「『言ってはいけない』残酷すぎる真実」を読んで

「『言ってはいけない』残酷すぎる真実 橘玲著 新潮新書 新潮社 2016年

職場の同僚が「めちゃくちゃおもしろいです。」と言って貸してくれたので、1週間くらいで少しずつ読んで読破したのだが、彼の言うとおり、おもしろかった。

まさか、遺伝、性差、民族性などが今の状況や差別を助長するような結果と結びついているとは思わなかった。「それはそう言われているけど、実は違う。そんなことを言うとそれは偏見だし差別につながる。」と言われそうな事象がたくさん書かれている。しかしながら、その一つ一つを全て科学的に紐解いてみると、なるほど、納得だった。

例えば①

経営者の顔と会社の業績は相関がある。

テストステロン(母親の胎内で曝露するホルモンで成人以降もテストステロンは高くなる)が高い人(顔の幅が広く精力的な男性)は、刺激を求めて犯罪や暴力に走るのではなく、自身の才能を政治やビジネスの競争に勝つことに使おうとする。

テストステロンの低い人(顔が細長い)人は、「勝つ」ことへの執念が欠けていて、そのため出世競争で脱落してしまう。

テストステロン値の高い人は無意識のうちにリーダーとみなされること。攻撃的暴力的に見られるから、人々は恐怖や畏怖の念を抱き、自らの身を守るためにひざまづくしかない。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)には集中力を高める「リタリン(メチルフェニデート)」と言う中枢神経刺激薬が効果的と言われていたが、その組成はアンフェタミン、すなわち覚醒剤と一緒である。酩酊しているだけで授業に集中はしていない。

女性がオルガスムを迎えるときに大声を出すのは、自分がここにいることを今現在セックスをしている男性以外の男性にも知らしめるためである。精子をたくさん子宮内に入れて、強い精子と受精させることにより、強い子どもを授かるように仕向ける。はるか昔の「乱婚」の時代の名残であるとのこと。

人を決定づけるのは、「遺伝」が半分、「環境」が半分と言われるが、それは正しくない。「遺伝」がほとんどを決定づけると言っていい。ただし、「遺伝」するものとしないものがあることは事実である。一卵性双生児で生後間も無く離されて、何十年も別れて生活しているのに、知能、宗教性、創造性などはとても相関関係がある。自閉症、ADHDなどの発達障害の遺伝率も80%を超えている。

ひとは無意識のうちに人種別のグループをつくる。これが人種差別の原因になるのだが、ひとは自分に似たひとに引き寄せられるという特徴(人間の本性)を持っているのだから、どうしようもないことである。黒人の子ども集団には厳然としたルールがある。ひとつは、白人の子どもと付き合ってはならないこと、もうひとつは、白人の子どもがするようなことをやってはならないことだ。黒人の子ども集団が禁じるのは白人の子ども集団が高い価値を置くこと全てで、その象徴が「勉強してよい成績をとること」だ。

このことは、私もClub Medでスキーをしたときによくわかった。レベル別でグループをつくるのだが、私と連れ合いは上から2番目のグループに入った。そこには、ブラジル人、イスラエル人、イギリス人、日本人など、7〜8カ国の人たちがいた。休憩時間やご飯の時間に一緒に座って話したりするのは、英語圏チーム棣非英語圏チーム。両方のチームとも英語を話すのだが、Native vs non-Nativeに分かれるのは、その方が話が進みおもしろかったからだと思う。non-NativeがNativeに遠慮している(英語力で!?)のかもしれない。とにかく、そのメンバーでいる方が楽しかったことは確かである。

この本を読んでわかったことは、自分を自分で決めつけてはいけないということである。父親は学歴こそないがとても頭が良く家庭の事情で大学へ行けなかっただけで、NHKに就職できているのだから、大したものである。父親は賢いだけでなく、資格もたくさん持っていたし、多趣味で一通りなんでもこなした。そして読書好きである。

幼少の頃の私はどうかというと、父親とは全くかけ離れた存在で、勉強、スポーツダメ、読書嫌い、太っていて、コミュニケーションが苦手で、いつも学校ではひっそり生きていたような気がする。母親からも、「お父さんのようにできたらいいのにね。」とか「どこそこの〇〇さんのようにできたらいいのにね。」とずっと言われていた。

今の私は周りの人からも驚かれるくらい幼少の自分とは違う。人から成長が数年遅れている(幼少期の数年の差は今の私の年代とは比べ物にならないくらい大きい)だけで、着実に成長を続けていたみたいだ。しかも、その成長はまだ続いている。40歳超えてから、自分が同年代の人より成長(精神的にも知的発達的にも)し続けていると自覚できるようになり、50歳でそれが確信に変わった。

英検1級に合格したのは、47歳。通訳案内士に合格したのは、49歳。フルマラソンを初完走したのは、57歳。

もし自分はできない人間だと決めつけてしまっていたら、今の自分はない。父親からの素質は確実に遺伝している。

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