「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力ー読解力・要約力・編集力ー」を読んで 9

「英語教師の授業デザイン力を高める3つの力ー読解力・要約力・編集力」中嶋洋一編著 大修館書店(2023年)

「授業をあえて「未完成」にする 7割の準備、3割の「余白」が対話とこだわりを生む」

「遊び心」が学習者ファーストの授業を作る

対話を楽しむためには、発問の質にもこだわりが必要です。1つしかない正解を求める事実発問だけではなく、推論発問や評価発問を、バランスよく取り入れます。「もっと聞いてみたい」「伝えたい」という思いが溢れます。”What do you think?”や“How do you feel now?”と問いかけながら、即興で思いを紡ぐ場面を作ります。生徒と即興でやりとりを楽しむ遊びの時間を設定します。その遊びの時間に出会った表現こそが、生徒の記憶に残る言葉として定着していきます。事前の授業準備は7割程度にとどめ、残りを生徒に委ねる時間にし、言葉を紡ぎ合うことを楽しみます。「7:3」という割合は、「黄金比」と呼ばれ、即興で紡ぐ「3割」が、「7割」の学びの質を高め、言語材料や表現が「自分の言葉」として定着する大切な時間になるのです。

「遊び」は生徒の学びを後押しする

授業に3割の「ゆとり」を設ける目的は、生徒が「話したい、伝えたい!」と主体的に取り組む活動を仕組むため。生徒がじっくり考える「ゆとり(=遊び)の時間」があることは、安心して「わからなさ」に向き合う時間があることだとも言えます。「言いたいことはあるけど、どう言えばいいかわからない」というモヤモヤ感を仲間と共有し、考えることで生まれる「そうか!」は「思考を深めるのりしろ」となります。

「題材に惚れ込む」ことで、生徒が興味を持っていることと絡め、はっと顔が上がるような情報を探し、問いを考えること。

「遊び心」のある課題が生徒の心を揺さぶる

①対話に必然性が持てるような課題を工夫すること ②生徒が自ら思考したくなるような問いを立てること ③自分なりの答えを伝えたくなり、仲間の表現に触発されて自分の表現力をもっと高めたくなるような介入をすること

「理想のロボットを作ろう」という課題は、「あなたの学校の問題点を解決するために、校長先生に向けて理想のロボットを紹介しよう」とすれば、より身近で具体的に捉えやすくなる。

4−1 「記憶に残る授業」には、「なるほど!」がある 生徒と共に「自己内対話」を深める

児童(生徒)一人一人のワクワク感を引き出し、事前に構想を練った単元のゴールに向かって、活動と活動をつなげます。つぶやきを拾い、もやもや感をあえて引き出し、授業を変幻自在にアレンジしていきます。

4−3「授業の編集」に必要な4大要素(指導案・場面・発問・振り返り)

授業を「編集」するときには4つの要素が必要です。「学習指導案」「場面の設定」「発問の工夫」、そして「振り返り」です。

「編集力」が高い教師は、学習指導案に、「余白」の部分も用意しています。生徒のつぶやきを拾います。教師の遊び心を発揮するのに欠かせないのが、やりとりに必然性を持たせることです。必然性とは、テキストのターゲット・センテンスが、よりオーセンティックな状況、ごっこ遊びではなくリアルな場面で導入されるということ。