「英語教育10月号を読んで」2

「自力で学べる生徒をどう育てるかー家庭学習の効率よいルーティーン化」本田敏幸 千代田区立九段中等教育学校主任教諭

本田先生のご講演は2度にわたって拝聴している。先生が大学院在学中に一度、東京のELECの研修会で。また、2〜3年前にCELES(中部英語教育学会三重支部)でもお聞きしている。その際にはお食事まで一緒にさせていただいてたくさんのお話をお聞きした。

今回は、家庭学習でどんなことをさせればよいかについて、書かれていた。その中で、とてもいいなと思ったのが、”Seven Steps”である。

私は相変わらず、予習と称して宿題にしていた、単語調べ、単語練習、本文写しを音声導入した後、「本文単語練習」という名前に替えてさせている。本多先生は、このやり方を少しアレンジし、リスニングや音読も含めながら行わせている。

STEP1は、教科書を開き、「教科書のCDを真似て、5回以上音読を行う。」教科書の文字を見ながら、CDをモデルにして行う。

まずは、本文の概要をつかんで、文字と音との一致から読み方を覚えていく。

STEP2は、教科書を閉じて、「CDの後について、1文ずつ言えるようにする。」

内容がつかめていないと、CDを聞いても1文が言えないので、STEP1がとても大切になってくる。

STEP3は、教科書、ノートを開き、「新しい単語(太字)をノートに何度も書いて覚える。」

ここも単語を発音しながら書くことが大切である。どの綴り字がどんな音になるのかしっかり確認する。

STEP4は、「本文を2度以上書く。」発音しながら書くようにする。

STEP5は、「写した英文を黙読して、間違えがないか確認する。」

STEP5が大切である。ここで間違えた文を何度も書いてしまうと、ミスの刷り込みをしてしまうことになる。非常に危険である。間違った文を何度も書くほど無駄な時間はない。

STEP6は、教科書を閉じて、「1文ずつCDを聴き、英文をノートに書く。」

STEP1〜5までしっかりやっていれば、STEP6は意外にスラスラとできるはずである。ここまでの努力の成果を試すためにも大切なSTEPである。

STEP7は、教科書を開いて、「答え合わせをし、間違いを赤ペンで直す。」

今の3年生を卒業させたら、Seven Stepsを自分の中に落とし込んで、生徒たちへやらせてみよう。

「英語教育10月号」を読んで

第1特集 「自律して学ぶ力を育てる 課題の出し方・活かし方」

「自律的に学ぶ力を育てる課題とは?ー第二言語習得の視点から」新田了 立教大学教授の記事からは、タスクが定義づけられていた。我々はよく「課題」と言ったり、同義で「タスク」と言ったりすることがある。

本来、タスクとは、「達成すべき目的を持ち(purposeful)、意味を中心とした(meaningful)言語活動と定義されるまずは伝えたいメッセージを持つことが重要で、英語はそれを表現するための手段である。つまり、設定された目的を達成するために、生徒は思考し、クラスメイトと協力し、教師の助けを借りながら、様々な活動に取り組む。そのプロセルから付随的に英語力が発達する。」としている。ただゲームをすることをタスクと称して要る教員もいるので混同しては行けない。

さらに、自律的学習を促す原則として、4つの原則を挙げている。①生徒の伝えたいメッセージからスタートする。②外の世界につながる要素を含む。③個人作業と共同作業を組み合わせる。④内省的な活動を取り入れる。小学校で教えていてもよく思うことだが、「児童生徒が言いたいやりたい伝えたい」という気持ちを持たせるような教材を提示することが大切である。

また、④においては、振り返る力をつけさせることがとても大切であると筆者は語っている。「『自分のものさし』は一度見つけたら終わりではなく、自分の成長と環境の変化に合わせて改良し続けていく必要があるから。常に振り返ることで、自分の物差しを洗練させ、調整していくのだ。」と言っている。

新学習指導要領では、「主体的に学ぶ態度等」の評価のおいて、振り返る姿勢が大変強調されることになる。指導と評価が一体となるよう工夫する必要がある。

「浅田家」を観て

 楽しみにしていた「浅田家」を観てきた。普段、特別支援教育やキミヤーズを一緒に勉強している先輩が、エキストラで出演しているらしかった。主人公の写真家 浅田政志さんは、津市出身。育生小学校の卒業生と言うことは、私や私の連れ合いの後輩である。高田本山や津新町駅がロケ地として使われており、不思議な感覚だった。ストーリーは以下の通り(映画.comより)。

 様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で注目を集めた写真家・浅田政志の実話をもとに、二宮和也と妻夫木聡の共演、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督のメガホンで描いた人間ドラマ。4人家族の次男坊として育ち写真家になった主人公・政志を二宮、やんちゃな弟をあたたかく見守る兄・幸宏を妻夫木が演じ、家族の“愛の絆”や“過去と今”をオリジナル要素を加えつつ描き出す。浅田家の次男・政志は、父の影響で幼い頃から写真に興味を持ち、やがて写真専門学校に進学。卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを再現した写真で学校長賞を受賞する。卒業後しばらくはくすぶっていたものの、再び写真と向き合うことを決意した政志が被写体に選んだのは、やはり家族だった。様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催し、写真集も出版され、権威ある賞も受賞する。プロの写真家として歩み始めた政志は、全国の家族写真の撮影を引き受けるようになる。しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生。かつて撮影した東北に住む家族のことが心配になった政志は被災地に足を運ぶが、そこで家や家族を失った人々の姿を目の当たりにする。

2020年製作/127分/G/日本
配給:東宝

 家族の大切さ、人の命の尊さ、写真を通じて人と関わっていくことがどんどん人と人をつなげていくことになる。

 東日本大震災の被災地で、浅田さんは、震災で行方不明になった写真を集め、人に返却するボランティアをする。泥を落としてきれいにしてから、板に貼り付け、展示することで、避難してきた人たちが見やすいようにしていた。8万枚の写真のうち6万枚を返却することができたようだ。

 私も、2011年4月、5月、2012年3月と3回にわたって、被災地にボランティアに行った。壮絶な環境の中で、一生懸命生き続けている人たちと触れ合うことで、たくさんの元気や勇気ややる気をもらうことができた。被災地で働いて、たくさんのありがとうをもらったが、ありがとうと言いたいのはこちらの方だった。

 たくさん経験をすることはいいことだなとしみじみ感じた。人との触れ合いが増えていくし、人との関わりから人脈が増えていく。

 何度も涙したシーンがあった。大泣きするところは無いが、ぽろっと涙が溢れるところはいくつもある。

 かなりオススメである。津市出身者や在勤者、居住者は見るべき。

「一人称単数」を読んで

「一人称単数」村上春樹(文藝春秋)

 「猫を捨てる」という短編集を読んでから、半年くらいで出版されたので、他の作品を読み返さなくても、村上春樹に餓えなくてもいいから、気持ちが楽だ。

 村上春樹を読む時はいつもそうだが、終わってしまうのがもったいないので、読みたくても自分でリミットを決めて、そこまでしか読まないようにしている。なんなら、別の本も並行して読み、続けて読みたい欲求をその別の本にぶつけていることもある。

 つまらない本は、「まだ50ページか!?」とため息まじりにページ数をたぐることも多いが、村上春樹の場合は、「あと100ページもある!!」と喜んだり、「あと50ページしかない!!」と嘆いたりすることもあるくらい、終わりを待ち望まない自分が居る。

 今回も短編集である。8篇の作品が収蔵されている。

 ご自身が経験されたような話や実際に聞いた話、どれも引き付けられるようなことが多い。女性についての話が多く、どれも面白かった。

 俳句をしているバイト先で一緒になった女性、ピアノ教室で一緒に連弾をしたことのある女性、醜い女性、恥を知りなさいと罵る女性

 不思議に自分の若い頃のことをたくさん思い出す。フラッシュバックしてくる。この物語の世界に入り込んでしまっている。しかし、主人公になるのではなく、物語の展開とともに歩いている主人公とは別人の自分が歩いている。しかも、自分の思い出を抱えながら、ストーリーと同一歩調で歩いている。フラッシュバックしている出来事が決してストーリーを凌駕することなく、自分がストーリーに入り込んでいくので、不思議な気持ちになる。

 これは村上春樹の小説を読むときにいつも自分が味わう経験である。それが村上春樹が好きである理由なのかもしれない。

 猿の話、スワローズの話、

 私が大好きなお酒もたくさん出てくるし、クラシックも好きなのだが、ちょくちょく話に出てくる。猿は「ブル7」が好きらしい。私もブルックナーの交響曲第7番は好きだ。

 全ての短編は「文學界」という雑誌で書かれたものが収録されているのだが、最後の「一人称単数」だけが書き下ろしであった。

 「一人称単数」はとても変わった話である。ストーリーはおいとくとして、その話の主人公の中年男性(多分村上春樹であると思われるが)は、滅多に着ない高級スーツを着てバーで読書をしているときに、バーカウンターの奥にある鏡に写し出された、ここにいる鏡に写っているのはだれなのかという疑問に襲われる。「人生を生きてきて、分かれ道がいっぱいあった。右にも左にも行けた。自分でどちらに行くか選択したわけだが、どっちにも行けた。どちらでもよかった。時には、向こうから私を選択したこともあった。いろいろあったが、今私はここにいる。いったい私は誰なのだろう。」とこんな趣旨の語りがある。

 私もわからなくなることがある。パイロットになるか先生になるかで悩んだことがある。先生になっていなかったら今の幸せな生活は存在しない。いろいろな道が複雑に入り混じっている。過去を肯定すると現在は存在しなくなってしまう。たくさんの枝のあるあみだくじを複雑に行ったりきたりしながら、当たりにたどり着いたようなもの。今いる自分は試行錯誤の連続で生まれた産物で、きっと将来の自分もたくさんの選択肢から自分の意思や強制力が働いて選ばれて出来上がった自分になるのだろうと思う。ただ、加齢とともに選択肢の本数は年々減っていくことだろうが。

 おもしろかった。やはり、村上春樹である。

 

「英語教師のための実践研究ガイドブック」を読んで

「英語教師のための実践研究ガイドブック」田中武夫、髙木亜希子、藤田卓郎、滝沢雄一、酒井英樹 編著 大修館書店

 理論研究は、大学院の修士課程の時にやったが、根気と時間がないとなかなかできない。しかし、「実践研究」であれば、普段の授業を研究の材料にでき、さらに授業改革や自分の授業の研究、教えている子どもたちの状態や学習環境などを深く知ることができる。実践研究のやり方を勉強して、やってみようかと思う。できれば学会で発表できればいいなと思っている。

 まず、実践研究とは、「教師の教育実践の質的な向上を図るために行われる体系的な研究の1つである。具体的には、教師自身が日々行っている実践の現状を理解したり、実践上抱えている課題を改善したりするために行われる研究」である。

 目的は、実践の現状を理解し、その現状での課題を改善するために行われる。

 実践研究が成立するための3要素は、「問い」、「データ」、「分析・解釈」である。

 「問い」とは、日々の実践の中から立ち上がった教師の問いに対し、教師自身が答えを探求する試みである。2つに分けられ、担当しているクラスで、ある指導をしたら何が起きるのか見ようとする「課題解決型」と、授業が行われている教室の中で何が起きているのかを理解しようとする「理解型」がある。

 「データ」では、テストや質問し、生徒のワークシート、振り返りのコメント、教師の日記、メモまで使われることがある。

 「分析・解釈」では、収集したデータを先に立てた問いに答えるために見やすく整理し、収集したデータの意味について分析したり解釈したりすることである。

 実践研究のステップとしては、① 問いを立てる(問を明確にする)、② データを集める(データのタイプを知る、データを収集・整理する)、③ データを分析・解釈する(データの分析をする、データの解釈をする)、④ 研究を共有・公開する(研究を総括して発表する)

 「問い」について、「理解型」の問いとは、目の前にあるクラスの中で何が起きているのかを見る問いである。つまり、実践上における教師や生徒の現状について理解するための問いである。「課題実践型」の問いは、今教えているクラスで、あることを試してみたら何が起きるかを見る問いである。つまり、実践上の指導の効果を確認するための問いである。

 「よい問い」を見つけるためには、①「重要性」(実践の理解や今後の実践の改善に大きく貢献するか?)、②「明確性」(何を問うているかがわかりやすいか?)、③「可能性」問いに対する答えを出せる可能性があるか。

 「重要性」とは、教師が行っている実践に対して、特に重要と思われていることを「問い」にしているかどうか。「大きな声を出させる指導」→「目的意識・相手意識を持って考えることや意見を伝え合うこと」

 授業を見る4つの視点、①目標の設定、②生徒の把握、③教材の解釈、④方法の考案

 「データ」について、「教師が英語で授業をすると、生徒の認識や表現内容はどのように変わるか」という問いに答えるためには、「生徒の認識」(「振り返りシート」の分析・解釈から)、「生徒の表現内容」(「授業中のスピーキング活動のビデオ録画)から得る。ここから、次のような解釈が導き出せる。①教師が英語受容を行うことで、生徒の英語に対する苦手意識が軽減した。②発話の量には影響は見られなかったが、教師の問いかけに対して応答しようとする生徒の数が増えた。

 授業観察メモ、授業日誌については、授業の中で起こった出来事、その出来事が起こったときの児童・生徒の様子や発言、その出来事に対する観察者の感想や気づきについて記述することが大切である。

 授業日誌を書く際には、授業中の出来事や様子などの事実と、教師の感想や気づきなどの解釈を分けて記録する方がよい。事実を正確に記録すると、後で実践を共有する際に役立つ。

 授業日誌やアンケート(質問紙)、インタビューのような質的調査の場合、質的分析を行う。それは、「個人の特徴やその変容をとらえるために、集めた文字データや音声・動画、データなどをカテゴリーに分類すること」である。まず、データをしっかり読み込み、データ全体から得られる理解や気づき、印象をつかむこと。次に、データから必要な箇所を抜き出す。さらに、気づきや考えをメモする、要約する。その際に、コードを付与すると、データの内容を端的に把握しやすい。コーディングとは、文書データを読み込む中で、気になる箇所や繰り返し現れる現象、表現について要約し、それらを的確に表す見出しをつけること、コーディングをすることで、データについて端的にまとめたり、深く考えたりするのに役立つ。最後に、要約されたデータを整理すること。コーディングされたデータの傾向を数量化してまとめる。そして、コードの関係性を踏まえて、カテゴリーを作成する。

 まずは、問いを立ててみよう。そして、振り返りカードから生徒の声を収集し、自分の授業メモもしっかりとることにする。自分の授業改善や生徒の英語力向上に役立ちそうだ。