「問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション」を読んで

 「問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション」安斎勇樹 塩瀬隆之 著(学芸出版社)

 発問がうまく行かないと、子どもの活動がうまく行かない。逆に考えると、「発問が上手くいけば、子どもの活動がうまくいく。」活発でやる気に満ちた子どもたちが前向きに動いてくれる授業になることがある。特に、道徳の授業で発問の仕方に迷ってしまうことがある。この本を読むと、どう発問すれば良いかのヒントがもらえたような気がした。発問≠問いではないので、それはわかっているつもりだ。

 「問いを変えることによって、導かれる答えは変わりうる。」私たち教員もどのように発問するかで、子どもたちの答え方も変わってくる。いかにのめり込んで考えられるような「問い」を設定できるかが鍵である。

 「問い」は、思考と感情を刺激する。

 そのような問いを仕組むことが大切である。例えば、「象の鼻くそはどこに貯まるのか?」と聞くと、たくさん想像力をめぐらし、いろんな答えが導かれたということ。「考えたい」と動機付けられる考えたい」とどう気付けられる。

 「問いは、集団のコミュニケーションを誘発する。」

 授業でもしっかり練られた発問にはペアで話をさせていても喰いつく。

 「対話を通して、問いに向き合う過程で、個人の認識は内省される。」

 暗黙のうちにお互いが当たり前だと思っていることが、対話によって、メタ認知向上につながっていて、内省へと結びついていく。

 「対話を通して問いに向き合う過程で集団の関係性は再構築される。」

 お互いの認識に差がある場合、「溝に橋をかけ」相手を知ろうと心がける。

  「創造的対話とは、コミュニケーションから新たな良いやアイディアが創発する対話のこと。

 そのトリガーとして、問いは機能している。例えば、「危険だけど、居心地の良いカフェは?」という「問い」の方が創発的対話は促進する。

 「問いは創造的対話を通して、新たな別の問いを生み出す。」

 認識と関係性が編み直される。例えば、しまうまの模様はとても複雑で良く観察しないと人に伝えることはできない。目に見える人より見えない人の方がしっかり説明できることがあり、教える教えられる関係性の再構築になる。

 ここで、「問い」の定義とは、

 「人々が創造的対話を通して認識と関係性を編み直すための媒体」

 発問とは、問う側が答えを知っており、問われる側は答えを知らない一方、問いは問う側も問われる側も答えを知らない。

 「問題」と「課題」について。

 「問題」は、「何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまく行かない状況のこと。

 「課題」は、関係者の間で、「解決すべきだ」と前向きに合意された問題のこと。

 授業では、課題を提示するが、授業の冒頭で、生徒と「解決すべき」であると前向きに合意させていかないといけない。

 課題設定には罠が5つ存在する。

 ①自分本位(自分本位の視点に偏って、経験者全員にとって建設的になっていない) ②自己目的化(導入する意義や目標を吟味しないまま設定してしまうこと) ③ネガティブ他責(課題の設定が後ろ向きになっている) ④優等生(「ポイ捨てを減らすにはどうすれば良いか?」という問いに対して、優等生的な答えしか導かれない) ⑤壮大(設定される課題が壮大過ぎる)

 問題に対してどのような心構え(マインドセット)で迎えるか。問題をどのように捉えるのかについての思考法は5つある。

 ①素朴思考(浮かび上がった疑問をぶつける。良い質問でなくても良い) ②天邪鬼思考(わざと批判的に問うてみる。素朴思考とのバランスが重要) ③道具的思考(記号やモデルを使う。問題の深掘りが進まなくなったとき、「道具」を通して別の角度から問題を捉える) ④構造化思考(複雑な問題状況に対して課題を定義しようとする際には不可欠。問題を構成する要素を大まかにみて、それぞれの要素の関係性を分析・分析する) ⑤哲学的思考(本質を捉えること。「それが確かに物事の本質かもしれない」という互いに納得できる共通理解に達すること)

 課題を定義する手順

STEP1 要件の確認→問題状況を解決するにあたって必要な情報を確認。「目標」をしっかり確認。

STEP2 目標の精緻化→①短期中期長期目標にブレイクダウン②優先順位をつける③プロセス目標(副産物として生まれるもの)、成果目標(実際の目標)、ビジョン(将来的な理想)に目標の性質によって整理 ⭐️「目標を決めるという目標」、「共通の目標を決める」というメタ目標を設定

STEP3 阻害要因の検討→目標が実現されない5つの要因 ①そもそも対話の機会がない ②固定観念が強固 ③意見が分かれて合意形成ができない ④目標が自分ごとになっていない ⑤知識創造性が不足している 

STEP4 目標の再設定(リフレーミング)→リフレーミングのテクニック ①利他的に考える(自分本位は❌) ②大義を問い直す ③前向きに捉える ④規範外にはみ出す ⑤小さく分割する ⑥動詞に言い換える(「万歩計」をリデザインする→歩行で「測る」をリデザインする) ⑦言葉を定義する ⑧主体を変える ⑨時間尺度を変える ⑩第3の道を探る

STEP5 課題の定義→良い課題の判断基準 ①効果性 ②社会的定義 ③内発的動機 ⭐️「衝動」を掻き立てる課題設定(やりたい考えたい)

 ワークショップについて。私の授業は、子どもたちにたくさん活動させたいという観点から、ワークショップ形式である。私がファシリテーターで子どもたちを導いていくというスタイルをとっている。子どもたちが主体なので、「果たしてこれで良いのだろうか?」と思うこともある。

 作者によると、ワークショップの定義とは、「普段とは異なる視点から発想する、対話による学びと創造の方法」。こう考えると、私の実践しているワークショップとは少しずれている。私の方には、「異なる視点」という部分と「創造」がない。

 ワークショップの4つのエッセンスとは、①非日常性 ②協同性 ③民主性 ④実験性 ⭐️ボトムアップの考え方

 ブレストが唱えるワークショップの失敗とは、「判断や結論の排除」、「質より量」、「アイデア同士の結合と改善」の4原則がないこと。

 そもそも思考がどのように深まり、アイデア同士が合わさって新たな創造性に結びつくことへの十分な配慮が必要。

 ワークショップのデザインとは、普段と異なる視点→対話で新しいアイディア→集団が囚われた認識と関係性が編み直される。

 ワークショップの基本構造は、改めて、導入(イントロダクション、ディスプレー)→知る活動(資料、情報提供)→創る活動→まとめ(発表、振り返り)

 問いにひねりを利かすことも大切。「あなたの得意技は?」→「あなたの意外な弱点は?」、「あなたの職場の課題を病気やケガに例えると?」

 どのように参加者の経験が必要かあぶり出し、「課題」を「経験」に翻訳すること。

 問いの制約を設定するテクニック

①価値基準を示す形容詞をつける。「良い」→「快適な」 ②ポジとネガ 「最高の」、「最悪の」 ③時間の制約をつける。「2030年において」 ④想定外の制約 「危険だけど居心地の良い」 ⑤アウトプットの形式に制約をつける 「◯◯の3つの条件とは?」 

 「居心地の良い図書館を考えて、レゴブロックでミニチュアを作ってください。」これだけではいささか乱暴な問い(創る活動)になるので、「意味」と「仕様」を一度に尋ねるのではなく、「良い図書館とは?」と「具体的な仕様とは?」と二つに分けて尋ねる方が良い。1 あなたがこれまで経験した居心地が良かった場所は?→その場の居心地の良さを作り出している要因は? 2 居心地の良い図書館のミニチュアを作る。

 テクニック ①点数化(「あなたの現在の仕事の満足度は何点?」→「100点とはどのような状態?」、「+5点にするには?」) ②グラフ化(「入社してから現在に至るまでノアタナの仕事の充実度をグラフにすると?」→「なぜ上がっているのか?(なぜ下がっているのか?)」 ③ものさしづくり(点数化の後、「なぜこんなに人によって、ずれてしまうのでしょうか?」→「付箋に書き込みましょう。」) ④架空設定(「もし◯◯だったら?」) ⑤そもそも(「そもそも図書館とは?」 ⑥喩える(「あなたの職場の課題は?」→「あなたの職場の課題を、病気やケガに喩えると?)

時間調整 導入10〜20%、知る活動20〜30%、創る活動30〜40%、まとめ10〜20%

課題のデザイン 良い課題の判断基準 ①効果性 ②社会的意義 ③内発的動機

問いの因数分解 ①「過去の経験を探索させる問い」(朝ごはん何を食べた?) ②「価値観を探索させる問い」(最も豊かな制約→「今日は◯◯」 ③「集団の合意点を探索させる問い」(「三つの条件とは?」) ④「朝食のメニューとは?」(解決策の探求)

良いアイスブレイクの問いのポイント ①固定観念を揺さぶる ②集団の関係性を揺さぶる ③警戒と緊張をほぐす ④テーマと接続させる

ファシリテーターのコアスキル 1️⃣説明力→①問いの焦点を明確に伝える ②問いに記述されていない背景の意図を伝える ③前の問いとのつながりについて補足する ⭐️問いと課題とのつながりを一言をそえる ⭐️問いに引きつけるポイント ①好奇心に基づく注意を引く ②参加者自身との関連性を意識している 2️⃣場の観察力→「沈黙する時間」も必要。その時がなぜ発言がないのか見極める。「鳥の目」と「虫の目」(俯瞰的と精緻に観察(場の視点を捉える)) 3️⃣即興力 4️⃣情報編集力 5️⃣リフレーミング力 6️⃣場のホールド力

ファシリテーターの芸風 ①場に対するコミュニケーションスタンス ②場を握り、変化を起こすための作戦 ③学習と創造の場づくりに関する信念 ⭐️ワークショップの「問い」は、その場にる誰もが気づいていない答えに辿り着くためのトリガー。 ⭐️「まとめ」の発表へのフィードバックでは、予定していた終わりの言葉を予定通り並べるより、その場で手に入れたばかり予想していなかった言葉をかける。

即興的な問いかけ ①シンプルクエスチョン「素朴な疑問」 ②ティーチングクエスチョン「欠けていた視点に気づかす質問」 ③意欲、思考、価値観を引き出す問い「コーチングクエスチョン」 ④フィロソフィカルクエスチョン「そもそも◯◯とは何でしょう?」 ⭐️対話を可視化するグラフィックレコーディング

授業でも発問焦るばかり発問を詰め込んでしまうばかりに、ブツ切れで思考をストップさせてしまうことがあるので、思考がスムーズに流れるように、発問と発問、意見と意見をつなぐような「問い」をデザインすることが大切だとわかった。初心に立ち返ってもう一度「問い」をデザインし直すことにする。

英語教育12月号を読んで

「書くことは考えること『相手意識』に立脚した論理的思考」で、山岡大基教諭(広島大学附属中・高等学校)は、

(中略)「思考力」とは、コミュニケーションの目的・場面・状況を考え、相手にとって最適な言葉遣いを選択していく。そういった「相手意識」を働かせることが「思考」であり、それができる力が「思考力」

と語っている。さらに、

 外国語教育における「課題」とは、一義的には、「コミュニケーション」なのだということです。その限りにおいては、英語の授業として育てるべき「思考力」とは、コミュニケーションの相手を意識して英語を使う力だと言えるでしょう。

お互いの考えや意見を伝え合うためには、コミュニケーションを成立させなければならない。その上では、様々な課題が存在する。話す力、聞く力、表現する力、伝える力、会話構成能力、そのどれもが必要であり、それらの力をつけていくことも課題である。その中でも最も大切なものは、「相手意識」であると言う。

 自分の手持ちの情報をどのように活用すれば、読み手に納得してもらうことができるのか、という思考が必要になります。

「少人数ゼミでのWriting指導 リベラルアーツ教育とAcademic Essay Writing」で、山本永年教諭(市川中学校・高等学校教諭)は、

 Academic Essay Writingにおいて、英語のチェックについては2点心がけていることがある。1つめは、生徒同士が読んでわかるかどうかという点である。(中略)2つめは、オンラインによる文章のチェックである。Cambridge English Write & Improve®︎やGrammarly®︎を生徒に使わせている。

と、オンラインでミスをチェックさせてから提出させている。少し調べてみた。Cambridge English write & Improve®︎とGrammarly®︎は、次のような感じ。

https://writeandimprove.com/

Grammarly®︎はここでダウンロードできる(無料版)https://www.grammarly.com/m

ぱっとみた感じだけであるが、Grammarly®︎の方が使い勝手が良さそうである。是非、使ってみたいと思う。

「書くことに困難を抱える児童生徒への指導」で飯島睦美教授(群馬大学)

は、こんんなんと特性の特徴を考慮した指導について、次の9点を挙げている。私はこの中で、2番目を中心に指導してきたが、さらに8点の興味深い提案がある。

 ①文字の大きさや感覚に注意して書字練習

 ②文字と音の融合 ⭐️ 私が心がけてやっている「音素カード」である。

 ③絵画情報提示 文字や音だけでなく絵で概念を把握させること ⭐️ これも  「音素カード」で提示している。

 ④明示的・演繹的導入 自らルールを発見する(暗示的)が苦手なので、ルールを提示し自動化させる。

 ⑤単語カード並べ替え カードを並べ替えて語順のトレーニングをする

 ⑥パターンプラクティスを活用した自動化

 ⑦演繹的導入によるブレインストーミング 書く内容について内容を膨らませる。

 ⑧スモールステップによる段階的指導

 ⑨接続詞とディスコースマーカーの指導 論理的で一貫性のある英文を作成するため。

 まずは正しく字を書くことから。1年生ではこの部分を徹底的にやりながら、少しずつ文章を書く量をスモールステップで増やしていく。

「文章を『書き直す』ことで考えを明確にする」で佐渡島紗織教授(早稲田大学)は、推敲について論じている。

しかし、文章を「書き直す」ことには、大きな意義がある。表現に関わる直しはもちろんのこと、内容も変わることになるからである。私たちは、考えを言葉にすると文章ができると考えがちである。つまり、考えが先で言葉は後であると。しかし実際は、私たちは言葉の使い方を検討することを通して考えを練るのである。私たちは言葉を操作して施行するからである。この考えの転換を哲学では「言語論的転回」と呼ぶ。だから、書かれた文章を、言葉の使われ方に着目して検討し直していくと、自ずと書き手の考えが整い、その結果、読み手にも分かりやすい文章ができる。

 推敲することで、頭が整理される。内容が良くなる。何度も読み返すこと。稀にデータ保存に失敗して全ての文章が消えてしまった時など、改めて思い出しながら文章を再生すると、前回のより良いものができたりする。そんな感じかもしれない。

MEMO:p+igのようにオンセット(母音より前の部分)とライム(母音から後の部分)に分解して音を合わせる練習

小学校英語 教科書活用のヒント 第9回「スピーキングの指導方法」町田智久(国際教養大学准教授)

Big voice, Eye contact, Gesturesという3要素だけでなく、さらに3要素追加すべきである。Authenticity(身近な場面を設定する), Personalization(児童に関連づける), Creativity(創造性を加える)

新しい日常における英語語彙指導・2ー学習方略指導と語彙テストの観点から 中田達也(立教大学准教授)・内原卓海(ウェスタン大学博士課程)

テストをした方が学習内容が定着することは、エビデンスから科学的に証明されている。ならば、小テストや単元末テストはした方が良いとこの記事を見て確信した。まずはコアミーニングについて、

 コア・ミーニング(複数の意味に共通している中心的な意味)を把握することを目指しましょう。コア・ミーニングを知る上では、オンライン辞書weblio(https://eject.weblio.jp/)が便利です。主な多義語のコア・ミーニングがイラスト付きで掲載されています。

https://ejje.weblio.jp

語彙テストの活用については、

 これまでの研究により、テスト自体に学習効果があることが示されています。(中田2019)つまり、テストは評価のためだけでなく、学習活動の一環としても用いることができます。「学習のためのテスト」と「評価のためのテスト」という観点から、語彙テストの活用法をご紹介します。 

 「学習のためのテスト」においては、興味深い研究があった。単に、テスト範囲のテストを行うより、これまでのテスト範囲を含めた「累積テスト」の方が効果が高いというのである。

 非累積テストと比較して、累積テストは語彙習得を2〜3倍以上促進することが件キュにより示されています。そのため、単語テストを行う場合には、以前のテストでカバーされた単語も出題範囲に入れた累積テストを用いるようにしましょう。

音声テストについては、AELP等のwebサイトからダウンロードできます。

https://inetapps.nus.edu.sg/aelp/

評価のための語彙テストについては、

 Vocabulary Size Test

https://my.vocabularysize.com/

V_YesNo

http://www.lognostics.co.uk/

 Vocabulary Levels Test

https://www.lextutor.ca/tests/

が活用できる。

「罪の声」をみて

 11月の中旬くらいに、友人のMr. Tの勧めで見に行った。彼の勧める映画は、聞いた瞬間はあまりパッとしなくて、「見に行くまでもない」と諦めてしまうことが多いのだが、見に行った映画には不思議とハズレがない。今回のも勧められた瞬間はやめておこうと思ったのだが、どうしても気になって行ってしまった。かなり面白かった。

 公開して1ヶ月で評価が4.0なので大したものだと思う。

 「グリコ・森永事件」をモチーフにした映画で、実話だったら、これで解決したことになるのだろうけど、講談社BOOK倶楽部「塩田武士独占インタビュー」では、

https://news.kodansha.co.jp/20160803_b01

本作を読んだジャーナリストから電話をいただいたんですが、第一声が「これ、どこまで本当なの?」。僕は、取材の過程で作品に描いたような推理が成り立ったことを説明しましたが、その一方であの犯罪のあとには、いくつもの哀しい人生があったのではないかと思っています。とりわけ事件に利用された子供は、どのような人生を送ったのか……。そういうことに思いを馳せるところに、いまあの事件を取り上げることの意味があると思うのです。

とあるので、実話でもあり、創作もありという感じかもしれない。私の中では、この映画を見てあの事件の真相が全て解決されてしまったような錯覚に陥る。次は、映画.comによるあらすじ。

https://eiga.com/movie/91122/

実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬と星野源の初共演で映画化。平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子。

2020年製作/142分/G/日本
配給:東宝

 「グリコ・森永事件」が起こったのは、ちょうど、私が浪人生活をしている時。名古屋の駅裏(現在の新幹線口)に下宿して河合塾に通っていたときの頃。当時の名古屋駅裏はホームレスが多く、冬場は暖かいコインランドリーにたくさんいらっしゃって、まだ19歳の私は洗濯をしに中に入れなかった時があることを覚えている。予備校帰りに、小さいハンドバックにつけられている金の鎖をクルクル振り回しながら近づいてくるお姉さんに、「遊んで行かない?」と毎日声をかけられていた。治安があまり良くない地区に住んでいた。下宿から歩いて10分ほどのスーパーに、「毒入りキケン」と書かれたお菓子が見つかったのは、確か、秋〜冬くらいだったと思う。とても怖かった思い出がある。そして、事件がかなり身近に感じていた。その思い出が今でも忘れられない。

 体制に反旗を翻し、いつか住みよい暮らしやすい身の回りを実現したい、お金持ちや権威者だけがのさばる世の中を変えていきたい、そのためには、緩やかな変革ではなく激しく暴力的な部分もないと、世間や世間の考え方は変わっていかない。イスラム教を世界に広げていく過程で、「ジハード」も止むを得なかったという時代があったのもうなづける。日米安保をはじめとする不安と不満から起こった学生運動が鎮火されても、火種はまだ止まず、反体制を目指し、あの事件へと動いて行ったというストーリーは十分ありうると思う。

英語教育11月号を読んで

 今月は第1特集では、「スパイラルな指導で学びを確かに〜既習事項の定着を高める〜」、第2特集では、「トリビアで英語を楽しむ」、第3特集では、「リモート授業の不安に負けない 大学生の学びを大切に」である。

 私が興味を持っている英作文指導についての記事があった。

 「英語につまずいた生徒が前を向く指導Q&A」(山本 由貴先生 福井県敦賀市立角鹿中学校)の「『書くこと』が苦手な中学生が多く、指導に悩んでいます。改善のポイントは?」

 山本先生は次の3つのポイントをあげている。

 1 「相手意識」と「目的」を持たせる

 「相手意識」は今や英語教育では欠かせないキーワードである。どんなに立派な作文が完成しても、どんなに発音よく発表しても、聞いている相手に伝わらなければ全く意味がない。また、聞いている相手の状態、発達段階、英語の能力、環境、時間など、その場の状況をよく理解して発表する(作文する)ことが相手意識を考慮したプレゼンテーション(作文)ということになる。そして、「何のために」書くのかという目的をしっかり持つことである。書かされている感があると、目的なしに書くと、いい文は書けない。「これは、誰のために、どういう目的で」書いているのかという明確な目的意識を持たせることが大切である。

 2 文や文章全体の構造に目を向けさせる

 主語動詞はもちろんのこと、自分が書いている文がどのような構造をしているのか、語順を意識して書くこと。

 3 フィードバックとリライトを大切にする

 English Journal(英作文の課題をこなす専用のノート)を生徒1人1人に持たせて、心の動きを記録し、大切なポートフォリオの役目を果たすよう支援。月曜日:テーマ確認とスピーキング活動、(家庭学習)授業で話したことをもとに作文、火曜日:書いたものを提出書いた(1回目)、水曜日:ALTとJTEからフィードバック、木曜日:(家庭学習)返却されたノートを見て、リライト、金曜日:再度提出させた上で、今週のBEST英作文の共有

 なるほど、私の「週末課題」より細かくstep by stepで行われている。今の生徒には合わないかもしれないが、やってみたいと思った。この山本先生のやり方で、月曜日のスピーキング活動というのがあるが、これが最も大切である。「言い慣れたことは書きやすい」のである。私のストーリーリテリングにおいても、何度かペア交流した後に書かせると、slower learnerもスッと書くことができる。

 さて、英作文の私の考えるやり方として、

 英作文指導のポイントは、次の3点。

  1 短時間で長期間の指導   

 長くとも15分程度で1回を終えられる分量の課題設定とそれを長期間できる環境の設定 

 例えば、「週末課題」のように、1週間に1回、20分くらいでできる課題を週末に出題し、週明けに回収する。これを3年間(担当学年によっては1年間)継続させる。

 山本先生は記事の中で、「フィードバックとリライトを大切にする」と書いている。ここで大切になるのは、リライトである。リライトさせないと、間違った自分の文章が完成することはなく、間違ったまま覚えてしまう。リライトされた文章を見るだけでなく、もう1度書いてみるということが大切なのである。

 そのリライトされた文章をさらに、次のようにexposureするとよい。

  2 exposure(晒すこと)

 Journal化すること

 Journalというのは記事だったり、通信だったり、まとめたものにすることである。子どもたちの英作文をプリントや通信にして全員に配付するのである。ここでも、いくつかの選択肢がある。

 一つ目は、子どもたちが書いたものをそのままコピーして貼り付けて配布するパターン。字で誰の作品かわかったしまう虞があるが、それも考慮の上で配付する。

 二つ目は、名前を入れるのか入れないのか。自分の作文だと周りに知られたくない子どももいるし、口だけでは「見られたくない」と言っている子どももいる(本当はみんなに見て欲しい)。

 三つ目は、PCで英作文を打ち直して配付するパターン。これだと誰の作文かはわからない。

 四つ目は、全員のを取り上げるか、優秀作品だけにするか、一部の生徒の作文にするか(できはともかくとして)(順番、抽選)、できは関係なく意図的に一部の生徒の作文にするか(典型的な間違いをしている作文を取り上げて授業で解説するなど)。

 学年初めなどは、PC打ち、名前なし、優秀作品だけを取り上げた。すると、翌週から取り上げて欲しい生徒が頑張って書いてくるようになった。こうなるとしめたものである。

 掲示すること

 提出された作品をきれいにデコレートして、教室の一部や英語教室などに掲示すること。ここでも大切なことは、アップデートすることである。ずっと貼りっぱなしになっていて誰も見なくなっているのに(紙も汚れてしまったり破損してしまっているのに)、そのまま放置されることは避けたいものである。Journalと交互にするのもよし、とにかく「みんなに見てもらいたい。」という気持ちだけは忘れずに、定期的に掲示することが大切である。その掲示物に触発されて英作文を頑張ってみようと思う生徒は必ずいる。

 授業で批評会をすること

 とにかくexposureすること、という原則からすれば、授業の冒頭「短時間学習」で、英作文を机上に置いて、子どもたちが移動してそれらを見合うという互見会を開いてもいいかもしれない。45秒くらいでタイマーをセットしておいて、時間がくれば次の席に移動して英作文を読むことにする。時間的にあまり余裕がない時は、一言メッセージを書くという時間はないと思うが、一通り読み終わった後に、どの作文が良かったか、またその作文のどこが良かったのかを書かせてみてもいいかもしれない。

 3 英作文させるトピックについて、話す活動をさせてから書かせること

 これは先ほども述べたので、詳しくは書かないが、話すことで相手意識も生まれるし、目的もはっきりしてくるような気がする。「この単語はどう書くのだろう?」「この表現は教科書のどこかに載っているのかな?」単純に書きたいという気持ちが生まれてくるようにさせるのが、「話す活動」である。

 表現させることは難しいことである。表現することが1番大切なことであるから、当たり前なのだけれど、もっともっと追求してくべきことであると思う。

「英語教育10月号を読んで」2

「自力で学べる生徒をどう育てるかー家庭学習の効率よいルーティーン化」本田敏幸 千代田区立九段中等教育学校主任教諭

本田先生のご講演は2度にわたって拝聴している。先生が大学院在学中に一度、東京のELECの研修会で。また、2〜3年前にCELES(中部英語教育学会三重支部)でもお聞きしている。その際にはお食事まで一緒にさせていただいてたくさんのお話をお聞きした。

今回は、家庭学習でどんなことをさせればよいかについて、書かれていた。その中で、とてもいいなと思ったのが、”Seven Steps”である。

私は相変わらず、予習と称して宿題にしていた、単語調べ、単語練習、本文写しを音声導入した後、「本文単語練習」という名前に替えてさせている。本多先生は、このやり方を少しアレンジし、リスニングや音読も含めながら行わせている。

STEP1は、教科書を開き、「教科書のCDを真似て、5回以上音読を行う。」教科書の文字を見ながら、CDをモデルにして行う。

まずは、本文の概要をつかんで、文字と音との一致から読み方を覚えていく。

STEP2は、教科書を閉じて、「CDの後について、1文ずつ言えるようにする。」

内容がつかめていないと、CDを聞いても1文が言えないので、STEP1がとても大切になってくる。

STEP3は、教科書、ノートを開き、「新しい単語(太字)をノートに何度も書いて覚える。」

ここも単語を発音しながら書くことが大切である。どの綴り字がどんな音になるのかしっかり確認する。

STEP4は、「本文を2度以上書く。」発音しながら書くようにする。

STEP5は、「写した英文を黙読して、間違えがないか確認する。」

STEP5が大切である。ここで間違えた文を何度も書いてしまうと、ミスの刷り込みをしてしまうことになる。非常に危険である。間違った文を何度も書くほど無駄な時間はない。

STEP6は、教科書を閉じて、「1文ずつCDを聴き、英文をノートに書く。」

STEP1〜5までしっかりやっていれば、STEP6は意外にスラスラとできるはずである。ここまでの努力の成果を試すためにも大切なSTEPである。

STEP7は、教科書を開いて、「答え合わせをし、間違いを赤ペンで直す。」

今の3年生を卒業させたら、Seven Stepsを自分の中に落とし込んで、生徒たちへやらせてみよう。

「英語教育10月号」を読んで

第1特集 「自律して学ぶ力を育てる 課題の出し方・活かし方」

「自律的に学ぶ力を育てる課題とは?ー第二言語習得の視点から」新田了 立教大学教授の記事からは、タスクが定義づけられていた。我々はよく「課題」と言ったり、同義で「タスク」と言ったりすることがある。

本来、タスクとは、「達成すべき目的を持ち(purposeful)、意味を中心とした(meaningful)言語活動と定義されるまずは伝えたいメッセージを持つことが重要で、英語はそれを表現するための手段である。つまり、設定された目的を達成するために、生徒は思考し、クラスメイトと協力し、教師の助けを借りながら、様々な活動に取り組む。そのプロセルから付随的に英語力が発達する。」としている。ただゲームをすることをタスクと称して要る教員もいるので混同しては行けない。

さらに、自律的学習を促す原則として、4つの原則を挙げている。①生徒の伝えたいメッセージからスタートする。②外の世界につながる要素を含む。③個人作業と共同作業を組み合わせる。④内省的な活動を取り入れる。小学校で教えていてもよく思うことだが、「児童生徒が言いたいやりたい伝えたい」という気持ちを持たせるような教材を提示することが大切である。

また、④においては、振り返る力をつけさせることがとても大切であると筆者は語っている。「『自分のものさし』は一度見つけたら終わりではなく、自分の成長と環境の変化に合わせて改良し続けていく必要があるから。常に振り返ることで、自分の物差しを洗練させ、調整していくのだ。」と言っている。

新学習指導要領では、「主体的に学ぶ態度等」の評価のおいて、振り返る姿勢が大変強調されることになる。指導と評価が一体となるよう工夫する必要がある。

「浅田家」を観て

 楽しみにしていた「浅田家」を観てきた。普段、特別支援教育やキミヤーズを一緒に勉強している先輩が、エキストラで出演しているらしかった。主人公の写真家 浅田政志さんは、津市出身。育生小学校の卒業生と言うことは、私や私の連れ合いの後輩である。高田本山や津新町駅がロケ地として使われており、不思議な感覚だった。ストーリーは以下の通り(映画.comより)。

 様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で注目を集めた写真家・浅田政志の実話をもとに、二宮和也と妻夫木聡の共演、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督のメガホンで描いた人間ドラマ。4人家族の次男坊として育ち写真家になった主人公・政志を二宮、やんちゃな弟をあたたかく見守る兄・幸宏を妻夫木が演じ、家族の“愛の絆”や“過去と今”をオリジナル要素を加えつつ描き出す。浅田家の次男・政志は、父の影響で幼い頃から写真に興味を持ち、やがて写真専門学校に進学。卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを再現した写真で学校長賞を受賞する。卒業後しばらくはくすぶっていたものの、再び写真と向き合うことを決意した政志が被写体に選んだのは、やはり家族だった。様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催し、写真集も出版され、権威ある賞も受賞する。プロの写真家として歩み始めた政志は、全国の家族写真の撮影を引き受けるようになる。しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生。かつて撮影した東北に住む家族のことが心配になった政志は被災地に足を運ぶが、そこで家や家族を失った人々の姿を目の当たりにする。

2020年製作/127分/G/日本
配給:東宝

 家族の大切さ、人の命の尊さ、写真を通じて人と関わっていくことがどんどん人と人をつなげていくことになる。

 東日本大震災の被災地で、浅田さんは、震災で行方不明になった写真を集め、人に返却するボランティアをする。泥を落としてきれいにしてから、板に貼り付け、展示することで、避難してきた人たちが見やすいようにしていた。8万枚の写真のうち6万枚を返却することができたようだ。

 私も、2011年4月、5月、2012年3月と3回にわたって、被災地にボランティアに行った。壮絶な環境の中で、一生懸命生き続けている人たちと触れ合うことで、たくさんの元気や勇気ややる気をもらうことができた。被災地で働いて、たくさんのありがとうをもらったが、ありがとうと言いたいのはこちらの方だった。

 たくさん経験をすることはいいことだなとしみじみ感じた。人との触れ合いが増えていくし、人との関わりから人脈が増えていく。

 何度も涙したシーンがあった。大泣きするところは無いが、ぽろっと涙が溢れるところはいくつもある。

 かなりオススメである。津市出身者や在勤者、居住者は見るべき。

「一人称単数」を読んで

「一人称単数」村上春樹(文藝春秋)

 「猫を捨てる」という短編集を読んでから、半年くらいで出版されたので、他の作品を読み返さなくても、村上春樹に餓えなくてもいいから、気持ちが楽だ。

 村上春樹を読む時はいつもそうだが、終わってしまうのがもったいないので、読みたくても自分でリミットを決めて、そこまでしか読まないようにしている。なんなら、別の本も並行して読み、続けて読みたい欲求をその別の本にぶつけていることもある。

 つまらない本は、「まだ50ページか!?」とため息まじりにページ数をたぐることも多いが、村上春樹の場合は、「あと100ページもある!!」と喜んだり、「あと50ページしかない!!」と嘆いたりすることもあるくらい、終わりを待ち望まない自分が居る。

 今回も短編集である。8篇の作品が収蔵されている。

 ご自身が経験されたような話や実際に聞いた話、どれも引き付けられるようなことが多い。女性についての話が多く、どれも面白かった。

 俳句をしているバイト先で一緒になった女性、ピアノ教室で一緒に連弾をしたことのある女性、醜い女性、恥を知りなさいと罵る女性

 不思議に自分の若い頃のことをたくさん思い出す。フラッシュバックしてくる。この物語の世界に入り込んでしまっている。しかし、主人公になるのではなく、物語の展開とともに歩いている主人公とは別人の自分が歩いている。しかも、自分の思い出を抱えながら、ストーリーと同一歩調で歩いている。フラッシュバックしている出来事が決してストーリーを凌駕することなく、自分がストーリーに入り込んでいくので、不思議な気持ちになる。

 これは村上春樹の小説を読むときにいつも自分が味わう経験である。それが村上春樹が好きである理由なのかもしれない。

 猿の話、スワローズの話、

 私が大好きなお酒もたくさん出てくるし、クラシックも好きなのだが、ちょくちょく話に出てくる。猿は「ブル7」が好きらしい。私もブルックナーの交響曲第7番は好きだ。

 全ての短編は「文學界」という雑誌で書かれたものが収録されているのだが、最後の「一人称単数」だけが書き下ろしであった。

 「一人称単数」はとても変わった話である。ストーリーはおいとくとして、その話の主人公の中年男性(多分村上春樹であると思われるが)は、滅多に着ない高級スーツを着てバーで読書をしているときに、バーカウンターの奥にある鏡に写し出された、ここにいる鏡に写っているのはだれなのかという疑問に襲われる。「人生を生きてきて、分かれ道がいっぱいあった。右にも左にも行けた。自分でどちらに行くか選択したわけだが、どっちにも行けた。どちらでもよかった。時には、向こうから私を選択したこともあった。いろいろあったが、今私はここにいる。いったい私は誰なのだろう。」とこんな趣旨の語りがある。

 私もわからなくなることがある。パイロットになるか先生になるかで悩んだことがある。先生になっていなかったら今の幸せな生活は存在しない。いろいろな道が複雑に入り混じっている。過去を肯定すると現在は存在しなくなってしまう。たくさんの枝のあるあみだくじを複雑に行ったりきたりしながら、当たりにたどり着いたようなもの。今いる自分は試行錯誤の連続で生まれた産物で、きっと将来の自分もたくさんの選択肢から自分の意思や強制力が働いて選ばれて出来上がった自分になるのだろうと思う。ただ、加齢とともに選択肢の本数は年々減っていくことだろうが。

 おもしろかった。やはり、村上春樹である。

 

「英語教師のための実践研究ガイドブック」を読んで

「英語教師のための実践研究ガイドブック」田中武夫、髙木亜希子、藤田卓郎、滝沢雄一、酒井英樹 編著 大修館書店

 理論研究は、大学院の修士課程の時にやったが、根気と時間がないとなかなかできない。しかし、「実践研究」であれば、普段の授業を研究の材料にでき、さらに授業改革や自分の授業の研究、教えている子どもたちの状態や学習環境などを深く知ることができる。実践研究のやり方を勉強して、やってみようかと思う。できれば学会で発表できればいいなと思っている。

 まず、実践研究とは、「教師の教育実践の質的な向上を図るために行われる体系的な研究の1つである。具体的には、教師自身が日々行っている実践の現状を理解したり、実践上抱えている課題を改善したりするために行われる研究」である。

 目的は、実践の現状を理解し、その現状での課題を改善するために行われる。

 実践研究が成立するための3要素は、「問い」、「データ」、「分析・解釈」である。

 「問い」とは、日々の実践の中から立ち上がった教師の問いに対し、教師自身が答えを探求する試みである。2つに分けられ、担当しているクラスで、ある指導をしたら何が起きるのか見ようとする「課題解決型」と、授業が行われている教室の中で何が起きているのかを理解しようとする「理解型」がある。

 「データ」では、テストや質問し、生徒のワークシート、振り返りのコメント、教師の日記、メモまで使われることがある。

 「分析・解釈」では、収集したデータを先に立てた問いに答えるために見やすく整理し、収集したデータの意味について分析したり解釈したりすることである。

 実践研究のステップとしては、① 問いを立てる(問を明確にする)、② データを集める(データのタイプを知る、データを収集・整理する)、③ データを分析・解釈する(データの分析をする、データの解釈をする)、④ 研究を共有・公開する(研究を総括して発表する)

 「問い」について、「理解型」の問いとは、目の前にあるクラスの中で何が起きているのかを見る問いである。つまり、実践上における教師や生徒の現状について理解するための問いである。「課題実践型」の問いは、今教えているクラスで、あることを試してみたら何が起きるかを見る問いである。つまり、実践上の指導の効果を確認するための問いである。

 「よい問い」を見つけるためには、①「重要性」(実践の理解や今後の実践の改善に大きく貢献するか?)、②「明確性」(何を問うているかがわかりやすいか?)、③「可能性」問いに対する答えを出せる可能性があるか。

 「重要性」とは、教師が行っている実践に対して、特に重要と思われていることを「問い」にしているかどうか。「大きな声を出させる指導」→「目的意識・相手意識を持って考えることや意見を伝え合うこと」

 授業を見る4つの視点、①目標の設定、②生徒の把握、③教材の解釈、④方法の考案

 「データ」について、「教師が英語で授業をすると、生徒の認識や表現内容はどのように変わるか」という問いに答えるためには、「生徒の認識」(「振り返りシート」の分析・解釈から)、「生徒の表現内容」(「授業中のスピーキング活動のビデオ録画)から得る。ここから、次のような解釈が導き出せる。①教師が英語受容を行うことで、生徒の英語に対する苦手意識が軽減した。②発話の量には影響は見られなかったが、教師の問いかけに対して応答しようとする生徒の数が増えた。

 授業観察メモ、授業日誌については、授業の中で起こった出来事、その出来事が起こったときの児童・生徒の様子や発言、その出来事に対する観察者の感想や気づきについて記述することが大切である。

 授業日誌を書く際には、授業中の出来事や様子などの事実と、教師の感想や気づきなどの解釈を分けて記録する方がよい。事実を正確に記録すると、後で実践を共有する際に役立つ。

 授業日誌やアンケート(質問紙)、インタビューのような質的調査の場合、質的分析を行う。それは、「個人の特徴やその変容をとらえるために、集めた文字データや音声・動画、データなどをカテゴリーに分類すること」である。まず、データをしっかり読み込み、データ全体から得られる理解や気づき、印象をつかむこと。次に、データから必要な箇所を抜き出す。さらに、気づきや考えをメモする、要約する。その際に、コードを付与すると、データの内容を端的に把握しやすい。コーディングとは、文書データを読み込む中で、気になる箇所や繰り返し現れる現象、表現について要約し、それらを的確に表す見出しをつけること、コーディングをすることで、データについて端的にまとめたり、深く考えたりするのに役立つ。最後に、要約されたデータを整理すること。コーディングされたデータの傾向を数量化してまとめる。そして、コードの関係性を踏まえて、カテゴリーを作成する。

 まずは、問いを立ててみよう。そして、振り返りカードから生徒の声を収集し、自分の授業メモもしっかりとることにする。自分の授業改善や生徒の英語力向上に役立ちそうだ。

“Tenet”を観て

ストーリーは以下の通り。映画.comより引用。

ダークナイト」3部作や「インセプション」「インターステラー」など数々の話題作を送り出してきた鬼才クリストファー・ノーラン監督によるオリジナル脚本のアクションサスペンス超大作。「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した「ブラック・クランズマン」で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントン。共演はロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、アーロン・テイラー=ジョンソンのほか、「ダンケルク」に続いてノーラン作品に参加となったケネス・ブラナー、そしてノーラン作品に欠かせないマイケル・ケインら。撮影のホイテ・バン・ホイテマ、美術のネイサン・クローリーなど、スタッフも過去にノーラン作品に参加してきた実力派が集い、音楽は「ブラックパンサー」でアカデミー賞を受賞したルドウィグ・ゴランソンがノーラン作品に初参加。

2020年製作/150分/G/アメリカ
原題:Tenet
配給:ワーナー・ブラザース映画

公開してまだ間がないが、評価は3.7(2020年9月24日現在)。

かなりの期待作であり話題作である。この監督は、クリストファー・ノーランスの作品はいくつか観ている。「インターステラー」はかなり面白く、映画を観終わった後もその余韻にずっと浸っていたくらいだった。

私が歳をとったせいなのか、好みの問題なのか、わからないが、この映画には面白さを感じなかった。若者には、または、このような複雑でカーアクションや動きの多い映画が好きな人には受ける作品なのだろうか。

ストーリーが複雑で、画面が動きすぎるので、乗り物酔いみたいに気分が悪くなる。

過去に行き来できるホイール(ぐるっと回る回転式のエレベーター)がある。その設定では、過去に行くと全てが逆に動く。空気も肺には入らないので、携帯式の吸入器が必要である。

その過去に現代人が入ると、現代の人の動きは巡行で過去の人の動きは逆行、過去の人が現代に入ると、過去の人の動きは巡行で現代の人の動きは逆行になる。カーアクションも多く、気分が悪くなる。

しっかり予習して、2回以上観る気持ちがあれば、私のように中年で反応の鈍い人でも大丈夫だと思います。

あまりお勧めできないです。ごめんなさい。