「はじめての英語史」を読んで

「英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史」堀田隆一 2016年初版 研究社

・ アグロの土地(Englaland)」が転じて「イングランド(England)」と呼ばれることになった。

古英語や中英語の子音は後の時代に特定の環境において失われ、その痕跡は少なからぬ単語の綴字において、黙字として現在に伝わっている。例として、climbやlistenには、bとtが発音されない綴字として含まれているが、両者は古英語では発音されていた。

・基本はaだが、母音で始まる後にはanを用いる」という説明を逆転させて、「基本はanだが、次に来る語が子音で始まる場合にはaを用いる」不定冠詞a(n)は、歴史的には数詞oneの弱形に過ぎず、もともと語尾にn音を持っていたからである。次に来る語が子音で始まるときには、子音連続を避けるかのように、nの脱落したaがしばしば用いられるようになった。不定冠詞という意味的に弱い語類において、もともと語形が弱化する傾向にある。不定冠詞、代名詞、前置詞のような、通常強勢の置かれない弱い語類において、子音で始まる後の前でnが脱落することは、英語史上稀なことではない。

・名前動後とは。2音節後は、名詞でも動詞でも強勢が第1音節に置かれる。comfort, accessのように。本来ある品詞に限定されていた語が、別の品詞として使われるようになる過程を、品詞転換と呼ぶ。

・oftenで、[t]が発音されなくなったのは、3子音の連続において、中音が脱落するという、英語発音の一般的な傾向と一致する現象である。他追えば、castle, Christmas, listen, softenなどは[t]は書かれていても、発音されない。

・なぜfiveに対してfifthなのか。もともと、5はfifで、その序数がfifth。fifの形容詞系がfife(フィーフ)→five(フィーヴ)→five(ファイヴ)へと発音しやすいように語形が変化した。wolf→wolves

・goの過去形がwentになるのは。wentの現在形はもともとgoではなく、wend(向ける、向かう)だった。現在ー過去ー過去分詞形のように一定のパラダイムがあるとき、そのいずれかのスロットに、まったく語源の異なる形態が入り込むことがある。これを補充法という。good-better-best, bad-worse-worstのように。

・英語には未来時制はない。その代わりに助動詞を使って意志や義務を表す表現はあった。しかしながら、willやshallなどの本来的に法的な機能(「~したい」「~すべき」)などの心的態度を表す機能)をもつ助動詞が、意志や義務の意味を弱め、単純に時間としての未来を表すよう方へと文法化したことにより生じた。

・なぜ英語人名の順序は「名+姓」なのか?昔は名字がなかったため、Johnだけだったが、地名や職業名などを適当な識別子として用いて、「○○のジョン」などとよばれるようになった。この場合、X’s Johnではなく、John of Xが普通だった。通常England’s kingとは言わずthe king of Englandというとおりである。John of carpenterから、John Carpenterになる。