新学習指導要領における「指導と評価の一体化」について研修しました

 2020年5月30日に森会が中川公民館で行われた。これは「有志の英語教員の研修会」であり、1ヶ月に1回、土日祝日を利用して、授業力向上を目指す教員が集っている。私も都合が悪く、2〜3ヶ月お休みしていたので、久しぶりの参加となったが、いつもより熱い気持ちが伝わってきた。6月1日より学校再開の本格始動ということもあり、やる気も伝わっていた。コロナ感染拡大防止のため、しばらくは小規模な開催だったようで、今回は普段より多く9名の参加があった。

 最初に、全英連三重県大会で中学校授業実演を担当した、S氏より、新学習指導要領 に実施における「指導と評価の一体化」について、まとめたものをPPTで発表があった。

単元を貫いて計画を立てること、単元が終了したらどのようなことができるようにあるのか、単元目標を適切に立てること

 平木調査官からは「指導案については、当日の流れを詳細に記すというより、単元計画を指導案に詳細に記すべきである」という講演を聞いたことがある。当日の授業は単元のどこに位置し、どんな単元計画の中でなされる授業なのかを知る方が大切であるとのこと。また、S氏と同僚のI氏のビデオ授業からは、Can-doリストとも整合性を図りながら、単元終了後には、「どんなことができるようになるのか」「どんな生徒になるのか」、単元開始後の最初の授業で提示すべきであることを示してくれた。そして、まとめの活動をしっかり提示し、「どんなことができるようになるのか」ということを実感させることが大切である。

生徒の学習改善、教員の指導改善ための評価であるべきである。必要性、妥当性のない活動や指導は見直す。

 指導と評価を一体化させるべきである。評価は生徒の評価をするだけではなく、自分自身の英語指導への評価もしていくべきである。自分への英語指導の評価が適切であれば、生徒への指導が変わり評価も変わっていくことになる。

新学習指導要領における学力観がそのまま各教科の評価の観点と一致する。「何を学ぶか(知識技能)」「何ができるようになるか(学びに向う力・人間生の涵養(主体的に学びに向う力)』」「どのように学ぶか(思考力・判断力・表現力)」

 主体的に学びに向う力の評価が難しい。自らの学習を調整するなど、メタ認知を高めることが肝要であることがわかる。学習方法や学習態度、どのような勉強方法が自分に合っているか、計画的に勉強ができるかなど、自己調整学習ができるかどうかということであろうか。「〜しようとしている状況」を評価する。自分の学習を自覚的にとらえる状況を評価する。「自己調整」と「粘り強さ」がキーワードである。「粘り強さ」については、筆者の以前の投稿に、今井裕之(関西大学教授)先生のご講演の記録参照。

中間指導で文法の正確性を高めていく。

 メインの活動を一度で終わらせず、パートナーを変えて何度か行わせる。それぞれの活動を始める前に、自分の中で何が足らないのか、どうすればもっと適切に相手に伝えることができるのかを考えさせる必要がある。さらに、めあてに迫るためにどう工夫をすればよいか、中間指導で考えさせるべきである。その際には、文法や発音が正しいかどうかなどの正確性を意識させるべきである。

知識・技能は「知識」と「技能」で分て考える。技能においては、「実際のコミュニケーション」において評価すること

  知識はペーパーテストでも評価できるが、技能はパフォーマンステストなどで、「実際のコミュニケーションにおいて」をルーブリックに明記して行う必要がある。

新言語材料(新出文法)にとらわれない。音声の指導は常にし続ける。

 設定しためあてが達成するための活動(タスク)において、「できるようになること」が第1目標で、そこに新言語材料を使用する必要がなければ、それにとらわれる必要はない。確かにこれまでも、その言語材料を意識するがあまり、不自然な会話になってしまったり、コミュニケーション活動が適切に成立していなかったりした。

思考力・判断力・表現力は、目的、場面、状況に応じてコミュニケーション活動を行い、評価する。

知識技能はaccuracy(正確性)が必要だが、思判表にはfluency(りゅうちょうさ)が必要。

 これはペーパーテストでも同じことが言える。たくさん書けばいいのか、少なくても正確に書かなければならないのか。英作文の大問でいつも立ち止まってしまうところである。評価項目によって分けることが必要である。

新しい評価では、観点のばらつきは起きにくいはず。

 ばらつきが生まれたら、必ず自分の指導に戻り、自分の指導を評価して、新たな指導に結びつけること。PDCAサイクルを機能させる。

 どの評価がどの活動にあたるのか、どの指導の時にどのように評価するのか考えていくことが大切である。知識技能の5領域はどの活動で評価するのか、パフォーマンステストなのか、ペーパーテストなのか、ポートフォリオなのか、プレゼンテーションなのか。技能を統合した活動の中で評価することも考える必要がある。例えば、用意された状態でスピーチをさせる(「話すこと(発表)」知識技能)、スピーチ終了後に聞いている側から質問させる(「話すこと(やりとり)」知識技能)、スピーチの感想を書かせる(「書くこと」思判表)で評価できる。来年度の実施に向けて、ソフト面(指導要領の徹底的な読み込み、指導と評価の一体化参考資料の読み込み)、ハード面(3観点と5領域のクロス評価の設定とCan-doリストの見直し)。

 しかし、S氏との雑談の中で、「新しい学習指導要領が出たばかりでの考え方は、2〜3年すると勝手に歩き出して、違った解釈になることがある。」20年前に「言語文化」が観点に入ったときのことを思い出した。準備することは大切なことだが、あまりにも拙速に対応し過ぎると、後付け解釈に翻弄されることにもなるので、情報には敏感になって、常にアンテナを高くしておく必要があると、アドバイスをしておいた。