英語教育2023年10月号を読んで

英語教育2023年10月号 大修館書店 October 2023 Vol.72 No.8

Chat GPTプロンプト研究所 定期考査用読解問題作成プロンプト(所長 豊嶋正貴 文教大学附属中学校・高等学校教諭)

P.11 参照

Question Box 英語が苦手な生徒へのアプローチ 田村岳先生(宇都宮大学助教)の回答 「言語活動」とは、コミュニケーションを図る目的・場面状況があり、それらに応じて、生徒たちが自分の本当の考えや気持ちを伝え合うような活動を指します。例えば、来日まもない上に、学校のある地域のことがまだわからずにいるALTが、月末に地元を回ってみたいと言い、地元でいくべきトロ子が知りたい、と切実に生徒に語りかけててきたとする。そもそも、誰に向かって、何を、なぜ伝えるのか、どのように伝えるのかを生徒たちが実感できるよう、目的・場面・状況を構想することを大切にする。

話すこと[やり取り」の評価・指導のあり方をめぐって 関典明(成城学園参与・成城大学非常勤講師)

次の東海北陸公立中学校英語教育研究大会の発表に繋がる。pp.68-69参照

英語教師に必要な3つの力とは、[第5章]授業改善に役立つ、とっておきの習慣 中嶋洋一(英語“わくわく授業“研究所代表)

協働学習で必要になるのは、利他(相手意識)の心です。学校生活の中で、無理なく利他の心を育てるには、双方向、啐啄の姿勢が望まれます。

「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力」をぜひ買って読んでみよう。

「ハンチバック」を読んで

「ハンチバック」市川沙央著 文藝春秋 第169回芥川賞受賞

本の帯には、「井沢釈華の背骨は右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。両親が終の住処として遺したグループホームの、十畳ほどの部屋から釈華は、某有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。ところがある日、グループホームのヘルパー・田中に、Twitterのアカウントを知られていることが発覚しー。」とある。

のっけから性的な興奮を感じさせる描写が続く。「こんな物語なんだ!?」と先行きがどうなるのか全く想像がつかなかった。「芥川賞受賞」「遠位性ミオパチーの作者」という殻と前評判に取り憑かれてしまっていて、思い込んでしまっていた。

題名の「ハンチバック」とは、「背の曲がった」という表現を表し、主人公の女性(作者)の体の状態でもある。ミオパチーを発症してから、病気の進行とともに、背がS字に湾曲している姿を描写している。冒頭の性的な描写やラストの風俗店での描写は、そうなりたいと夢見ている願望を文書にし、雑誌、ブログ、ネット記事などに投稿している仮の姿である。

印象的な部分が数カ所ある。

完成された姿でそこにずっとある古いものが嫌いだ。壊れずに残って古びていくことに価値のあるものたちが嫌いなのだ。生きれば生きるほど私の体は歪に壊れていく。死に向かって壊れるのではない。生きるために壊れる。生き抜いた時間の証として破壊されていく。そこが健常者のかかる重い死病とは決定的に違うし、多少の時間差があるだけで皆で一様に同じ壊れ方をしていく健常者の老化とも違う。本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の体は生きるために壊れてきた。生きるために芽生える命を殺すことと何の違いがあるだろう。

「生きるために壊れる。」というセリフがとても印象的である。とても苦労して努力して毎日懸命に生き抜いた結果、いろんな部分がすり減って壊れていく。だから、美術館などの所蔵されている年月を得た完成品が嫌いなのだろう。美しい姿で残っているから。しかも歴史を重ねれば重ねるほど価値が出る。作者の「生き抜いた時間の証として破壊されていく」こととは全く正反対である。

知り合いで作者と同じ「遠位性ミオパチー」の方がいる。とても素敵な絵を描かれていて、市主催のお祭りのポスターにもなっていた。少しお話をお聞きする機会があったのだが、体が思うように動かせないことがある分、「毎日楽しく生活していますよ。」と笑顔で会話が本当に上手だった。いろんなことに挑戦してみようとする好奇心とやる気に満ち溢れていた。「ミオパチー」の病気の説明もしていただいた。

壁の向こうの隣人が乾いた音で手を叩く。私と同じような禁疾患んで寝たきりの隣人女性は差し込み便器でトイレを済ませるとキッチンの辺りで控えているヘルパーを手を叩いて呼んで後始末をしてもらう。世間の人々は顔を背けて言う。「私なら耐えられない。私なら死を選ぶ」と。だがそれは間違っている。隣人の彼女のように生きること。私はそこにこそ人間の尊厳があると思う。本当の涅槃がそこにある。私はまだそこまで辿り着けない。

とても印象に残ったフレーズ。人間の尊厳とは一体何だろう。

自らで命を経ってしまう人がいる中で、天命を全うするまで必死に生きること。どんな状態であろうが、なりふり構わず、生に執着すること。それで理想郷に辿り着ける。作者はまだその世界を知らない。私も作者の立場ならそこまで考えられない。きっと勇気が湧いてこない。

「街とその不確かな壁」を読んで

「街とその不確かな壁」村上春樹著 新潮社 2022年初版

やっと読める。待って待って待ち侘びてやっと新刊が出た。すぐに購入したのに、もったいなくて読めなかった。これは村上春樹の小説を読む時はいつもそうだが、すぐに読みたいのに、もったいなくて読めなくて、しばらく時間が経ってしまう。読んでいる最中は、面白くて、「あと何ページしかない!!」と、本とのお別れを惜しんでドキドキしてしまう。

ASDと思われる、イエローサブマリンのパーカーを着た少年。現世では生きづらいから、高い壁のある時間の止まった場所へ行くことになる。現世ではできないことが多くても、その世界では話すことも意志疎通もできる。夢読みの仕事も継承することができる。どちらの世界が本当だとか嘘だとか、それは関係ないようだ。どちらの世界も存在する。生きづらい世界で生きていくよりは、家族ですら会えなくなってしまったとしても、生きやすい世界に行く方がいいのではないか。ASDの子達を見ていると、素晴らしい世界を持っていて、その世界は誰にもじゃまされない禁断の場所のようで、でも社会で生きている以上、自分だけの世界で生きていることは許されないばかりか、事あるごとに健常の人から(または先生や家族などの権力を持った人たちから)侵食されてしまう。きっと誰にも邪魔されず、自分だけの世界で自分が良いと思うことだけやっていい場所、誰にも侵食されず、誰にも評価されることもなく、堂々と生きて行ける場所が高い壁に囲まれて時間の止まった場所なんだろうと思った。

私もASDである。幼少時代から今でも生きづらいことがある。自分がやりたくて、自分で良かれと思ってやっていることも非難の対象になったり、妬み嫉みの対象になったりする。人から評価されなくてもいい。好きなことを頑張ってやって、その創造が形となって残ってくれて、それを自分で眺めるのが好きだ。私は家族と離れるのは嫌だけど、その高い壁の世界に憧れはある。

この小説には、LGPTQIA +の人物が登場する。この中では、AのAsexual(アセクシュアル)で、「生まれつき、性的欲求がない人」になる。主人公の男性と福島県のある村で知り合うわけだが、生物学的には女性であるけれど、性的欲求がない。この人もこのことにより、生きづらい人生を送ってきた人物である。

主人公も実体を伴う私と実体と引き剥がされた影の私がいて、現世と高い壁のある世界とを両方が存在している。どちらがどちらで暮らしているのか、物語後編ではわからなくなってします。

これ以上書くとネタバレになるので、ストーリーは書かない方がよい。ただ、村上春樹本人も40年前に「文學界」に寄稿したときは作家として腕がなく、中途半端に雑誌に出してしまったことを後悔しておられて、40年越しに続きも含めて書けたことをとても喜んでおられた。「ノルウェーの森」よりももっと前に、アイディに着想を得たものなので、今の彼の真髄とは少し違うような気もするが、ASDやLGBTQIA +が出てくるところなどは、新しい時代の流れも組み込まれている。

かなりおすすめです。

英語教育2023年8月別冊号を読んで

英語教育2023年8月別冊 大修館書店 August 2023 Vol.72 No.6

英語教師のためのアナログ✖️デジタル活用ガイド 児童生徒の学びと授業・校務ーICTで支えるために

英語教育を年間購読しているので、別冊購入の案内が毎回届く。いつもならほとんど注文しない。連れ合いが年間購読の振込用紙と間違えて、振り込んでしまったため、自宅に届いてびっくりした。ICTは必要最低限度しか使用しないため、「こんな雑誌必要ないな。」と思い、読まないつもりだったが、トイレにおいて毎日4ページずつ読み進めて行ったら、これが結構面白くて結局読破してしまった。こんな使い方もあるんだなと関心ひとしきりだった。やはり、食わず嫌いは良くない。

画像生成AIソフトで英語の表現力・描写力を高める 髙橋誠史(秀明大学講師)

Canava社のText To Image(TTI)というアプリを使用し、英語による描写力を高める方法。無料で1日百枚までの画像を生成可能である。

https://www.canva.com/design/DAFwp3_8iOY/8VOZgoTm8J-UDEW_2TNF9g/edit?utm_content=DAFwp3_8iOY&utm_campaign=designshare&utm_medium=link2&utm_source=sharebutton

https://www.canva.com/design/DAFwp3_8iOY/view?embed

“A cat sleeping on the table‘で入れてみると、上のような画像を生成してくれた。

対話型AIで教育方法・技術はこう変わるーChatGPTという相棒との付き合い方 豊嶋正貴(文教大学附属中学校・高校教諭)

教材作成と教材研究の際に役立つプロンプト 英文の生成 〇〇について✖️✖️✖️語で英語を生成してください。 単語帳の生成 文章の重要語句の単語帳(英語と日本語)をテーブル形式で作成してください。 CEFRレベル(A1〜C2)に合わせた文章の書き換え CEFR Level〇〇で英文を書き直してください。 和訳の生成 わかりやすい日本語で直訳を生成してください。 内容理解問題と解答解説の生成 上記の英文について、内容理解問題(4択)を5題英語で作成してください。最後に解答と解説も生成してください。 英文内容を表にまとめた形式で生成 英文の内容を、項目ごとに分け、まとめたものをテーブル形式で生成してください。

CAMBRIDGEの無料デジタルツール 青山智恵(Cambridge University Press & Assessment Solutions Development Consultant)

CEFRレベルチェック “Test Your English”(レベルチェック)で英語力診断ができる。自分のCEFRレベルを診断することができる。 個別最適な学びを支援するツール “Exam LIft”はA2からB2までの3種類のレベルに対応したアプリで、まるでゲームをするかのような感覚で、毎日約10分間✖️30日間の隙間時間を使って、4技能をバランスよく学習できる。1日1回の利用であれば無料。そのほか、AIが無料で英作文を添削する”Write & Improve”、話す力を判定する”Speak & Improve”は、自主学習を支えるお助けツールとして世界各国で活用されている。

気づきを引き出す文法指導の助っ人DDLアプリ 西垣知佳子(千葉大学教授)

生徒から探究的な学びを引き出す文法学習アプリh-DDL(https://h.do-study.org/)の紹介。生徒がターゲットの文法を含む英文をコーパスから検索し、中高レベルの文法項目を使用した多様な英文に触れ、英語のルールに気づいて学ぶ。

https://h.ddl-study.org

英語教育2023年9月号を読んで

英語教育2023年9月号大修館書店 September 2023 Vol.72 No.7

第1特集 1人ひとりの学びに寄り添う 学力差に対応する指導 第2特集 生成AIがひらく 言語・教育研究の地平 

私のメモ

ジグソーリーディング ある一つの物語を複数の不完全な物語位分け、それらをジグソーパズルのように組み合わせることで物語を完成させる活動である。

生成AIによるライティングのフィードバック支援

ChatGPTへ「あなたは日本の高校の英語教師です。下記の文章を添削してください。」とプロンプトを入れると、添削してくれる。

さらに、「####次の英作文を添削してください。表形式にしてください。第1列目は元の英作文、第2列目は正しい英文、第3列目は日本語による解説、第4列目には点数(100点満点)、第5列目は復習すべき英文法の項目について書いてください。####」と入れると、英作文学習・指導での活用になる。

推し bias→Who is your bias in this group?

英語教育2023年8月号を読んで

英語教育2023年8月号 大修館書店 第1特集 忙しい毎日の中で・・・「教師の英語学習」を豊かにしよう 第2特集 誌上シンポジウム 英語スピーキングテストについて考えてみよう

ICT活用の大ワザ・小ワザ 第17回音声の編集 高橋有加(広島大学助教)

Audacityという無料のソフトウェアを使った音声の編集についての紹介 音声の録音・保存、音声の切り貼り・コピー・削除、無音の挿入・ノイズの低減、部分的な音量の増幅などが機能。

https://www.audacityteam.org/download/からダウンロードできる。

Otterと言う文字起こしアプリとELSAという発音練習アプリがある。

英語教育2023年7月号を読んで

英語教育2023年7月号 大修館書店 2023 Vol.72 No.4

第1特集 児童生徒の思考力を伸ばすために 「発問」の技術を磨く 第2特集 文字指導✖️教材作成 お助け誌上ワークショップ 第3特集教師の成長を支える大学院での学び

英語授業✖️デジタルでしたいこと、できること 第4回マルチモダリティを活用しよう バトラー後藤裕子 佐橋恵子 岡澤永一先生

PhotoSpeakというアプリがある。それは、アプリ内のカメラで撮影下絵や物や人物に、使用者が録音した音声を追加することができ、しかも顔の動作が自動で追加され、まるでその対象物が本当に話しているかのように演出できる。受動態を学習する教科書の単元で、日本の伝統文化について紹介するというまとめの動画作成をPhotoSpeakを使用するといい。

教科書本文をもとに教師と生徒のやりとりを促す発問とは 田中武夫(山梨大学教授)

テキストで述べられている事実を確認するような発問は事実発問(fact-finding questions)。テキストに直接述べられていない情報を推測させる発問は推論発問(inferential questions)。読んだことをもとに生徒の考えや経験を引き出す発問は、評価発問(evauative questions)。

文字指導✖️教材作成ワークショップ質疑応答とアーカイブ動画のご紹介 編集部

英語の文字を書くことに少なからず抵抗感がある子どもを指導する先生へのアドバイス動画(動画:株式会社モリサワご提供)