
「反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」」草薙龍瞬著 KADOKAWA
『反応しない練習』―仏陀の教えが現代に生きる理由
最近読んだ本、『反応しない練習』(草薙龍瞬著/KADOKAWA)は、久々に心に深く響いた一冊でした。
著者の草薙龍瞬さんは、ただの僧侶ではありません。中学校を中退後、自らの努力で大検(大学入学資格検定)を経て東京大学法学部に進学。その後、インドやタイの大学で仏教を学び、現在は特定の宗派にとらわれず、仏教を現代に生かす活動を続けているという異色の経歴の持ち主です。
反応しないという生き方
本書のテーマはタイトルの通り、「反応しない」。
怒り・嫉妬・不安・妄想――日常の苦しみの多くは、実は外の出来事そのものではなく、自分の心の反応によって生まれているというのです。
著者は仏陀の教えに基づき、悩みを解く4つの手順を紹介しています。
1. 生きることには苦しみが伴う
2. 苦しみには原因がある
3. 苦しみは取り除くことができる
4. その方法がある
この「苦しみの原因」にあたるのが、無駄な反応。
「認められたい」「注目されたい」「愛されたい」といった承認欲が、怒りや不満、嫉妬といった感情を生み出しているといいます。
心を静める3つの方法
著者は、心の状態を整えるための3つの実践を挙げています。
1. 言葉で確認する – 今の自分の感情を言葉にして客観視する。
2. 感覚を意識する – 呼吸や体の感覚に意識を向け、現実に戻る。
3. 分類する – 感情を「貪欲」「怒り」「妄想」の三毒に分けて見つめる。
このプロセスを繰り返すことで、心が穏やかになり、反応に支配されなくなるといいます。
「判断しない」理解がもたらす自由
印象的だったのは、「正しい理解とは、正しいと判断しない理解である」という言葉。
人は「自分が正しい」と思うとき、そこに慢心や承認欲が隠れている。
それを手放し、「私は私、人は人」と境界線を引くことで、ようやく心は自由になる――この考え方にはハッとさせられました。
妄想から離れる練習
本書の中では、「妄想をリセットする方法」も紹介されています。
たとえば嫌な記憶や不安が頭に浮かんだとき、「これは記憶に過ぎない」「これは妄想だ」と心の中でラベリングする。
その瞬間、自分と感情の距離ができ、苦しみから一歩抜け出せるのです。
最後に:静かな強さを持つということ
「反応しないことが最高の勝利である」――この一文が心に残りました。
相手に勝つことではなく、相手に反応せずに自分の心を保つこと。
まさに現代社会の中で私たちが最も必要としている力ではないでしょうか。
「怒りを作り出すのは相手ではなく、自分の中の反応である。」
その気づきこそが、仏教的な“合理的な作戦”なのだと、静かに納得させられました。
草薙龍瞬さんの言葉は、決して説教臭くなく、むしろ合理的で現代的。
仕事や人間関係で疲れたとき、自分の心を整えるための一冊として、そっと本棚に置いておきたい本です。