザブカ(ジョニー・ローレンス役)もラスト近くに登場するとの話もあり、ファンには嬉しいサプライズ要素も。

🧐 私の感想・気づき

まず、私が強く印象に残ったのは、ノリユキ・パット・モリタ氏の姿。彼はすでに亡くなって10年以上経っているにもかかわらず、スクリーンにとてもきれいな画で登場していました。もしかすると AI技術により復元された映像 かもしれません。懐かしさとともに、映像技術の進歩を感じさせられました。

主人公リーは、中国でずっとカンフーを習っていたという設定。母親の都合でアメリカに来て、空手のチャンピオンにいじめられる日々。そこにダニエルが住んでおり、リーは宮城道空手(ミヤギ道)を教わるようになる。このあたりは、あなたの言っていたストーリーにかなり近いと感じました。

対決シーンは、ニューヨーク中を使ったストリートファイト風の大会。決勝戦でいじめっ子を打ち負かす──という王道展開もありつつ、映像はとても現代的で、CG やアニメーション的演出が随所に見られました。正直、「やりすぎかな?」と思う場面もありました。ただ、ファンとしては往年の要素を思い出せる演出がちりばめられていて、懐かしさに胸が熱くなる瞬間も多々ありました。

さらに、あの ウィリアム・ザブカ の登場。『ベスト・キッド』や『コブラ会』を観てきた人にとっては、本当に胸アツなサプライズだったに違いありません。

特訓のシーンでも、「ワックスオン/ワックスオフ」や、「ジャケットの着脱」「ティーケット取る/外す」みたいな、古典的なモチーフが復活していました。こういう“シリーズのお約束”をほどよく使ってくるあたり、製作者もファンの期待をよく理解しているな、と感じました。

ただ、短期間の上映になったという点は気になります。8月29日から始まり、1か月ほどで上映終了になったという話。 公開期間が短かった理由が気になるところです。

ネットでの評判を調べたところ、評論家評価は「賛否両論」あるようで、期待の大きさからくる厳しさも見られます。特に、ストーリー構成の使い古された感や、演出が過剰という意見も。 私個人としては、ファンだからこそ楽しめた部分が多く、エモーショナルな瞬間や「伝統 × 現代」の融合には拍手を送りたいです。

✏️ なぜこの映画を観てよかったと思うか

  • シリーズへの愛とリスペクトが感じられる構成
  • ノリユキ・パット・モリタ復帰、ラルフ・マッチオ × ジャッキー・チェンの共演という夢の共鳴
  • 昔ながらのモチーフ(ワックスオンなど)と、現代的な映像手法のミックスは賛否あるが、新しい挑戦
  • ファンサービスもありつつ、主役リーの成長物語として観ることができる
  • 公開期間が短かったのが残念だが、観に行けたのは良い思い出

もし続編が出るなら、ぜひ応援したい。次はもっと深いキャラクター描写や、伝統武術と現代格闘技の掛け合いを丁寧に見せてくれたら嬉しいなと思います。

川端のある暮らし

🌿自然と共に生きる―「カバタのある暮らし」から学んだこと

びわ湖のほとり、滋賀県高島市針江地区。

ここには、今もなお水と共に生きる人々の暮らしがあります。

家の中に小さな川が流れ込み、三つの池——元池・壺池・畑池——に分かれて、それぞれが飲み水・生活水・洗い水として使われています。畑池には鯉やマスが泳ぎ、残飯をきれいに食べてくれる。焦げついた鍋も一晩沈めておけば、翌朝にはピカピカになるそうです。

そして、その冷たい水(年間約13度)は、夏にはトマトやスイカを冷やす“自然の冷蔵庫”。冬はほんのり温かく、家の中を心地よく包みます。昔の人々は、水のありがたさを肌で感じながら生きてきたのですね。

📸 写真家が見つけた“当たり前”の美しさ

地元の写真家・今森光彦さんが、この「カバタのある暮らし」に魅せられ、写真集を出版したところ、全国から見学者が押し寄せたそうです。

しかし、あまりの注目に地元の人々は戸惑いました。家の敷地にまで入り込む観光客もいたとか……。

それでも針江の人たちは、「どうせなら私たちの暮らしを正しく伝えよう」と立ち上がります。

住民26人が委員会を立ち上げ、勉強会を重ね、ボランティアガイドとして活動を始めました。仕事や家事の合間を縫って、自分たちの生活文化を伝える——その姿こそ、本当の誇りと愛郷心の表れだと思います。

委員長の言葉が印象的でした。

「水は宝。そして、ここで生きる人も宝です。」

🏫 授業で感じた“共生”の心

私の学校は、外国にルーツをもつ生徒が多い学校です。

「人と共に生きる」ことをテーマにした授業を数多く行ってきましたが、今回は「自然と共に生きる」ことに焦点を当てました。

生徒たちに尋ねました。

「仕事や家事で忙しいのに、なぜボランティアとして活動しようと思ったんだろう?」

返ってきた答えはこうでした。

「自分たちの暮らしをもっと知ってほしいから。誇りを持っているから。」

この言葉に、私は深くうなずきました。

“誇り”は、他者に伝えたいという気持ちから生まれるのだと思います。

さらに生徒たちにこう聞きました。

「あなたは自然と関わる体験をしたことがありますか?」

キャンプ、川遊び、海水浴……。

その中で、「ゴミを出してしまうことがあるから、自然をきれいに保つことが大切」という意見が多く出ました。

最後に問いかけました。

「自然と共生するために一番大切なことは何ですか?」

生徒たちの答えは一致していました。

「リスペクト(敬うこと)です。」

自然を“使う”のではなく、“共に生きる”。

この言葉が、今日の授業のすべてを物語っていました。

✨ まとめ

カバタのある暮らしは、単なる昔ながらの生活ではなく、

“人と自然が支え合う知恵” の象徴です。

生徒たちはその姿に、「自分たちの暮らしを誇りに思う」こと、

「自然に感謝し、守る」という心を学びました。

道徳の授業の中で、私は改めて感じました。

私たち教師もまた、「自然や人をリスペクトする生き方」を、日々の中で生徒に見せていくことが大切なのだと。

生徒たちに実感を持たせるために、実際の映像を交えて(YouTube)授業をしたので(前半2分、後半5分)、ややまとまりに欠けましたが、あまりの川端の暮らしの美しさにうっとりと見惚れ、「あんな暮らしもしてみたい」と言っている生徒がいました。

「No Charity, but a Chance」を指導して

特別の教科 道徳授業「No Charity, But a Chance」を通して考えたこと

9月16日と17日、2日間にわたって特別の教科道徳の授業を行いました。題材は「No Charity, But a Chance」というお話です。

物語のあらすじ

この物語の主人公は、中村裕医師で、日本障がい者スポーツの父と呼ばれた人です。障がい者が「保護される存在」と見なされがちだった日本で、「いや、彼らは働けるし、社会に復帰できるのだ」という信念を持ち、行動に移した人物です。イギリスを訪れた際、障がい者の社会復帰率が日本では2割程度なのに対し、イギリスでは8割以上に達していることに衝撃を受けました。さらに、イギリスでは障がい者が運動やリハビリを通して自信を取り戻し、社会復帰を果たしている現状を目の当たりにしました。

一方、日本では「運動はさせない」「保護が中心」という古い考えが根強く、障がい者が活躍できる場がほとんどありませんでした。そこで中村医師は、自ら障がい者のための事業所を設立します。しかし事業は簡単には軌道に乗らず、資金や仕事を得るために各方面へ必死に働きかけることになります。それでも彼は諦めず、「障がい者はできないのではなく、できることを証明するのだ」と奮闘し続けました。

生徒たちの意見と気づき

授業の冒頭では、私たちの学校に外国にルーツを持つ生徒が多いことから、「文化や習慣が違う人と共に生きる上で大事なことは何か」と問いかけました。

出てきた意見には、

  • 「笑顔でいることが一番大事だと思います。言葉が通じなくても、気持ちは伝わるから」
  • 「自分の気持ちをしっかり言うこと。言わないと分かってもらえないから」
  • 「相手の立場になって考えたら、意見が変わることもある」
    などがありました。多文化の学校らしい視点が自然に出てきたのが印象的でした。

物語を読み進める中では、主人公の行動に「すごい」と感じた瞬間を生徒たちが次々に挙げていきました。

  • 「障がい者が働く姿を見て、自分も頑張らなきゃと思った」
  • 「日本に施設がないなら、自分で作るっていうのがすごい」
  • 「事業がうまくいかなくても、仕事を探してきて続けたのがかっこいい」

また、私の問いかけ「どうして中村医師はここまで障がい者を支えようとしたのか」に対しては、

  • 「障がい者はできないと思われているのが悔しかったんだと思う」
  • 「一緒に働くことで、障がい者も笑顔になるし、支える側もやる気になる」
  • 「障がい者の人たちが目を輝かせて働いている姿を見て、自分もやってみたいと思った」
    といった意見が出ました。

授業の中で、「無知から偏見、偏見から差別」という流れを説明すると、生徒たちは深くうなずきながら、「知らないことが一番こわい」「だからこそ理解しようとする努力が大事」と感想を述べていました。

自己理解と共生社会へのつながり

後半では、「あなた自身が人と関わる上で大切にしてきたことは何か」と問い直しました。

  • 「気になったら黙っていないで、『どうしたの?』って声をかける」
  • 「いいところも悪いところも両方見るようにしている」
  • 「自分とは違う考えを知ると、自分の考えも広がる」
    など、日常の体験から出た具体的な意見が次々と出てきました。

最後に「多様な立場の人が共に生きる社会を心地よいものにするには?」と聞くと、

  • 「とにかく話すこと、コミュニケーションを続けること」
  • 「相手を理解しようとする気持ちを持ち続けること」
    という声が返ってきました。

授業を終えて ― 多文化の学校だからこそ

今回の授業を通して、生徒たちが「障がい者理解」だけでなく、「自分と異なる背景を持つ人とどう共に生きるか」を真剣に考えてくれたことに感動しました。私の学校は、外国にルーツを持つ生徒が6割以上を占める多文化的な環境です。だからこそ、異なる文化や習慣を持つ仲間と共に学び合う日常は、まさに「No Charity, But a Chance」の精神につながるのだと思います。

同情や保護の対象として見るのではなく、「共に社会の一員として生きるチャンスをどう作るか」。主人公の姿は、私たちが多文化の学校で日々実践していることと重なります。今回の授業は、生徒の言葉とともに、そんな大切なことを改めて教えてくれる時間となりました。

英語教育2025年9月号を読んで

英語教育2025年9月号 大修館書店 September 2025 Vol.74 No.7

第1特集 英文を^能動的に読む^学習者を育てる 第2特集 これからの学びの風景シリーズ②1人ひとりの学びに寄り添う「学びの多様化学校」

ブログ記事風にまとめてみました。少し読みやすさと流れを意識して、見出しやつなぎを加えています。

読解へのエンゲージメントと教育政策の行方

読解へのエンゲージメントを高める支援の工夫

『英語教育』2025年9月号に掲載されている、広島大学附属福山中高等学校の二川敬伍先生の記事がとても印象的でした。テーマは「読解へのエンゲージメントを高める支援の工夫」。

記事の中で紹介されていた「学習者エンゲージメント」とは、学習者が課題にどれほど深く積極的に関わっているかを示す概念で、行動的・認知的・感情的・社会的側面の4つから捉えられるといいます。エンゲージメントが高いとき、学習者は課題に没頭し、時間を忘れて取り組んでいる姿が見られるとのこと。まさに教師が目指したい授業の理想像です。

さらに廣森・和田(2024)の研究を引用し、エンゲージングな授業を設計するためには、

  1. 意欲を喚起する段階
  2. その意欲を行動に転化し維持する段階
    の両方を意識する必要があると述べています。つまり「やる気を起こさせる」だけでなく、そのやる気を「持続させる工夫」が欠かせないわけです。

また、マーサー&ドーニエによる「タスク・ポツ・デザイン」も紹介されていました。これは、タスクを設計する際に

  • 物理的魅力
  • 活動的魅力
  • 内容的魅力
    の3つのレベルで学習者の感情を惹きつけることができるという考え方です。教室の雰囲気づくりから活動のダイナミズム、さらには教材内容の面白さまで、すべてが学習者の「没頭」を左右するのだと感じました。

高校授業料無償化の最新動向

同号にはもうひとつ注目の記事がありました。学時出版株式会社・月刊高校教育の編集担当、二井豪さんによる「高等学校授業料無償化で何が変わるか」です。

これによると、2026年度から新制度として、公立高校には年間11万8,800円、私立高校には45万7,000円が支給される予定です。ただし現状では、三党合意の文書として合意された段階にとどまっており、まだ国の正式な施策として現場に下りてきていないのだとか。教育現場に与える影響は大きいだけに、今後の具体的な動きが注視されます。

おわりに

今回の『英語教育』9月号は、**「授業の中で学習者をどう没頭させるか」という実践的な問いと、「教育制度がどう変わるのか」**という大きな政策的課題が同時に取り上げられており、教師として多くの気づきを得る号でした。

「食堂かたつむり」を読んで

『食堂かたつむり』:心にしみる再生の物語

小川糸さんの『食堂かたつむり』は、繊細で心温まる物語です。以前『つばき文具店』を読んで感動した私は、小川さんの作品にすっかり魅了され、今回もその期待は裏切られませんでした。

あらすじ:失恋から始まる再生の物語

物語は、主人公の倫子が失恋のショックで声を失い、何もかも失った状態で故郷に戻るところから始まります。彼女は料理好きの腕を生かして「食堂かたつむり」を開き、訪れる人々に一日一組の特別な料理をふるまいます。

印象に残ったシーンと思い

物語の中で特に心に残ったのは、母親とのわだかまりが少しずつ解けていく過程や、母が飼っていた豚のエルメスをさばくシーンです。命をいただくことの重みや、母の想いを知ることで倫子自身が成長していく姿が丁寧に描かれています。

『ライオンのおやつ』との共通点

実はこの作品を読みながら、以前読んだ小川糸さんの『ライオンのおやつ』を思い出しました。『ライオンのおやつ』は瀬戸内海のホスピスが舞台で、そこでも人の生と死、心の再生が描かれ、読んでいるうちに涙が止まらなくなった経験があります。『食堂かたつむり』も同じように、人生の切なさと温かさが交差する物語で、読む人の心に深く響く作品だと思います。

ぜひ、この心温まる物語を手に取ってみてください。小川糸さんの紡ぐ世界は、きっとあなたの心にも優しい灯をともしてくれるはずです。

英語教育2025年8月号を読んで

The English Teachers’ Magazine August 2025 Vol.74 No.5 Taishukan shoten

第1特集 中学校教科書の上手な活かし方 分量増にめげない工夫 第2特集 多様性を大切に 生徒を変える「国際英語」の視点

『ピーナッツ』で味わう英語表現 第5回 今井亮一(立正大学講師)

“X before Y”という表現は「Yより前にX」だから、英語の語順を活かせば時系列順に流れて「Xの後にY」となる。同様のことだがuntilにも言える。”X until Y”は「YまでX」だから、換言すれば「Xすると、やがて」

今月の時事英語 日本文化編 金井さやか(英語講師トレーナー、全国通訳案内士)

毎月楽しみにしているコーナー。蝉の鳴き声はchirping of cicadas, sound of cicadas

段々、メモすることがなくなってきたのは、英語教員の終末に向かっているということなのだろうか?まだまだ勉強することはたくさんあるのに。

「ジュラシック・ワールド〜復活の大地」を観て

ジュラシックワールド復活の大地 ― 息を呑むスリルと感動の2時間

映画批評サイトでの評価が、公開当初よりやや低めだったので「なぜだろう?」と思いながら劇場へ足を運びました。しかし、結論から言えば――かなり面白い!

上映時間2時間、時計を見る暇もなく、あっという間にエンディングを迎えました。

あらすじ

『ジュラシックワールド/復活の大地』は、恐竜たちが人間と同じ地球上で自由に生きるようになって数年後の世界が舞台。人類と恐竜の共存は理想通りにはいかず、食物連鎖の頂点に立つ生物たちとの関係は、緊張と危機に満ちています。

物語は、違法な恐竜取引や企業の思惑が絡み合う中で、オーウェンとクレア、そして成長したメイジーが再び命懸けの冒険に挑む姿を描きます。トリケラトプスの子どもや翼竜、そして巨大な肉食恐竜との遭遇は、観客の心を掴んで離しません。

魅力的なシーンの数々

迫力満点のアクションシーンはもちろん、

  • 息を呑む追跡劇
  • 闇夜に響く恐竜の咆哮に震える瞬間
  • トリケラトプスの子どもが人間に懐く微笑ましい場面

と、緊張と癒しのバランスが絶妙です。恐竜映画にありがちな「ただ怖いだけ」ではなく、生命への畏敬や、仲間との絆も感じられます。

自分を重ねてしまう物語

物語の中で、一人のビジネスマンが仲間を裏切る展開があります。観ながらふと、自分がこの極限状況に放り込まれたら、最後までみんなを信じ、裏切らずにいられるだろうか――と考えてしまいました。

本当は心配しても仕方がないのですが、映画の世界観に深く入り込み、自分を登場人物に重ねてしまうほど没入していた証拠です。

総評

評価が低めだった理由は、もしかするとシリーズの“王道”を守りすぎていることにあるのかもしれません。新しさより安心感、予想外の展開より「これぞジュラシック!」というお約束が詰まっている。しかし、その王道こそがファンにとっての魅力でもあります。

少なくとも私は、大満足でした。シリーズファンなら間違いなく楽しめるはず。ジュラシックワールドは――やっぱり裏切らない!

英語教育2025年7月号を読んで

英語教育2025年7月号 大修館書店 July 2025 Vol.74 No.4

第1特集 プロジェクト、視覚教材、英字新聞で、題材を「自分ごと」にする工夫 第2特集 教員の指導・キャリアを支える 現職教員の大学院での学び 

📘『生成AI活用術研究所 第16回』を読んで:教育の未来を切り拓くツールとしてのChatGPT

大修館書店の月刊誌『英語教育』(2025年4月号)の中から、特に興味深かった記事をご紹介します。

まずは、國學院大学の豊嶋正貴先生による【基礎編】「生成AI活用術研究所 第16回」。この回では、ChatGPTの基本的な機能――ファイルのアップロード、画像生成、Canvasによる文章編成、音声入力、音声モードの利用――についてわかりやすく解説されています。教育現場でのICT活用に悩む先生方にとって、「まずはここから始めてみよう」と思える安心のガイドです。

💬『SLAで答える指導のギモン 第4回』:ペアワークにおける日本語使用はアリか?

続いてご紹介するのは、宮城教育大学の鈴木渉先生による『SLAで答える指導のギモン』第4回。「ペアワークは同じ英語力同士で行った方がいい?」という問いに、第二言語習得(SLA)の視点から丁寧に答えています。

とりわけ印象に残ったのは、「ペアワーク中の日本語使用は必ずしも悪ではない」という点。英語力の低い学習者や年齢の低い学習者が安心して取り組むためには、日本語を部分的に使うことがむしろ効果的であるとのこと。「日本語禁止」ではなく、「どの場面で日本語を使うべきか」を子どもたちと一緒に考える授業設計の大切さに気づかされました。

🔍『英語教育研究のための研究倫理 第4回』:実験における「待機コントロール」という考え方

そして最後に、草薙邦弘先生(県立広島大学)と浦野研先生(北海学園大学)による『英語教育研究のための研究倫理』第4回。教育研究における“統制群”の扱い方について、「介入を行わない群」ではなく「介入の時期をずらす群(=待機コントロール群)」というアプローチを紹介しています。これは被験者への倫理的な配慮と教育的公平性の両立を図るもの。教育と研究の両立を考えるうえで、非常に学びの多い内容でした。