英語教育2025年8月号を読んで

The English Teachers’ Magazine August 2025 Vol.74 No.5 Taishukan shoten

第1特集 中学校教科書の上手な活かし方 分量増にめげない工夫 第2特集 多様性を大切に 生徒を変える「国際英語」の視点

『ピーナッツ』で味わう英語表現 第5回 今井亮一(立正大学講師)

“X before Y”という表現は「Yより前にX」だから、英語の語順を活かせば時系列順に流れて「Xの後にY」となる。同様のことだがuntilにも言える。”X until Y”は「YまでX」だから、換言すれば「Xすると、やがて」

今月の時事英語 日本文化編 金井さやか(英語講師トレーナー、全国通訳案内士)

毎月楽しみにしているコーナー。蝉の鳴き声はchirping of cicadas, sound of cicadas

段々、メモすることがなくなってきたのは、英語教員の終末に向かっているということなのだろうか?まだまだ勉強することはたくさんあるのに。

「ジュラシック・ワールド〜復活の大地」を観て

ジュラシックワールド復活の大地 ― 息を呑むスリルと感動の2時間

映画批評サイトでの評価が、公開当初よりやや低めだったので「なぜだろう?」と思いながら劇場へ足を運びました。しかし、結論から言えば――かなり面白い!

上映時間2時間、時計を見る暇もなく、あっという間にエンディングを迎えました。

あらすじ

『ジュラシックワールド/復活の大地』は、恐竜たちが人間と同じ地球上で自由に生きるようになって数年後の世界が舞台。人類と恐竜の共存は理想通りにはいかず、食物連鎖の頂点に立つ生物たちとの関係は、緊張と危機に満ちています。

物語は、違法な恐竜取引や企業の思惑が絡み合う中で、オーウェンとクレア、そして成長したメイジーが再び命懸けの冒険に挑む姿を描きます。トリケラトプスの子どもや翼竜、そして巨大な肉食恐竜との遭遇は、観客の心を掴んで離しません。

魅力的なシーンの数々

迫力満点のアクションシーンはもちろん、

  • 息を呑む追跡劇
  • 闇夜に響く恐竜の咆哮に震える瞬間
  • トリケラトプスの子どもが人間に懐く微笑ましい場面

と、緊張と癒しのバランスが絶妙です。恐竜映画にありがちな「ただ怖いだけ」ではなく、生命への畏敬や、仲間との絆も感じられます。

自分を重ねてしまう物語

物語の中で、一人のビジネスマンが仲間を裏切る展開があります。観ながらふと、自分がこの極限状況に放り込まれたら、最後までみんなを信じ、裏切らずにいられるだろうか――と考えてしまいました。

本当は心配しても仕方がないのですが、映画の世界観に深く入り込み、自分を登場人物に重ねてしまうほど没入していた証拠です。

総評

評価が低めだった理由は、もしかするとシリーズの“王道”を守りすぎていることにあるのかもしれません。新しさより安心感、予想外の展開より「これぞジュラシック!」というお約束が詰まっている。しかし、その王道こそがファンにとっての魅力でもあります。

少なくとも私は、大満足でした。シリーズファンなら間違いなく楽しめるはず。ジュラシックワールドは――やっぱり裏切らない!

英語教育2025年7月号を読んで

英語教育2025年7月号 大修館書店 July 2025 Vol.74 No.4

第1特集 プロジェクト、視覚教材、英字新聞で、題材を「自分ごと」にする工夫 第2特集 教員の指導・キャリアを支える 現職教員の大学院での学び 

📘『生成AI活用術研究所 第16回』を読んで:教育の未来を切り拓くツールとしてのChatGPT

大修館書店の月刊誌『英語教育』(2025年4月号)の中から、特に興味深かった記事をご紹介します。

まずは、國學院大学の豊嶋正貴先生による【基礎編】「生成AI活用術研究所 第16回」。この回では、ChatGPTの基本的な機能――ファイルのアップロード、画像生成、Canvasによる文章編成、音声入力、音声モードの利用――についてわかりやすく解説されています。教育現場でのICT活用に悩む先生方にとって、「まずはここから始めてみよう」と思える安心のガイドです。

💬『SLAで答える指導のギモン 第4回』:ペアワークにおける日本語使用はアリか?

続いてご紹介するのは、宮城教育大学の鈴木渉先生による『SLAで答える指導のギモン』第4回。「ペアワークは同じ英語力同士で行った方がいい?」という問いに、第二言語習得(SLA)の視点から丁寧に答えています。

とりわけ印象に残ったのは、「ペアワーク中の日本語使用は必ずしも悪ではない」という点。英語力の低い学習者や年齢の低い学習者が安心して取り組むためには、日本語を部分的に使うことがむしろ効果的であるとのこと。「日本語禁止」ではなく、「どの場面で日本語を使うべきか」を子どもたちと一緒に考える授業設計の大切さに気づかされました。

🔍『英語教育研究のための研究倫理 第4回』:実験における「待機コントロール」という考え方

そして最後に、草薙邦弘先生(県立広島大学)と浦野研先生(北海学園大学)による『英語教育研究のための研究倫理』第4回。教育研究における“統制群”の扱い方について、「介入を行わない群」ではなく「介入の時期をずらす群(=待機コントロール群)」というアプローチを紹介しています。これは被験者への倫理的な配慮と教育的公平性の両立を図るもの。教育と研究の両立を考えるうえで、非常に学びの多い内容でした。

“DIE WITH ZERO〜人生が豊かになりすぎる究極のルール〜”を読んで

「思い出づくりこそ人生」──ある本との出会いがくれた、生き方の再確認

ある一冊の本を読んで、深く考えさせられた。きっかけは些細なものだったが、ページをめくるうちに、自分のこれからの生き方にまで想いが及んでいた。

本の冒頭に、こんな言葉が書かれていた。

「人生で一番大切なのは、思い出づくり。」

その言葉は、読了後もずっと胸に残り続けている。そして何よりも、この言葉が本の締めくくりにももう一度現れることで、読む者の心をゆっくりと、でも確実に打つ。

● 本を読んで、実際にしてみた3つのこと

読後、私はいくつかの行動を起こした。

① 長寿年金について調べる

── すぐにパンフレットを手に入れ、ネットで情報を収集した。

② 「人生時計」のアプリをダウンロード

── 自分が90歳まで生きると仮定し、現在の時刻を換算してみた。

私の「人生時計」はすでに15時50分。残された時間の重みが、数字として迫ってきた。

③ 財産は“今”渡すことにした

── 死後に遺産を渡しても、子どもたちは高齢に近い。

結婚し、孫が生まれた今がちょうど一番お金が必要な時期。だからこそ、元気な今、彼らが最も必要としている今に渡す決意をした。

● 「思い出づくり」は今この瞬間の積み重ね

実は私も、55歳ごろから(四女が琉球大学に入学した年)、仕事と遊びの境界が曖昧になってきた。むしろ、「遊びの合間に仕事をしている」ような感覚さえある。

  • ライブ
  • 相撲観戦
  • プロ野球やラグビー
  • マラソン大会出場
  • 海外旅行(パリ五輪、ハワイ、サイパン、UAE)
  • 沖縄への旅
  • ボランティア活動

これらを連れ合いとともに体験し、「今しかできないこと」に時間とお金を惜しまず投資してきた。散財しているという自覚はある。だから、「少し控えようか」と話し合ったこともあった。

けれど、この本を読んで確信した。

今、体が元気なうちに、今だからこそできることをしておく。

それこそが、これから先、いつか訪れる“振り返りのとき”に、最も自分を支えてくれる財産になるのだと。

● これからを生きる人に伝えたい

人生には、いつか終わりがある。

だからこそ、「お金」も「時間」も、「今」大切な人のために使うことが、最も豊かな生き方なのだと思う。

思い出は、形がなくても、心に残る。

そしてその思い出が、残された日々をあたたかく照らしてくれる。

この本は、私の背中を優しく、でも確かに押してくれた。

“思い出づくり”こそが人生の核心だと、改めて教えてくれた一冊。

心からおすすめしたい。

「違うんだよ、健司」を指導して

【授業記録】「神回」となった道徳授業の記録 〜友情における“お節介”の価値を問う〜

4月に学年の先生方への見本として道徳の授業を先行実施し、5月には市内公開授業として全校の先生の前で授業を行いました。それ以来、約1か月ぶりの道徳授業でしたが、今回の授業は、図らずも「神回」となりました。

● 導入の問いかけ:「あなたは、友達にとってどんな存在でありたいか?」

「頼ってもらえる存在でいたい」「相談されるような存在になりたい」といった声が多く聞かれ、生徒の中に“友情のあり方”を自分事として捉える土壌ができたことを感じました。

● 教材音読:主人公「僕」の素敵なところと残念なところに注目

本文の音読では、私自身が感情を込めて読み、生徒たちは「主人公の『僕』の残念なところと素敵なところ」に線を引きながら聞くという形式を取りました。読み終えた瞬間に自然と拍手が起きたことが、まずは一つの成功の証でした。

● 印象的な生徒の視点:距離感と“深入り”の対比

「素敵なところ」として、「みんなと距離感をとるところ」「深入りしないところ」という声が出た一方で、健司のように「深入りしてでも支えようとする姿勢」が賞賛されたのが非常に興味深い点でした。

この矛盾に気づいた私は、「どちらのような友達がふさわしいと思うか」と問い返してみました。多くは健司を選びましたが、一定数「『僕』のような距離感を保つ友人が良い」という意見もありました。友情のあり方に“正解”はないということを、子どもたち自身が考え始めるきっかけになったと感じました。

● 考えさせられる発言:「お節介の本当の価値」

「お節介だとわかっていながら、耕平に『言え』と言った健司の気持ちは?」という問いに対しては、

  • 「困っているのに、なぜ言ってくれないんだ」
  • 「もっと頼ってほしい」
  • 「1人で抱えないで、吐き出してほしい」

など、温かな気持ちのこもった意見が多数出ました。

最後に「『僕』が健司からもらった大切なこととは?」と問いかけると、多くの生徒が「態度」「行動」「寄り添う姿勢」など、健司の生き方そのものを挙げてくれました。

● まとめ:「鬱陶しいお節介」も、時には必要

現代では、お節介な存在が減り、無機質な関係性やネット・仮想空間での繋がりが増えています。だからこそ、「鬱陶しい」と思われるほどのお節介をやく存在も、実は今の社会に必要なのではないかという問いを最後に投げかけました。

すると、休み時間には友達同士で集まって、自分の意見を語り合う姿が見られました。教師が立ち去ってもなお続く“語り”こそ、この授業が生徒たちの心に残った証だと思います。

まさに「神回」と呼ぶにふさわしい授業でした。

「28 YEARS LATER」を観て

2025年6月21日(土)9:00から津南イオンシネマで鑑賞。

🎬 『28 YEARS LATER』鑑賞記 — ゾンビ映画を超えた“人類”への問いかけ

Netflixでたまたま『28 WEEKS LATER』がヒットしていて、懐かしさから久しぶりに観直してみた。やっぱり面白い。あの独特の緊張感と疾走感、そして“絶望の中にかすかな希望を探す”あの感覚がよみがえる。

そして偶然、テレビCMでその続編『28 YEARS LATER』が公開中だと知り、勢いで映画館へ。

“感染もの”や“ゾンビ映画”というジャンルでくくられてはいるけれど、この作品の本質はまったく別のところにある。人間の恐怖、生存本能、愛、そして「人類はどこへ向かうのか」という壮大な問い――

物語の3分の2は、“生命の意味”や“大切なものとは何か”を問い続けるような静かな時間だった。

「ゾンビ映画」と一言で片づけるには、もったいない。これは、ウイルスの恐怖の中でなお、人は人であり続けられるのか――そんな、今の時代にも通じるテーマを描いた人間ドラマだと思う。

シリーズを観てきた人にはもちろん、初めての人にも刺さる一本。ラストに残る、静かで深い余韻が忘れられない。おすすめです。

「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」を観て

トム・クルーズの“本気”に震えました──3時間があっという間だった至高のアクション体験

「気がついたら、もう終わっていた」──それが観終わった直後の率直な感想です。

上映時間は3時間。最初は少し身構えてしまいましたが、いざ始まってみると、時間の流れを全く感じさせないほど、物語に引き込まれていました。ストーリー展開はテンポが良く、常に緊張感があり、目を離す暇もないほどでした。

なかでも圧巻だったのは、やはりトム・クルーズのスタントシーンです。ご存じの方も多いと思いますが、彼はスタントマンを使わず、すべて自ら演じているとのこと。その“本気”が、画面越しにビシビシと伝わってきました。

特に、バイクで崖から飛び出してそのままパラシュートで降下するシーンでは、観ているこちらの足の裏がくすぐったくなるような、そんな感覚になりました。手に汗を握るどころではなく、息をするのも忘れてしまうほどの緊張感。まさに“覚悟”の演技でした。

ただ一つ残念だったのは、これまでのシリーズをあまり観てこなかったことです。回想シーンや仲間たちの登場に、何か“思い出”のような雰囲気を感じたのですが、自分には背景がよく分からず、少し置いていかれてしまった印象がありました。シリーズを追ってきた方にとっては、きっと感慨深いシーンだったのだろうと思います。

それでも、作品の完成度は非常に高く、過去作を知らなくても十分に楽しめました。そして、「これを機にシリーズを見返してみようかな」と思わせてくれるほど、強く印象に残る映画でした。

ちなみに、先週観た『国宝』も星4.5以上の作品で、2週連続で大満足の映画体験となりました。上映後、スクリーンを後にしたときの、あの満たされた気持ち。あらためて、「映画って本当にいいな」と感じる瞬間でした。

今週もまた、「観てよかった」と素直に思える時間を過ごせたことに、心から感謝しています。

「英語教育2025年6月号」を読んで

The English Teachers’ Magazine June 2025 Vol.74 No.3 大修館書店

第1特集 「言いたいのに言えない!」に応える 効果的な「言い換え」の指導 第2特集 先生への第一歩 教育実習生をみんなで支えよう

✍️ Circumlocutionとは会話の途中で表現が思い出せなくなった場合、別の言い方で言い表すことである。

英語教育 そもそも談話室 第27回 人前で自分の「推し」を語りたい生徒ばかりじゃない 奥住桂(埼玉大学准教授)

まずは教師が自己開示する 「推し」に限らず、英語の授業では生徒に(特に個人的な)何かを語らせるなら、いろんな配慮や工夫が必要だなあと感じています。例えば、何でもかんでもみんなの前で発表させないで、別室でALTに個別に伝えたり、ライティング活動にして匿名で読み合ったり、みたいな設定にするだけでも、だいぶ心持ちが変わりますよね。あるいは、語った先に何があるのかによっても、取り組み方は変わります。「推し活資金100万円をクラウドファンディングする」という設定なら、自分は100万円を何に使うかを語って聞き手(出資者)を説得するというタスク性が生まれるし、あくまで架空の話という割り切りで、ちょっと極端な面白い話を書く生徒も出てきそう。

児童生徒のやる気に火をつける エンゲージメントを促す授業実践 第3回 教師も子どもも「楽しめる」授業の工夫 藤原剛(神奈川県川崎市立白幡台小学校教諭)

“Jeopardy Labs” *(https://jeopardylabs.com/)という、クイズを集めたとても便利なサイトがあります。たくさんのテーマに沿ったクイズが投稿されており、自分でクイズを作成することも可能です。

児童が集中して意欲的にその活動に取り組むのは、「明確な到達点がある」「頑張った分の達成感が得られる」からです。

https://jeopardylabs.com

文法クイズ 第123回 佐藤誠司((有)佐藤教育研究所代表)

Shohei Ohtani is an excellent baseball player. This is the ball signed by him. 受動態の文を作る際に、(by+人称代名詞)を使うのは、NGと覚えておくと良い。

「カラフルな世界で」を指導して

「カラフルな世界で」〜自分らしく生きるということ〜

ファイナルイヤーという節目に、私はひとつの決意をしました。道徳の授業を公開すること。それは、市内の公開授業という形で行われ、校内の先生方はもちろん、初任の年にご指導いただいた大先輩まで、たくさんの方に見ていただける機会となりました。

どの教材を扱うか、自分では決めかねていたところ、道徳担当の先生が「カラフルな世界で」を提案してくれました。井出上漠さんの実話をもとにした教材で、生徒たちにも親しみやすく、まさに「自分らしく生きる」というテーマにぴったりの内容でした。内容項目は、A-(3)「向上心、個性の伸長」。自分の中にある“違い”をどう受け入れ、どう発信していくか。それは思春期まっただ中の生徒たちにとって、とても大切な問いです。

授業の冒頭、「自分らしく生きるって、どんな時?」と問いかけてみました。返ってきたのは、部活動で全力を出すこと、趣味を楽しむこと…どれも素直な答えでしたが、まだどこか“表面”をなぞっているようにも感じました。

次に、私は教科書の本文を、心を込めて朗読しました。漠さんの、心に秘めた葛藤と勇気が、静かに教室に流れていきます。生徒たちには「主人公で残念だと思うところ」「素敵だと思うところ」に線を引かせました。

今回、私はあえて、これまでの定番の授業構成を変えてみました。本文の“人間理解”の部分だけをじっくりと掘り下げ、「漠さんがお母さんに悩みを打ち明ける場面」に焦点をあてました。あの一言——「わたし、女の子として生きていきたい」——には、どれほどの勇気が詰まっていたことでしょう。その場面の挿絵が教科書にはなかったため、私はAIに依頼して、静かに寄り添う母と漠さんの姿を描いてもらいました。自分らしく生きるということの象徴的な場面です。(↓参照)

そして、授業は思いがけない方向へと深まっていきました。

「自己を見つめる」場面では、生徒たちが次々に自分の話をしてくれたのです。

「部活動で悩んだこと」「お母さんとの関係」——

どれも、それぞれの“カラフルな世界”がそこにありました。

授業の締めくくりに私が話をしようとしたその時、ある生徒が手を挙げました。

「どうしても、今言いたいことがあります」と。

彼はこう語り出しました。

「1・2年生のときの自分は、自分らしくなんて全然いられなかった。でも、3年生になって学級委員やリーダーをやらせてもらって、ようやく“自分らしく”生きていいんだって思えるようになったんです。そんな自分を信じてくれた先生方に、ありがとうを伝えたかった。」

その瞬間、教室は静まりかえり、空気が一段と澄み渡ったように感じました。涙をこらえるのが精一杯でした。

授業後、助言者としていらしていた河合先生から、こんなお言葉をいただきました。

「いい授業でした。ここまで生徒理解ができている先生は、なかなかいません。私はこれまで、三重県一の先生だと思っていたけれど、今日、岐阜県を含めても、あなたがいちばんの先生だと思いましたよ。」

それは身に余るほどの言葉でしたが、何よりも嬉しかったのは、生徒たちが「自分らしく生きること」について、本気で向き合ってくれたこと。そして、自分の経験や思いを、言葉にして誰かに伝えようとしてくれたことです。

「カラフルな世界で」——それは、他人と違っていてもいい、ありのままの自分を認め、そして誰かとつながる勇気をくれる物語でした。

私たちの教室もまた、同じようにカラフルで、そしてあたたかい世界であってほしい。

最初、こんな画像になったが、何度かAIとやり取りしているうちに、↓のような絵にしてくれました。たぶん、その時のことを考えると、こうなるのでは無いかと思い、その絵を使うことにしました。

どことなく、自分の少年時代みたいな顔になっていて、親近感を覚えました。

第3学年A組 道徳科学習指導案

日時  令和7年5月15日(木)

                          指導者 教諭 森 雅也

1.主題名「自分らしく生きる」(A-(3)向上心、個性の伸長)

2.ねらいと教材

(1)ねらい

自分の好きなことは自分の独自性であり、かけがえのない自分を伸ばすことで人生が輝いていくことの自覚をすることで、自分らしい充実した生き方を追求しようとする態度を育てる。

(2)教材

  教材「カラフルな世界で」:出典「あすを生きる」3年(日本文教出版)

(3)主題設定の理由

① 指導内容について

 人は、一人ひとりが他者とは異なる個性、独自性をもっている。これらには「性の在り方に対する認識」も含まれており、それは個々人の人格に密接に結び付いているものである。性に関わる事柄も含めかけがえのない自分を肯定的に捉えることで、お互いの個性や人格を尊重しながら、自分らしい充実した生き方が追求できるのである。

  ② 教材について

 主人公・井手上漠さんは、男女の区別が増える小学5年生の頃から、自分の好きなことを封印し、モノトーンの世界で生きることを選んだ。しかし、母はその悩みに気づき、話を聞き、「漠は漠のままでいいんだよ。」と受け入れてくれた。井手上さんの「自分らしく生きよう」という意思と選択、そして応援してくれる人の存在を押さえながら、生徒に自分自身のこれからの生き方について考えさせたい。

  ③ 生徒について

 中学3年生は、自分らしい生き方に悩みながらも、卒業後の進路を考えなければならない時期である。これまでの経験から、他者との関わりの中で自分らしさに気づけた生徒もいるだろう。多様性を理解し視野を広げ、尊重し合うことで、自分らしい生き方に対する考えをさらに深めさせたい。

 教材に関しては、多感な時期であるため、テーマによっては興味を持つきっかけが偏った受け止め方に繋がる可能性も考えられる。また、自身の性的指向について悩み始めている生徒もいることを踏まえ、保健体育の授業や、総合的な学習の時間に実施した助産師による講演などの内容とも連携しながら、適切な考え方や感じ方を育む指導に努めたい。

3.学習指導過程

 学習指導過程指導上の留意点
導入 2分あなたが、普段生活をしていて、「自分らしく」生きていると思えるのは、どんな場面だろう。 ・好きなことをやっているとき・親から勧められても、自分を貫いたとき・勉強しなければならないのに、ゲームやSNSをしているとき・親に反抗して自分の思い通りにできたとき○導入の場面で、生徒たちに共感させる。  
展開前段 14分           展開前段 9分                      展開前段 12分 1教師が範読する。「井出上漠さんの心の弱さが出ているところ、すてきだなと思うところを見つけて、あとで発表してください。」 2「カラフルな世界で」を読んだ感想を話し合う。〇心の弱さ  ・みんなと違っていたらダメなんだと思ったこと・髪を切って、女子と距離を置き、男子の集団と一緒にいたこと・自分らしさを押し殺し、好きでもない話題に乾いた笑いを浮かべていたこと・クラスの隅っこにいて、周りの目ばかり気にしていたこと・自分自身を否定していたこと 〇いいなと思うところ・お母さんの言葉を聞いて、自分を肯定できるようになったこと・自分のことを大切にしようと思えたこと・上を向いて、自分らしさを磨くようになり、楽しそうに生きられるようになったこと        3 井出上漠さんがモノトーンの世界に生きていたときの行動について考える。(人間理解)〇「漠さんは幼少期にウエディングドレスを見て感動したり、「かっこいい」より「かわいい」にときめく子どもだったのに、中学生になってもクラスの隅っこにいました。どんな気持ちでクラスの隅っこにいたのだろう。・本当の自分ではない。・まわりに合わせるのがつらい、・こんな自分なら、死にたい。・だれも自分のことをわかってくれない。      4 問題について考え議論する。(価値理解)〇そんなに悩んでいた漠さんが、お母さんの言葉がきっかけで、自分らしく生きられるようになったのはなぜだろう。」・ 自分が好きなことを大切にするようにしていたから。・ 幸せで自分らしくいられることをしていたから。・ 上を向いて自分らしさを磨くようになり、楽しそうに生き始めたから。○教材を範読する前に、読む視点を伝える。○自分の考えをもたせ、ペアで交流する。時間を決めてペアワークを3回行う。○時間をかけすぎないようにすること(4~5名程度の指名にする。)〇感想を生かして基本発問につなげたい。  〇「いいな」と思うところは、価値理解へとつなげていきたい              ○全体交流で多様な考え方を引き出した後、「あなたなら、どの気持ちが強いですか。」と問いかけ、それを聞いて、自分はどんな考えになっているかを確かにする。(少数の考えをとりあげて「この気持ちについてどう思う?」と問いかける。)○「あ、そうだった、そうだよね。」と言う人がいる、ことも気づかせる。 〇モノトーンについては、教師から説明する。 ○読み取りにならないように、全体交流の発言を板書で整理し、他の発言と比べて最初の自分の考えがどうかわったかを話すようにする。<考え、議論する>
   展開後段 9分 5 自分について振り返る(自己を見つめる)〇 あなたは、漠さんのように、自分らしく生きてきましたか。・ 周りのことを気にしていて、本当の自分をだせないでいた。自分をもっとださないと前にすすめない・ 自分の信じた道があるけれど、友達を意識しすぎて、なかなか自分のしたいことができなかった。もっと、自分を信じていろいろなことに挑戦したい。○話し合いをもとに、自分の意見をまとめ、発表させる。○個人でしっかりと見つめるために、時間を長めに設定する。〇これまでの自分の経験を振り返らせる。○「前はこう思っていたけど・・・。」「○○さんの意見を聞いて・・・。」「私の経験から・・・。」と価値観の変化を添える。
終末 4分〇自分の体験談について、話す。 ○「授業者の幼少から高校生まで、あまり自分らしく生きてこれなかった」ことを話す。○「自分の信じる道に着実に生きて、努力を惜しまないことが大切であること」ことを押さえる。

「国宝」を観て

🎬映画レビュー|『国宝』— 日本の伝統と魂が響き合う、圧巻の3時間

📅鑑賞日:2025年6月7日(土)@津南イオンシネマ

たぶん、この映画――『国宝』は、2025年の日本アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演男優賞を独占するのでは?とすら思える傑作でした。

私は土曜日の午後、津南のイオンシネマでこの作品を観たのですが、約3時間という邦画としては異例の長尺にもかかわらず、まったく時間を感じさせない没入感。これは、物語の深さもさることながら、演技、演出、美術、音楽すべてが高次元で融合していたからこそだと思います。

歌舞伎界を舞台に、血筋と芸の本質を問う壮大な人間ドラマ。
江戸の伝統を背負う名門に生まれた若き歌舞伎役者(吉沢亮)が、女形として芸の頂点を目指す中で、芸とは何か、伝統とは何か、血筋とは何かに苦悩しながら成長していく姿を描く。
彼の周囲にはライバル、師匠、支える裏方たちなど、名優たちが演じる登場人物が絡み合い、伝統芸能の世界の厳しさと美しさがリアルに映し出される。

🎭主演・吉沢亮の圧巻の演技

何よりも語らずにいられないのは、吉沢亮の女形としての演技のすばらしさです。

美しさだけでなく、その所作、踊り、目線、すべてに「芸に生きる覚悟」が宿っており、観ているこちらの心まで震えました。これが“血筋”によるものなのか、それとも稽古に裏打ちされた努力なのか。映画の大きなテーマでもあるその問いが、観ている私たちにも重く、深く響いてきます。

🏮伝統芸能の真髄に触れる

歌舞伎や能といった日本の伝統芸能は、普段なかなかじっくりと観る機会が少ないものですが、この作品を通じて、それらがただ受け継がれてきたものではなく、「芸に生きた人間の魂」によって築かれてきたということが伝わってきます。

幼少期からの厳しい稽古の積み重ねが、表現のすみずみにまで染み込んでいることがわかる。その姿に、敬意と感動しかありませんでした。

🔚まとめ:かなりのおすすめです!

伝統とは何か。血筋とは何か。芸の神髄とは何か。
この映画はそれらを、押しつけがましくなく、しかし確かな熱量で語りかけてきます。
日本映画史に残る名作になるのではないかと、私は本気で思っています。

映画館を出たあと、しばらく余韻から抜けられませんでした。
「国宝」――その名に恥じぬ、まさに“魂の芸”が詰まった一本です。

これは観るべき。いや、“観なければならない”映画です。